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中国のテレワークってどうなの?

コロナ収束がまだ見えないなか、日本ではテレワークが定着しつつある。
ただし業種により導入率に差があり、日本でも6月時点、テレワーク実施者はまだ25.7%となっている。(参照:パーソル総合研究所「緊急事態宣言解除後のテレワークの実態についての調査」)

その中でコロナ収束後もテレワークの導入を止めず、以前の様な全員出社体制には戻さない、という様な企業も増えており都内のオフィスの解約も相次いでいる様だ。

一方、収束とまでは言わないが数字の上では感染者数が減っている中国でのテレワークに対する意識どうなっているのであろうか、ネットアンケート結果を基に一部日本と比較してみた。

【調査概要】
1. 調査の方法:GMO E-Lab Marketing Research (Shanghai) CO, LTD.が運営するアンケートサイト
「Market Observer」のシステムを使用したWEBアンケート方式で実施

2.調査の対象:China Cloud Panel登録モニターのうち、中国の一級都市(北京、上海、広州、深セン)の16歳以上の男女で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発生時にテレワークを実施した方

3.有効回答数(本調査):417 名
男性:20代(53名)、30代(60名)、40代(51名)、50代以上(49名)合計213名
女性:20代(53名)、30代(55名)、40代(50名)、50代以上(46名)合計204名

4. 調査実施期間:2020年5月28日~2020年6月16日

Q1在宅でのテレワークを実施した感想として当てはまるものをお答えください。(単一回答)【n=417】

この質問では約44%が「通常とほぼ変わらず業務を遂行でき、全く問題はなかった」、と回答。「通常よりもできる業務が限られ、いくつか問題が課題が発生した」と回答した方々は約49%、「通常の業務がまったくできなくなった」という方は6%となった。明確な数字は無いが中国ではコロナ拡大以前、特にテレワークが推進されているという印象は受けなかった。しかし、急なコロナ拡大で準備もできない環境下での業務遂行を迫られた、ということを考慮すればもちろん業務に制限がある、というのは当たり前なので44%が「通常とほぼ変わらず業務を遂行でき、全く問題はなかった」、と回答したということは悪い数字では無いだろう。


Q2在宅でのテレワークに関してあなたが感じた問題として当てはまるものをお答えください。(複数回答)【n=392】

この質問では「対面でのコミュニケーションができないことによる障害」と回答した方が最も多かった。これは日本でもあがっている課題であろう。個人的な感想であり、且つ各会社の文化によって異なると思うが中国では社内、社外問わず業務上のことをチャットでやりとりすることがほとんどなので同じ場にいなくても気軽に声がかけられる、ということで言えば便利であった。

その次に多かったのは「リモートワーク等で業務を遂行する運用体制が整っていない」ということである。IT系の会社であっても特に高いセキュリティを必要とする様な業務が含まれている場合、在宅での運用には大きなコストも必要とする為にそもそも完全なバックアップ体制を構築するのも非常に難しいであろう。

日本ではどうであろうか。テレワーク実施者に対する、あるアンケートでは1位は「対面よりコミュニケーションが難しい」という回答が約46%で1位、2位には「ハンコを押印する必要があり上司の承認・決裁が取りにくい」という回答が約29%となっていた。中国では「上司の承認が取りにくい」と回答した方は12.5%と選択肢の中で最下位であった。筆者自身の経験だが押印を必要とする上司承認の頻度はやはり日本の職場での方が格段に多かった。もちろん理由はあるのだが現在の様にテレワークが導入された環境では組織の意思決定等が遅くなる原因となってしまう。現在は日本でも電子認証やタイムスタンプを活用した改革も進んでいる。これを機会に「そもそもここに認証いるのか?」ということも議論すべきであろう。


Q3今後ともテレワークの導入が進んでほしいと思いますか。
(単一回答)【n=417】

約80%がテレワーク継続を希望する結果となった。日本のアンケートでもテレワークの継続に関しては約95%が継続を希望する結果となっており両国ともに非常に高い。


Q4テレワークの導入が進んでほしいと思う理由をお答えください。
(複数回答)【n=337】

テレワーク継続希望の理由について自由回答で聞いてみたところ「通勤時間が節約できる」と回答した方が約42%で最も多かった。通勤時間がなくなることで自身の自由な時間が増える、またそれだけでななく通勤にかかる費用も無くなる為、会社にとっても良いことだ、という記載もあった。
またその次に多かったものは「在宅での業務は効率が良い」という回答で20%だった。多くの業務がオンラインで完結できる様になっている現在、家にいても問題なく業務を遂行できる、という方も今後さらに増えていくだろう。その後には「自由な時間が増える」、「感染防止の為」と回答した方が18%となった。
家族との繋がりが強いイメージのある中国だが「家族との時間が増える」と回答した方は7%だった。日本でもテレワークが拡大し、家族との時間が増えたことで発生した問題点も多い様だが同じ様なニュースは中国でも目にすることがあった。


現在、テレワークの導入および継続についてはいろいろな議論がなされている。
出社自体を無くそうとしている企業、逆に自社の強みが失われる、ということで原則出社に戻す企業、様々な考え方がある。

実は筆者自身も物理的な制約等があり2月から現在までほぼ在宅で業務を行っている。私が出した結論は「在宅にする理由が無ければ出社したい」ということだ。テレビ会議でも顔は見られる、慣れればこれが普通になる、色々な意見があるだろうがやはりフェイスtoフェイスのコミュニケーションの欠如は様々な障害を引き起こす気がしている。

メール、チャットだけのやり取りというのは基本的に業務が存在するからおこなうことであり且つ自動的に簡潔な文章になる。結果的に表現は淡白になり、感情は伝わらない。それがパフォーマンスの低下を引き起こすということを何度も感じた。高いパフォーマンスを発揮する時、誰しも感情面の充実も欠かせないと考えている。そこをしっかりとハンドリング、コントロールできるのはやはりフェイスtoフェイスのコミュニケーションであろう。

「じゃあテレワークの環境でそれができる様に●●の様な取り組みをしよう」という新たな取り組みを増やしている例も聞くがそれもそれで若干の違和感を感じてしまう。本質が置き去りになってはいないだろうか。そもそもテレワークをすることが目的ではなく、会社として如何にパフォーマンスを最大化させるのか、ということが目的である。テレワークを無くそう、と考えているわけではなく、コロナがいつ収束するのかもわからない中、この機会を生かし遠隔でも運用ができる様に整備するべきだと思う。

ただしテレワークという形態を生かすことに意識がいきすぎ、その為にまた色々なルールが生まれ別のストレスや障害が発生する、ということがあるならこれまで通り出社という形態を採用し解決することが効率的だ思う。出社、在宅等ハイブリッド型で運用する、ということも個人的には大賛成である。何事もシンプルが良い。
考えが古い、新しいということではなく、会社のパフォーマンスをどの様に高めていくのか、という本質を見失いたくないと思う。

コロナ収束がまだ見えない中、変わることを恐れず、ただし本質を見失わず試行錯誤していきたい。

ライター:Taro Nozawa

KEMBOホームページ:http://kembo-net.com

お問い合わせ:nozawa@kembo-net.com

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