映画レビュー:23年9月の7本
・大輪廻
(1983年/台湾/キン・フー、リー・シン、パイ・ジンルイ監督)
「台湾巨匠傑作選2023」にて鑑賞。日本劇場初公開。出演者たちが3世代にわたって輪廻転生を繰り広げ、3世代でそれぞれ監督が違ってテイストが違うの、面白い。ヒロインがのん(能年玲奈)そっくり。
・長江哀歌
(2006年/中国/ジャ・ジャンクー監督)
冒頭、情緒たっぷりの景色でじっくり引き付けて→慎ましく、でもしっかりと赤文字でタイトル写すの、巧い。また、景色がお札になってて「お前の田舎も美しいな」というの、広大な中国の出身地の憧憬を感じさせるの巧い。さらに、2人で会話してる背後でビルが爆破解体されて崩れ落ちるのシーンとか、突飛にUFO(?)を目で追うシーンとか、ビルとビルをスラックラインする解体屋のシーンとか、随所随所にものすごく画作りが巧い。つまるところ、巧い。
・世界
(2004年/日本=フランス=中国/ジャ・ジャンクー監督)
オフィス北野の息がかかりすぎてて、最後のセリフが「俺たち死んだのか?」「いえ、新しい始まりよ。」って!「キッズ・リターン」オマージュがあざと過ぎる!おもねり過ぎだ!美しいカットの連続も、くどい!長い!説明のない描写の連続がさすがに長すぎて苦痛だ!時おり繰り返し差し込まれる音楽もやがて単調に、、、だが曲が耳に残る、、!不思議な余韻が残りまくる、、!!
・Coda コーダ あいのうた
(2021年/アメリカ・フランス・カナダ/シアン・ヘダー監督)
映画館の後ろの席に、フランス語が母語と思わしき初老の女性が2名座っていて、その方たちがひっきりなしに笑ったり声をあげてリアクションしながら映画を観ていたのがとても楽しそうで新鮮だった。劇中、ろう者の手話のシーンでは日本語字幕が出ていたけれど、あぁ、日本語字幕読めない観客は想定されてないじゃん(多分後ろの席のご婦人方は理解されていなかった)という所にはじめて意識が及んだ。手話も世界共通じゃないからねぇ。
そして、最後泣いたよ。クライマックスで音楽聴きたい!ところ、ろう者の日常を伝えるために、クライマックスで敢えて音を消す演出、うまいよ。
あと、そんな何もかも上手くいかないよね。初恋が叶って有頂天で家に帰ってくると、家族がメチャクチャトラブってたりさ。そういうプラマイゼロ感って身に覚えあるもの。
・ペパーミント・キャンディー
(1999年/韓国・日本/イ・チャンドン監督)
男がどんどん自暴自棄に、クズ男になっていくまでの話。走馬灯のようにD→C→B→Aと過去に遡っていって、Dの理由がCにあり、Cの理由はBにあり、と種明かしされていく。Aの頃には純情ボーイだったのにね(涙)って、ずっと人のせいにしていてしょーもない。ハデさがまったくない地味な画作りで、途中で意識飛んだ。映される町が衛生的じゃないねぇ。ちょっと前の時代なのにね。
・aftersun/アフターサン
(2022年/アメリカ/シャーロット・ウェルズ監督)
サウンドデザインが凄まじく素晴らしい。完全な無音で静まってるところに、スー、スー、と娘の寝息が聞こえ出すところとか、すごくいい。平和、愛おしさの象徴。それがどんどん後半になるにつれて死の香りがしてきて、不穏になってくる。説明はないけれど伝わってくる。うまい。
・YOSHIKI : UNDER THE SKY
(2023年/アメリカ/YOSHIKI監督)
「芸術作品は僕らの人生より長く生きる。」ここまでは多くのアーティストが言うし、筆者私自身もそういう作品残したいと思うから、解る。けれど、その言葉に続いて「そして愛も残る。」と言うのが、なんつーか、ものすごく、YOSHIKIっぽい。ここにYOSHIKIらしさがあるなと思いましたです。
<了>