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【食旅(しょくたび)vol.1】エチオピア(የኢትዮጵያ)を味わう

Der Mensch ist was er isst.(人はその食べるところのもの)
私が大学時代に買った本はこのことわざから始まる。

この意味は「人間はその人が何を食べるかで(その人のことが)わかる」というものである。つまり食べているものから人となりがわかってしまうということだ。
私も学生の頃、学校で配布された地図帳を開くと、見知らぬ地域の地図を見ては様々な妄想を膨らませた。特に食べ物や人の暮らしには興味があった。地図から読み取れることから人々の暮らしを想像するというものだ。
例えば、この場所は暖かくて雨が降る地域だから、お米を食べるのかな…とか、お肉よりもお魚が多いのかな…とか、片手で食べられるメニューが豊富だと皆せかせかしているのかな…とか、昼からお酒を飲んでいるとは何て陽気な人たちがいるのかな…とか、地図を片手に想像を膨らませてしまうのだ。
大学生になってからは旅行先を調べるとき、その土地の見るべきものを探しながらも、その土地の特産やおいしいお店を探している時が一番楽しい。
そして旅行先ではなるべく現地の人が行きそうな店に行き、そのお店のおすすめの物を注文するようにしている。とても美味しくて次の日も食べに行き、お店の人に覚えられる時もあったし、お腹を壊してしまい帰りの飛行機で寒気に襲われた時もあった。

そんな旅行の時の思い出に耽っていたら、なんか急に出かけたくなったけど、なかなかすぐにお出かけなんて言えない。
休暇が長くとれないお仕事上、近い国にしか行けないと選択肢が少ない。今は円安で旅もお金がかかる。

そんな矢先、友人からこんな連絡がやってきた。

「エチオピア料理、食べに行かない?」

今までエチオピアは地図帳で見たことがあっても、よく考えたことがなかった。アベベって確かエチオピアかな?コーヒーで聞いたことがある。その程度のことしか知らないなと思ったら、よく知りたくなってきた。

Der Mensch ist was er isst.(人はその食べるところのもの)

そうだ。その国を知るならまずは食べ物から知ろうと。ここに私の食を通じて、世の中や人を知る「食旅」を始めることにする。

その第一回はエチオピア料理「中目黒・クイーンシーバ」でエチオピアを知ることとしよう。

エチオピア料理「中目黒・クイーンシーバ」

中目黒の山手通り沿いにある「クイーンシーバ」

マンションの地下にお店の入り口があるみたい。入口からこれぞエチオピアを見せつけられる。これが本場の洗礼か。

期待が膨らむお店の入り口

お店に入ると、お店の装飾が入口同様本格的で、メニューよりも先にお店を見まわしてしまう。

シマウマの毛皮ってあるんだなと

店員の方にメニューの説明を受けたが、友人と相談しお店のお勧めのものを注文した。(メニューの写真を撮り忘れてしまった…)
いつもの海外のお決まりパターンである。すると出てきたものに驚いた。

酸っぱいクレープ、その名は「インジェラ」

左側にあるもののグレーなクレープ、その名はインジェラ。見た目は、申し訳ない、使い古したおしぼりかと思った。

パンと紹介されて出てきたのがインジェラ(左)とダボ(クミンシードが入ったパン)(右)

インジェラをちぎって口に近づけた…
口に入れた瞬間…酸っぱい!すごく酸っぱい!
酸味の刺激が強い!お酢をそのまま飲んだみたいだ!

ライ麦100%のパンを北欧で食べたときも口に入れた瞬間の酸っぱさが印象的だったが、インジェラはその時の10倍以上だ。

あとから調べたが、このインジェラはテフと呼ばれるイネ科の穀物の実の全粒粉を水で溶き、数日間発酵させてから、鉄板で焼き上げてできるそうだ。
全粒粉を使っているので栄養価が高く、グルテンフリーな素材だそうだ。体にもよさそう。酸っぱいものは皆体にいいものというおばあちゃんの知恵は、異国のエチオピアでもどうやら通用するようだ。

この酸味を穀物酢の酸味だと思えばいいのだが、パンがお酢のように酸っぱいというのは驚きだった。どうやらインジェラ単独で食べるものではないみたいだ。

あとから2皿料理が運ばれてきた。
ラムが入った辛口シチューのヤベグワット(左下)とレンズ豆のマイルドなシチューのミスールだ。

シチューとパンが揃い踏み

店員さん曰く、インジェラを合わせて食べるのが現地流らしい。先ほどちぎったインジェラでシチューをつまんで食べてみる。確かに指先にシチューがつかないで済む。

インジェラとシチューでいただきます

シチューだけを食べてみると、どうやら本場の味なのか、結構辛い。ただインジェラとシチューを一緒に食べると、さっきまでの強烈なインジェラの酸味が上手く辛さを中和している。後から酸味がかすかに口の中に広がるのが心地よい。後を引くおいしさだ。この組み合わせは癖になる。是非これは一度味わっていただきたい。

本場のエチオピアコーヒーを味わってみる

食後に運ばれたのが、ホットコーヒー。エチオピアはコーヒー発祥の地なので、これは最後に味わうべきだろう。
ただなんかコーヒーの上に浮かんでいる。これは何だろう?

コーヒーに浮かぶ「テナ・アダム」

どうやら、「テナ・アダム」というハーブのようだ。「テナ・アダム」とは「アダムの元気」という意味とのこと。カレーのスパイスに入ることがあるみたいだ。他にも薬としての機能もあり、具合いが悪い時や鼻がムズムズする時はハーブをそのまま鼻の中へいれることがあるようだ。
試しに「テナ・アダム」を掬って口に入れてみると、ピリッとした感覚がして、後味がすっきりしている。何だろう、薄荷とかが近いのかな?健胃薬を飲んだ時を思い出した。
コーヒーは優しい味わい。苦さもあるが、マイルドだった。

驚きに満ちたエチオピア料理の宴が終わった。
まだまだ知らない料理があるものだと思う。そしてそれが東京で味わえることにも驚いた。
これからもまだ知らない料理を食べてみたい。私の「食旅」はまだまだ続く。


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