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「勉強ができる」のは遺伝だけではない

 「勉強ができるようになりたいな。」と思わない人の方が少ないと思うのですが、実際にそれに向けた行動を実践する人は少数派かもしれません。

 それに関して、『勉強ができる子は何が違うのか』(榎本博明著・ちくまプリマー新書刊)を読んでみました。

 そこでは、勉強ができるためには、知能が必要ですが、知能の5割は遺伝的要因で決まっても、残りの5割は環境的要因で決まるため、自分にはどうにもできないことではない、と述べられています。

 また、知能(=IQ)がそのまま学業成績に直結しているわけではないと言います。

 知能が高いのに学力がそれほど高くない子(アンダーアチーバー)と、その反対に、知能はそれほど高くないのに学力が高い子(オーバーアチーバー)がいて、勉強ができるのは知能の問題だと思われがちですが、アンダーアチーバーやオーバーアチーバーがいること自体、知能が学業成績にそのままつながるわけではないことを示しています。

 そこで浮上してくるのが、学ぶ力の重要性であり、学ぶ力を身につければ潜在能力を十分に発揮できるが、学ぶ力が身に付いていないと潜在能力の大部分が埋もれたままになってしまいます。

 では、学ぶ力とは何かというと、①認知能力、②非認知能力、③メタ認知能力の三要素だと言います。

①認知能力(=IQ)…文章を理解したり既存の知識を引き出して用いたりする知的能力であり、この能力は語彙力と読解力を増やす効果のある読書量と強い相関関係があります。

②非認知能力…自分をやる気にさせる力や忍耐強く物事に取り組む力、集中力、我慢する力、自分の感情をコントロールする力など、学力のような知的能力に直接含まれない能力のことで、ダニエル・ゴールマン著『EQ こころの知能指数』により、この能力は“EQ”という言葉で、有名になっています。

③メタ認知能力…認知についての認知の能力のことです。学ぶべき内容を理解するのは認知の働きですが、どうすれば理解しやすいか考えて工夫するのがメタ認知の働きであり、この能力が学習効果を大きく左右する要因となっています。

 このうち、特に重要と思われる②非認知能力について、古典的な実験があるので、紹介したいと思います。

 非認知能力の中核とみなされる自己コントロール力についての実験の原点とされる、心理学者ミシェルたちの“満足遅延課題”を用いた「マシュマロ・テスト」と呼ばれるものがあります。

 保育園児の子どもにマシュマロを見せて、今すぐ食べるなら一個あげるが、研究者がいったん席を外して戻るまで待てたら二個あげると告げ、待つことができるか、それとも待てずに食べてしまうかを試すものです。

 これは、より大きな目標のために欲求充足を先延ばしできるかどうかをみるための実験です。

 重要なのは、この先です。その子らが、青年期、成人初期や中年期になったときにも追跡調査を行っており、その結果、幼児期により大きな満足のために欲求充足を延期することができた者は、その後の青年期・成人初期・中年期を通じて、自己コントロール力が高く、長期目標を達成することが得意で、高学歴を手に入れ、対人関係もうまくやっていくことが確認されたというのです。
 ※まさに、「三つ子の魂、百まで」「栴檀せんだんは双葉より芳し」です。

 なお、その後の研究で、幼児期に限らず、中学生を対象とした調査研究でも、自己コントロール力の向上がその後の学力向上につながることが確認されていると言います。

 「だんだん良くなる未来は明るい。」と斎藤一人さんも言っていますが、非認知能力の一つの自己コントロール力を鍛えて、学習の成果であるより良い未来を目指したいですね。

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