はじめてBtoB UXリサーチをしたい人へ贈る、超えるべき3つの壁
こんにちは、カミナシでUXデザインとリサーチをしている渡邊 (@nabetaro_san) です!
今回は、はじめてBtoBのUXリサーチに関わる人に向けて、どのようなことを留意していくべきかをカミナシ視点で書いてみました。
私自身も以前はBtoCプロダクトに関わっていましたが、BtoBプロダクトのUXリサーチをはじめてから、BtoBならではの難しい壁が見えるようになってきました。
これから始めよう!という方の参考になれば幸いです。
3つの壁
BtoBのUXリサーチで障壁になるものは以下3つです。
顧客の業務を理解する
顧客との関係値を把握する
検証方法を整える
まずBtoBである以上、ユーザーというのはつまり顧客になります。そしてその顧客の体験を明らかにするためには、顧客の業務を理解することが前提になります。
そしてUXリサーチをする相手は顧客ですが、顧客ごとに私たちに期待することやこれまでの関係値はバラバラです。そのためUXリサーチができる関係値であることが必要です。
更に、顧客の業務を120%理解し、関係値も良好だったとしても、プロダクトの検証は慎重に行う必要があります。
顧客の業務に向けたプロダクトを提供するということは、現在の業務を妨害してしまったり、時間を使わせてしまったりと何らかのストレスが発生します。
そのため検証方法はなるべく顧客のストレスを与えない形を模索する必要があります。
これらの壁をカミナシではどのように乗り越えたかを具体的に紹介していきたいと思います。
壁1:顧客の業務を理解する
BtoBのUXリサーチをはじめようと思うと、まずプロダクトやサービスを提供するユーザー、つまり顧客が今どのような業務をやっていて、何に困っているのかを理解する必要があります。
もし顧客への理解が不足した状態でヒアリングを行った場合、業務の説明や専門用語の説明になってしまいます。
ヒアリングの効果を最大化させるためにも、入念な調査が重要です。
ただ、業務を理解するためにはどうするの?という部分ですが、カミナシで取り組んでいるのは主に以下です。
公開されている一次情報をひたすらに調べる
社内の有識者にヒアリングする
専門家にヒアリングする
実際の現場を観察する
カミナシではまずはじめに、デスクリサーチをします。
デスクリサーチをしてみると「全くわからなかった」という感じから「大体わかってきた」というレベルになってくると思います。
そしてBtoBを事業としている以上、必ず社内に顧客の業務について詳しい人はいるはずです。
なので、私たちは「自分達でまず調べる」→「社内で聞く」を繰り返すことを心がけています。
ただデスクリサーチでわかることはあくまで包括的な情報が多いため、細部の業務を理解するまでは時間がかかります。
そのため速度を意識しながら、どのようなものがデスクリサーチだと時間がかかるかを見定めていきます。
デスクリサーチで時間がかかるものは、専門家にヒアリングすることで、速度を落とさないようにしています。
特定の業界や業務の専門家へのヒアリングは「ビザスク」さんや「uniiリサーチ」さんを活用しているため、気になる人は是非使ってみてください。
そしてカミナシでは、実際に顧客の現場へ訪問し、観察することで業務の理解を深めています。
「顧客のところに行くのはちょっとハードル高いなぁ」という方もいるかもしれません。
しかし、五感で観察することで得られる情報は膨大であり、1回きりの訪問だったとしても、きちんと記録を取っていれば半永久的な社内情報リソースになるため、行くことの価値は非常に高いと思います。
カミナシでもコロナ禍という状況の中で実際に現場へ訪問することは、なかなか大変ですが、社内の仕組みを整えたりすることで実践できるようにしています。
よかったらこちらも参考にしてみてください。
いくつかの取り組みを紹介していきましたが、やはり一日二日では顧客の業務を理解するのは難しいです。
そのため、顧客の業務をどのように調べて学習し、そのサイクルを回すかが重要かもしれません。
継続的な調査によって、「顧客の業務を理解する」壁は乗り越えられると思います。
壁2:顧客との関係値を把握する
「デスクリサーチしてみたら大体わかった自信がある!」というあなたの前に、次の壁が立ちはだかります。笑
デスクリサーチや専門家へのヒアリングで得られる情報はあくまで、包括的な情報です。
そのため顧客固有の情報ではありません。
顧客にもさまざまなセグメントがあり、顧客の組織構造やステークホルダーもさまざまです。そのため、同じ顧客だったとしても部署ごとで課題感が違ったり、言っていることが真逆だったりというのはよくあります。
ただ、こういう顧客固有の情報はヒアリングしないと見えてきません。
ここで関係値という壁が現れます。
そもそもヒアリングが行えるほど顧客と関係値があるのか。関係値が高いもしくは低いのはどの顧客かを把握していく必要があります。
関係値がないと、そもそも踏み込んでヒアリングできなかったりします。
「業務についての詳細を、まだよくわからない会社に話すのは少し不安...」という感じで顧客が防御姿勢になってしまうとヒアリングでの成果が見込めなくなります。
カミナシでは顧客へのヒアリングを行う際は、必ずカスタマーサクセスチーム(以降、CSチーム)と情報を同期するようにしています。
顧客はどのような経緯から受注に至り、今はどのような導入状況か、利用状況はどうか、いつもCSチームには何を話しているか、担当するCSチームから見た関係値の印象はどうか、などを確認しています。
これらの関係値の情報が見えてくれば、ヒアリング先として適していそうな顧客はどこか、またどのようなことをヒアリングで質問すべきで、どのようなテンションでヒアリングに臨めば良いか、が見えてきます。
やはり私たちも人間なので、身構えていたり距離感を感じる相手に対しては、こちらも緊張もしてうまくヒアリングをできなかったりします。
そのため、いかにして話をしやすい雰囲気になりそうな関係値の顧客をヒアリング先として選ぶか、が壁を超えるポイントになってくると思います。
壁3:検証方法を整える
「顧客のこともわかったし、顧客との関係もいい感じ!」という状態になればUXリサーチはだいぶしやすくなっていると思います。
そこに最後の壁が登場します。
それはプロダクトを検証する方法の壁です。
※この検証は、プロダクトのソリューションフィットの検証を指しています。
正直カミナシでもまだこの壁を完全に越えられているわけではないのですが、どのような点が壁と感じているか書いていきます。
プロダクト開発である以上、顧客への検証が必要になりますが、具体的に顧客にどのように使ってもらいフィードバックをもらうかを検討しなければなりません。
顧客の業務に向けたプロダクトであれば、実際の業務で問題はありつつも回っている部分をリプレイスできるかを検証することになりますが、それによって業務が回らなくなってしまったり、妨害してしまわないような方法にする必要があります。
カミナシでは以前、これらの検証方法をどうするかを明確にしなかったため、「結局リリースしてみないとわからない」と開発して、リリースしてみたら全く解決策になっていないというケースもありました。
そこで、私たちは大きく分けて以下の二つに検証の粒度を分けることにしました。
そもそも私たちが考えているものはコンセプトとして顧客課題の解決になっているかをまずは検証します。
カミナシではこの検証をコンセプトテストとし、簡易的なプロトタイプを作成し、プレゼンテーション形式で顧客に提案するという手法を使っています。
関係値が高い顧客に対して、定期的なヒアリングの時間をいただき、プレゼンテーション形式で提案を繰り返すというものです。ここではあくまでコンセプトレベルで検討しているものを提案するため、新機能や新プロダクトなどが該当します。
この検証方法をすることで、顧客の業務への直接的な干渉をすることなく、かつ実際に操作をしないで打ち合わせ形式で検証することができます。デメリットとしてはあくまでコンセプトレベルなので、実際の操作感や機能については有効な検証を行うことはできません。
ただ、この検証を十分にできれば「せっかく機能を開発したのに、そもそも必要がなかった」という事態を回避できる可能性が高まります。顧客への検証のステップとしては、まずはこのようなコンセプトの検証を繰り返していくことで解決すべき適切な問いを立てるのが良いと思います。
コンセプトの検証ができれば、あとは機能としての検証方法ですが、正直ユーザーが顧客である以上は、やはり打ち合わせという形式という以外の検証で有効なものがまだ見つかっていません。
オンラインの打ち合わせであれば、プロトタイプを作成し画面共有で触ってもらうというのがいいのかもしれません。
ただカミナシのユーザーはあくまで現場で働くノンデスクワーカーであり、現場の環境で使ってもらわなければわからないというのもまた事実です。
現場で忙しなく働いている方に、急に「これ使ってみてください」というわけにもいかないので、現場をなるべく観察し、自分達が顧客の立場になった時に想定できることを考慮していくというのが、今のカミナシの解になっています。(もっといい方法があるよ!という方、お話ししたいです!)
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