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#11 無意味のススメ

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川崎 昌平(2019).無意味のススメ──<意味>に疲れたら,<無意味>で休もう── 春秋社

本書紹介 from 春秋社

――「意味」に疲れたら、「無意味」で休もう。

スマートフォンの普及、ビッグデータの活用、AIの著しい進化……情報技術のすさまじい進歩発展によって、私たちの日常は一挙手一投足に至るまで「意味」に紐付けられるようになった。そうした変化は日常を便利で豊かなものとした一方で、かつて人間が持っていたはずの「無意味」に接する時間を奪ってはいないだろうか? 膨大な量の情報が持つ「意味」の渦中にあって、かえって人は心を疲弊させているのではないだろうか?

――本書では「意味」から解放された「無意味」の効用を解説し、またどうすれば日常に「無意味」を花開かせることができるかを、イラストとともに紹介する。

本書感想

読書記録とは,読んだ書への意味をつけるということである。無意味のススメを字義通り受け取るのであれば,本書を読んだという事実だけを記録し,あとは何も綴らないことが良いのかもしれない。まあ,そういうわけにはいかないので(個人的に),内容というよりも,感想を記しておきたいと思う。

ここでいう意味とは,選択肢を狭め,行動を方向づけるもの,と捉えられる。たとえば,LINEの「既読」も一つの意味である。本来であれば,メッセージを読んでそれに返信するのもしないのも自由であるはずなのに,「既読」という意味を付されることで,返信しないと「既読無視」になり,「既読無視」にしないためには返信を迫られる。このように,現代は意味が過剰に溢れることで,個人の行動の自由が制限され,心身共に疲弊してしまう。

そこで,積極的に無意味を導入しようとする。たとえば,会社に行くという目的のためには,電車に乗らなければならないが,あえてそれに反するような行動(たとえば,電車を一本遅らせる)を少しだけ取ってみる。それは一見すると無意味かもしれないが,新しい世界の見えを伴うかもしれない。無意味を導入することで,意味に縛られた心身を,少しだけ解放しようとする。本書が勧めるのはそういう「余暇」の時間,「ゆとり」の時間の確保である。あるいは,非効率性や不確実性への許容である。

重苦しくなく書かれているので,読みやすく,ある意味考えずに(無意味に)読める本ではあるものの,この本から何か「意味」を得たかと言われると少し疑問符もある。というのも,「焦らず生きていこ」以上の意味を感じれなかったからである。意味を得るための本ではないのかもしれないが,読書というのは無意味の意味も含めて何かしらの意味を得るための行為でもあると思う。私がまだ「意味」に縛られていて,あるいは,過剰に「意味」を求めてしまっていて,本書を本当の意味で消化できていないのかもしれない。本書で勧められた「無意味」の実践を体験してみてまた考えてみようと思う。

(以上はInstagramの再掲)

ページ数から見る著者の力点

本書は13の見出しで構成されていました。各見出しのページ数は以下の通りです。

無意味のススメページ数

見出し2「意味に殺されないために」のページ数が最も多かったです。この部分は本書の導入部で,本書の意味づけ部分でもあるので,ページ数が多くなったのかなと思います。

それ以外の見出しは15ページで統一され,「はじめに」と「おわりに」も3ページで統一。よく見てみると,各見出しのページ数が3の倍数。これにも意味があるのでしょうか?と思ってしまうのは,「無意味のススメ」に反しているのかもしれません。

*目次*

はじめに
意味に殺されないために
無意味のススメ
無意味の美
無意味を考える
無意味を見る
無意味を読む
無意味に触れる
無意味と遊ぶ
無意味のデザイン/社会から
無意味のデザイン/個人へ
無意味の意味
おわりに

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