見出し画像

支えあい ー「仲間」の哲学、本田宗一郎を中心に(2/4)

本田宗一郎は、仲間との支え合いを何よりも大切にしていた。彼にとって、仲間は単なる同僚ではなく、互いの長所を活かし、短所を補い合う存在だった。本田はこう語っている。

「各人が一番得意なものに全精力を打ち込んで人に惜しみなく与え、自分の欠陥は人に補ってもらうというのが、道徳教育の基本になるべきである」

本田は、一人一人が自分の強みを最大限に発揮し、仲間と協力することが、成功への鍵だと考えていた。自分の力の足りないところを自覚し、他人の知恵や力を借りることの大切さを説いている。

「自分の力の足りなさを自覚し、知恵や力を貸してくれる他人の存在を知るのもいい経験である。」

本田にとって、仲間との信頼関係は何物にも代えがたい財産だった。彼は信用を得るために必要なことを次のように述べている。

「信用というものは、好かれること、約束を守ること、人に儲けさせてやることにつきる」

仲間から信頼されるためには、約束を守り、仲間の利益を考え、行動することが大切だと説いているのだ。

本田は、仲間の個性や欠点も含めて受け入れることの重要性も語っている。

「人間はどこか抜けたところがないと面白くない。それを一つの魅力とか、美しさにまで高めるのがデザインだと思う。」

仲間の短所も魅力に変えることができると考えていた。互いの個性を認め合い、支え合うことで、より強い絆が生まれるのだ。

本田が最も大切にしていた仲間の一人が、藤沢武夫だった。本田技研工業の創業以来の相棒であり、本田が技術開発を担当する一方、藤沢は経営面を支えた。藤沢の死の翌年、本田が日本人として初めてアメリカの自動車殿堂入りを果たした時のエピソードは、二人の深い絆を物語っている。

本田は授賞式を終えて帰国した足で、藤沢邸に向かい、藤沢の位牌に受賞したメダルを掛けた。そして、こう語りかけたという。

「これは俺がもらったんじゃねえ。お前さんと二人でもらったんだ。これは二人のものだ」

本田にとって、この栄誉は藤沢との共同の成果だった。二人で一つになって、支え合ってきたからこそ、この成功があったのだ。

本田宗一郎の「支えあい」の哲学は、仲間との絆を何よりも大切にする思想だった。互いの長所を活かし、短所を補い合い、時には自分の力の足りなさを自覚し、仲間の力を借りる。そして、仲間の個性や欠点も含めて受け入れ、共に成長していく。そうした姿勢が、本田技研工業を世界的企業へと導いたのである。

支えあいを重要視する経営者は多い

自分の仕事は、人の助けなくして、一日も進み得ないのである。

半分は先輩から教えてもらう、半分は部下から教えてもらう。

すべての人を自分より偉いと思って仕事をすれば、必ずうまくいくし、とてつもなく大きな仕事ができるものだ。
松下幸之助

人間は弱い生き物なのだ。どんな人も心の底では、他人の評価や感謝を必要としている。自分の仕事が誰かを幸せにしているという実感は、仕事を続けていくための極めて重要なモチベーションになり得る。
三木谷浩史


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?