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年下の恋人について。

恋窓-koimado-へのご相談>

初めまして。
僕には14歳年下の彼女がいます。
僕が36歳の社会人、彼女が22歳の専門学生です。
付き合って、1ヶ月と少し経ちましたが大好きです。遠距離恋愛で月に1度しか彼女には会えないです。
まだ2回しか会えていません。
相手は就活が終わり、これから学校の実習→国家試験が来年の冬に控えており、忙しい状況ですが、毎日友達と遊び歩いたり、飲んだりして深夜帯や朝帰りすることも多いみたいです。

彼女は僕とデートしている時、スマホばかり触っています。2回目のデートのカラオケ中、それが頻回で挙句の果てには電話してくる!と言って部屋から出て行ってしばらく帰ってきませんでした。
帰って来てから「忙しそうだから今日は帰ってもいいよ?」と伝えると「忙しくても側にいるやん?」と何食わぬ顔で話してきました。僕も彼女が大好きなので、それ以上は何も言えませんでしたが…。これって、彼女は僕のことそう好きじゃないんですかね…?

他にも、まだ2回しか会っていないのに、9月に会う際に「友達を連れてきたい」と言ってきたので「何で連れてきたいの?」と聞くと「人数が多い方が楽しいから」と言うので「僕と2人だと楽しくない?」と聞くと「2人が嫌だったら皆と遊ぶのも嫌だよ」と言われました。
彼女の心理が分かりません…。

また、僕はLINEで毎日「好きだよ」などの愛情表現をしていますが、彼女はそれに答えてくれなくなったり、連絡頻度も付き合いたては毎日電話したり、LINEも4〜5回やり取りをしていましたが、電話も3〜4日に1度、LINEは朝と夜のみになって、返ってくる文章も短く素っ気なくなりました。

僕は彼女のことが、大好きなのでこれからもずっと一緒に居たいのですが、今現在の彼女の僕に対する気持ちと、どういうアクションを取ると、彼女の恋愛感情や愛情を冷めさせずに長続きさせられるかをご教授いただきたいです…。

何も手につかないぐらい真剣に悩んでいるので、どうか宜しくお願い致します。
(30代男性)

 遠距離恋愛のつらさは個人的にもわかります。詳細に書いていただいたので,気になる点はいくつかありますが,ご質問いただいた以下の2点にしぼって,今回の話を進めていきたいと思います。

・彼女の僕に対する気持ちはどういうもの?
・関係を長続きさせるにはどうしたらいいのか?

愛のかたちは人それぞれ:愛を構成する3つの要素

 相談者さんに対する彼女の気持ちは〇〇です,と断定的に言うことはできませんが,ご相談内容を拝読する限り,気持ちに多少のズレがあるようには思います。そのズレの男女差については別の記事でご紹介させていただきました。端的に言えば,「男性の方が女性に比べて関係の初期に気持ちが高まりやすい」ということです。

 ただし,「気持ち」(愛)と一言で言っても,その愛にはいくつかの構成要素があると言われています。たとえば,スタンバーグによる愛の三角理論では,愛の構成要素として以下の3つを挙げています。

親密性:「親しさ」や「相手とつながっている」と言う感覚として経験される。相手の幸福が増すことを望み,一緒にいると幸せで,相手を尊敬し,互いに理解し,所有物を共有してもよいという気持ち。
情熱:相手との「ロマンス」や「身体的魅力」によって引き起こされる。相手と積極的に関わりをもとうとする気持ち。性的欲求もここに含まれる。
コミットメント:付き合いの短い時期においては「相手を愛する決意」を指し,長くなると「互いの愛を維持していこうとする意思」を指す。関係を続けたいという気持ち。

 この3つが組み合わさることで「愛」と呼ばれるものになると考えられていますが,そのときのそれぞれの強さには違いがあります。たとえば,3つの要素がすべて高く「バランスのよい強い愛」のようなかたちもあれば,親密性は高いけどそれ以外は低い「友人関係のような愛」もあります(図1)。

愛のかたち

図1. スタンバーグの愛の三角理論からみる愛のかたちの例。

 「男性の方が女性に比べて関係の初期に気持ちが高まりやすい」と書きましたが,このときの気持ちは実は「情熱」に相当するものです。なので,関係の初期において男性と女性を比較すると,同じような愛のかたちにはならないと考えられます。

 おそらく相談者さんは親密性も情熱もコミットメントも高い愛のかたち(たとえば,バランスのよい強い愛)をされている一方,彼女さんは相談者さんよりも情熱が低い愛のかたちをされているのかもしれません。そのような愛のかたちの違いが相談者さんにとっての不安につながっている可能性があります。

 しかし,愛のかたちは違えども「愛」であることに変わりはありません。少なくともご相談内容を拝読する限りは,彼女さんは親密性もコミットメントも高いように感じます。「情熱」の側面だけから愛を捉えると「愛がない」ように思えるかもしれませんが,親密性もコミットメントも合わせて愛を捉えると,彼女さんは十分に「愛がある」と考えてもよいと思います。

 ちなみに,関係がうまくいくためには,「情熱」よりも,「親密性」と「コミットメント」が大事だとも言われています。

恋人との関係を長続きさせるために:代替となる選択肢と再確認傾向

 投資モデルという考え方では,恋人との関係を長続きさせるためには3つの重要な要素があると言われています。

投資量:相手や関係のために費やした時間やお金などの関係に投資した資源の大きさと重要さ。その資源は関係が崩壊した場合に価値を減じたり失ったりする。
代替となる選択肢の質:友人関係や趣味などの恋人以外で利用できる選択肢の主観的な望ましさ。たとえば,あなたは辛いもの好き,恋人は嫌い,友人は好きという場合,恋人とはできない行動(辛いものを食べに行く)を友人と行うことができるので,友人はあなたにとって望ましい存在(代替となる選択肢の質が高い)。
関係満足度:関係のなかでネガティブ感情よりもポジティブ感情を経験する程度。

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図2. 投資モデルに基づく関係維持の要因図。古村他(2013)から引用。

 相手や関係のために労力を投資するほど(投資量が多いほど),恋人以外では恋人といるときのような望ましさが得られないと感じるほど(代替となる選択肢の質が低いほど),関係に満足しているほど,関係が長続きしやすいと言われています。ですので,これらのいずれかを改善することで関係が長続きしやすくなると考えられますが,このうち自分で努力しやすいと考えられるのは,代替となる選択肢の質です。代替となる選択肢の質であれば,自分の努力でいくらか改善がしやすいと考えられます。そして,代替となる選択肢の質を改善するとは,恋人から得られるものが他のもの(友人関係や趣味など)からは得られないものになるということです。すなわち,恋人にしかできないことをするという意味になります。

 では,恋人にしかできないこととは何かと言えば,(たくさんあるとは思いますが)重要なものとして,「安全な避難所」と「安全基地」という機能があります。安全な避難所とは,ストレスや悩みがあるときに恋人から慰めてもらうとすることです。安全基地とは,恋人から信頼や安心感をもらうことで,仕事や勉強に集中して取り組めることです。要するに,安心や信頼を提供することによってパートナーの「生きる力」を高めるという機能が恋人にはあります。その機能を高めることが恋人をかけがえのない存在として,つまり,他に代わりはいない存在として確立することにつながると考えられます(投資モデルの言葉で言えば,代替となる選択肢の質が低くなるということ)。

 相談者さんの彼女さんは,現在忙しい状況とのことで,心身ともに疲労が溜まっていると思われます。だからこそ,それを発散するために,夜遅くまで遊んだりしているのだと思います。そう考えると,それを咎めてしまうとおそらく逆効果ですので,相談者さんの対応としては,(不安かもしれませんが)心配しながらも夜遊びを受け入れる(体調には気をつけてねと伝えながらも夜遊びでストレス発散することを認める,など),勉強がしやすい環境作りを行う(連絡は頻回に行わず朝と夜の挨拶だけにして,国試が終わった後の計画を立てておくねのように勉強へのモチベーションを高めるようなことを伝える,など)というように,安心と信頼のもとで彼女さんが行動できるような環境づくり(機能)を担うことが望ましいように考えられます。

 逆に,パートナーが自分を好きかどうかが不安であるがゆえに,相手の気持ちを確かめるようなことを繰り返していると(これを再確認傾向と呼びます),恋人との関係は悪化してしまいます。これは,相手にとって安心と信頼がない環境を作るためです(つまり,安心と信頼を与えることと逆の機能を果たしているということです)。相手の気持ちを繰り返し確かめるとは,何も「私のこと好き?」と何回も聞くだけではなく,「最近連絡くれないけど何かあった?」と繰り返し尋ねるとか,「大好きだよ」と一方的に繰り返し伝えることも含まれます。すなわち,パートナーが自分のことを好きであるかどうかに自信を持てず,パートナーの自分に対する好きな気持ちを確かめるような振る舞いをしてしまうと,それは二人の関係にとって悪影響になります。

 「忙しくても側にいるやん?」と彼女さんがおっしゃるように,月に1回会えていること自体が愛情の裏返しであり(遠距離カップルの6割は月に1回未満しか会えていないようです),毎日連絡を取れていること自体が愛情の裏返しであると考える方が,遠距離カップルの実情には即しているようにも思います。

 あまり不安にならず,彼女さんがあなたのことを好きという気持ちを信頼して,彼女さんと一緒にいられる時間,連絡を取れる時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。あなたと彼女さんの遠距離恋愛がうまくいくことを祈っています。

参考文献

金政 祐司・相馬 敏彦・谷口 淳一(2010).史上最強よくわかる恋愛心理学 ナツメ社

古村 健太郎・仲嶺 真・松井 豊(2013).投資モデル尺度の邦訳と信頼性・妥当性の検討 筑波大学心理学研究,46,39-47.

丹羽 由佳理・大森 宣暁(2003).遠距離カップルのコミュニケーション行動に関する考察 土木計画学研究・講演集

松井 豊(1993).恋ごころの科学 サイエンス社

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