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渋谷古書センター1階の閉店によせて

6月10日にショッキングなニュースが舞い込んできた。

なんと渋谷古書センター1階「古書サンエー」が閉店するという。コロナ禍ですっかりめっきり足が遠のいていたとはいえ、ずっとあるのが当然と思っていた場所がなくなるの報。これは寂しくなる。閉店前に最後に御礼を伝えに行かねば。

と思いながら、行けたのは最終日の朝になってしまった。

とは言え、どちらかというと愛着があるのは2階の「Flying Books」の方で。20代の頃は友人がスタッフで働いていて、ここに来るといっつも感性のアンテナが磨かれるので、刺激を受けたい時に重宝した。渋谷にはまだ「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS」も無くて、「SHIBUYA TSUTAYA」も今みたいにオシャレじゃあなかった。カウンターカルチャーの息吹をたたえる「Flying Books」が唯一の光明だった。

そして1階の「古書サンエー」。ここは専門書の棚を振り返ると成年誌が猥雑に積んであったりと、玉石混交なカオティックな魅力があった。狭い店内に客は通路を譲り合って本を探す。洗練されてコンセプチュアルな2階とまったく趣も客層も違う。店内のにおいも違う。

この1階と2階をハシゴするのが、渋谷で感じる文化の香りだった。

最終日でも、店員は客に媚びずぶっきらぼう。最後に御礼を伝え、2冊、救出した。左、550円。右225円也。

貴重な街の一部だった古書サンエーさん、この地で75年間、ありがとうございました。今年2022年は戦後77年だから、終戦直後にこの地に誕生し、ずっとこの地を見守ってくれていたことになる。
思い出の、馴染みの渋谷がどんどん変わっていくのは、寂しい。

<了>

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