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エッセイ|鉄瓶と黒いお茶

20年来使っている鉄瓶がある。
ひとり暮らしをはじめるときにMaduという雑貨屋さんで買った鉄瓶の急須だ。

胴体の部分は桜の木の皮を模したデザイン。ふたには桜の花がかたどられていて、色、フォルム、注ぎ口のシュッとした感じ・・・など、全部好みでお気に入り。


先日、鉄瓶の中を洗うためナイロンたわしを使った。
いつもなら食器用のやわらかいスポンジを使うのだけれど、小さな黒いカタマリのようなものを見つけたので「こそげ取れるかな」と思い、堅めのナイロンたわしでゴリッとやってみた。

無事に取れた。
けれど中のコーティングも剥がれてしまったかもしれない。
鉄瓶の中全体は元々黒いのに、そこだけちょっと白っぽくなってしまった。

わー・・・でもまあ大丈夫でしょう。
そう思いながらいつものように緑茶を入れて飲んでいた。

ふと
「あれ?お茶の味が変わった?」
そう思ったときがあった。けれどその時はあまり気にせず。

数日経って、鉄瓶の中にお湯を入れたまま放置していた時があった。
飲もうと思ってお湯を入れて忘れていたのだ。
で、流しに残っていたお茶を捨てたら・・・

黒い液体が出てきた。

うわ!
なにこれ??

どうやら、ゴリッとやったときに内側のコーティングが剥がれてしまったようだ。←え、わかってたやん

そう、わかっていたけど、まさか黒い汁になるほど良くないものだとは思ってなかったのだ。
味が変わった気がしていたのは、まさしく鉄サビの味。

ショック・・・。

ついに別れの時がやってきてしまった。

毎日毎日私とともに生きた鉄瓶。
お茶が好きなので、食事の時は夏でも熱いお茶を淹れて飲んでいた。

愛着もあるしフォルムも気に入ってるし、花器として使おうかと思ったけど、あっダメだ、水が黒くなってしまうんだった・・・。

そうして。

使えないとなって、新しいものを探してみた。ネットやお店に見に行ったりしたけれど、まだコレ!というお気に入りに出会えない。

でも、毎日日本茶を飲みたい私。
見つかるまでどうする?
茶こしで直接淹れてみたこともあるけれど、お茶っ葉が開かずあまり美味しくない。う~~んとキッチンを見渡して・・・

あっこれ使えるじゃないか!と思ったのが紅茶用の「ティープレス」
普通に、紅茶を入れるように緑茶を入れて、お湯を注ぐ。お茶っ葉もちゃんと開く。数分経って上からプレス。お湯のみに注ぐ。

無事美味しく入った。

というわけで、ここ数週間ティープレスで緑茶色を眺めながら飲んでいる。
これはこれでありかも?とすら思えてきた。


そして例の鉄瓶。

まだ捨てられずに持っている。
お別れをする前にせめてイラストで残すことにした。

美味しいお茶時間をともにした相棒よ。
こんな最期になってしまうとは・・・ごめんね、そして長い間ありがとう!








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