見出し画像

明けの満月

寒さに凍えながら駅に向かって歩いていた。
ふと見上げた空に綺麗な満月が浮かんでいた。
もう夜は明けたというのに。
煌々とした月。
それを見てふと思い出した。
テレビで昨日が今年最後の満月だと言っていた。
まだ今年は残り二週間以上あるというのに、もう今年は満月を見ることはないのだと思ったらすごく不思議な気持ちになった。


私は太陽よりも月が好きだ。
月は太陽の光がないと輝くことができないけれど、それでも月が好きだ。
高校生の頃に仲が良かった友達と交換していた小さな手紙(最近の子はこういうのやらないんだろうな)に、

“私は月になりたい。陰を作りたいわけじゃないから”

みたいなことが書かれていて、すごく感銘を受けたことを月を見る度に思い出す。
太陽は明るい。けれどその光によって陰を生み出す。
月は自分の力では輝けないけれど、暗闇を照らす。
すごい気づきだなと思った。
以来、月への憧れが大きくなった。
どんな人になりたいかと考えた時、浮かぶのは月だ。
誰かの暗闇をそっと照らせるようなそんな人になりたい。
私に感銘を与えた彼女は、男女問わず人気者だった。
やはりそういう人は考えることが違う。
あれから20年以上経ったが、月と私の距離は全く埋まっていない。


今朝の満月はとても綺麗で、これが会社に行く朝じゃなかったらと思った。
忘れられない月は、石垣島でナイトカヤックをした時にスピッツの「スターゲイザー」をかけながら見上げた月。
見る場所によって月はさらに表情を変えて、優しく温かく照らしてくれる。
次は「西表島でマングローブ探検をしようよ!」と希望に溢れた夜から数年。
この時以来、大好きな石垣島には行けていない。
あー、石垣島に行きたい。
ホテルと離島ターミナルと繁華街を何往復もしたい。
スナックパイン食べたい。
マグロ祭したい。


あ、話が違う所に着陸してしまった。
月は思い出すら優しく照らしてくれている。