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『心配しないこと』は”比較”と”自己評価”の解毒剤 #スマナサーラ長老 #仏教書 #心理学

スマナサーラ長老の新刊『心配しないこと ブッダが教える心の整理術』大和書房が出ました。

私たちは人生のスタートラインから、心配や不安と伴走しながら生きています。自分を測ろうとするのは、そんな状態を解消するためです。測れば測るほど、心配や不安を大きくしてしまうのです。心配や不安を和らげて、やがて無くしていくためには、『慢』を中心とした心のしくみをよく理解して、巧みにコントロールする必要があります。自分の心ならば、やり方次第でしっかり制御できるのです。ですから、外界の出来事に右往左往することをいったんやめて、自分の心に向き合ってみることを提案したいのです。

『心配しないこと ブッダが教える心の整理術』はじめに

引用した「はじめに」の言葉にあるように、本書はもっとも根深い煩悩の一つ、慢(マーナ māna)を主題にした実用的な仏教心理学読本です。自分の心配や不安の根っこにある「変化への恐れ」を自覚することが第一歩。そこから自分と他者を絶えず比較して(測って)自己評価して安心を得ようとする「慢」の働きと弊害をよく理解し、無明・欲・怒りといった煩悩と慢との関係性に目を向け、完全な覚りまで付き纏う慢との上手な付き合い方を学び、「慢によって慢を乗り越える」終着点まで提示します。最終章はQ&A形式のケーススタディです。筆致は軽妙ですが、粘り腰で奥行きの深い一冊だと思います。実際のところ人間の悩みの多くは、自他を比較して自分を上げたり下げたりする心理(すなわち慢)から生じるわけで、そういう生得的な病への「読む解毒剤」として、ぜひ常備しておいてください。以下、目次です。

はじめに
第1章 なぜ不安になるのか?――「自己評価」という落とし穴
 あれもこれも不安で仕方がない
 未来を知ることは誰にもできない
 不安になるのは欲があるから
 「現状維持」なんてできない
 すべての生命は「慢」を回転させている
 自分と他人を比べる基準
 自信のなさや不安から、測ってしまいたくなる
 自分に対して究極の価値を入れている
 世界は私を中心に回っている?
第2章 不安のしくみ――自己評価のカラクリを知る
 「測る」心は3種類
 心にある「慢」は9種類
 自己評価―「慢」は悪いこと?
 どんな「慢」が起こるかは状況次第
 癖がやがて性格になる
 自分に「価値」をつけないと生きられない
 どんな行動にも価値をつけている
 価値をつけて生きることは、本能であり不可欠なこと
 自分の中の測りを知ってコントロールする
 「優しさ」を問えば、「慢」をチェックできる
 意識していなかった差別や区別に気づく
第3章 幸・不幸を司る「心」のしくみ――自己評価と煩悩家族
 「正しい」は人それぞれ
 うまくいくほど「私は正しい」!?
 苦しみをつくる工場―無明
 「慢」を働かせるほど苦しくなる
 怒りが起こるしくみ
 無明が強くなったら、理性を働かせる
 「もっともっと」は心配ごとを増やしてしまう
 自分の中のハカリは案外不正確
 私たちは喜んだり泣いたりすることが大好き
 感情に任せるとろくなことにならない
 感情の奴隷にならない、理性の育て方
 理性で判断すれば、心配ない
第4章 心を使いこなして幸せになる――自己評価で成長する方法
 心の免疫機能を働かせる
 「自己評価」と上手につき合う
 自分を奮い立たせるエネルギーの使い方
 「慢」の焦点を「善」に合わせる
 比べるよりも育てること
 習慣の力を借りる
 不安や心配はあってもいい
 歳をとると「慢」が強くなる?
 頑固や傲慢は自分でなおすもの
 他人より自分の観察をする
 心を落ち着かせて状況をよく観察する
 本当に必要なものは、案外多くない
 今、直面している現実は今ここだけ
 すべての悩みは等価
 究極の幸福は「慢」を根絶すること
第5章 心配ごとをブッダに相談してみよう
 Q将来の不安 パンデミックがまた起こるのではないかと心配です。
 Aウイルスの流行は自分の管轄外のこと。
 Q将来の不安 仏教は「今が大事」といいますが、リスクマネジメントはないのですか?
 Aリスクマネジメントとは「今」の問題です。
 Q将来の不安 未来はわからないということですが、お釈迦さまは助けてくれないのでしょうか?
 A目標を立てて体を動かします。
 Q健康の心配 ずっと健康でいられるかが心配です。
 A健康でいることは人生の目的ではありません。
 Q親子の不安 子どもの将来が心配です。
 Q子どもがどんな仕事に就いて、どう生きていくかは子どもが決めること。
 
Q孤独の不安 孤独死への不安が拭えません。
 A優しささえあれば楽しく生活できます。
 Q災難の不安 世の中には危険や災難が満ち溢れています。それらから身を守るにはどうしたらよいでしょうか?
 Aお守り文化の正体は「怯え」。
 Qお金の心配 先々のお金のことが心配です。投資はいけないことでしょうか?
 A投資も立派な仕事です。
 付録:慈悲の瞑想について

スマナサーラ長老の既刊から、関連書籍をご紹介します。『ブッダが教える意志力の鍛え方』(だいわ文庫)は、誰もが悩む「意志の弱さ」「根気のなさ」を克服するにはどうすればよいのか? 意志を強化するための正しい「目的設定」の方法などについて総合的に語られた本です。仏教心理学における意志(チェータナー cetanā)のマネジメントを応用した自己開発レッスン。難解な仏教概念とされる神足(イッディパーダ iddhipāda)、界(ダートゥ dhātu)のような用語がすごく自然にプレゼンされる展開には目を見張るものがあります。『心配しないこと』や『ブッダが教える執着の捨て方』と併読していただくと、人生がより楽になるのではないかと思います。

~生きとし生けるものが幸せでありますように~


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