「人の心に棲んでみよ」 思いやり-「仲間」の哲学、本田宗一郎を中心に(3/4)

「人の心に棲んでみよ」

本田宗一郎は、仲間への思いやりを何よりも大切にしていた。彼は常に、相手の立場に立って考えることを心がけ、それを社員にも求めた。

本田は「人の心に棲んでみよ」という言葉をよく口にしていた。これは、お客様の立場に立ち、どんな商品を本当に望んでいるのかを深く考えることを研究者たちに求めたものだ。本田は、市場調査によって製品を決めることを嫌い、顧客の声を無批判に受け入れることを良しとしなかった。自動車を普及させたヘンリー・フォードの言葉「もし顧客に望むものを聞いていたら、『もっと速い馬が欲しい』と答えただろう」にもあるように、本田は技術者として、お客様の本当のニーズを見抜く力が必要だと考えたのだ。

同じように、管理職に対しては「部下の心に棲んでみよ」と言いたかったのだろう。部下の立場に立って考えることで、自然と思いやりが生まれると本田は信じていた。特に、下積みの人たち、裏方の人たちを大切にすることを重視した。そうすることで、後ろを振り返るリーダーシップが自然に身につくと考えたのだ。

本田は、人を動かすことのできる人の条件についてこう語っている。

「人を動かすことのできる人は、他人の気持ちになることができる人である。相手が少人数でも、あるいは多くの人びとであっても、その人たちの気持ちになりうる人でなければならない。」

相手の気持ちを理解できる人こそが、人を動かすことができると説いているのだ。しかし、そのためには自分自身が悩むことも必要だと本田は言う。

相手の立場に立つということは、その人の苦しみや悩みを自分のものとして受け止めることでもある。そうした経験なくして、真の思いやりは生まれないと本田は考えていたのだ。

本田は、若い社員にこう話したという。

「私は若い社員に、相手の人の心を理解する人間になってくれと話す。それが哲学だ。」

相手の心を理解することこそが、本田の哲学の根幹をなしていた。さらに本田は、人間にとって最も大切なことは学歴ではなく、他人から愛され、協力してもらえるような徳を積むことだと説いている。

「人間にとって大事なことは、学歴とかそんなものではない。他人から愛され、協力してもらえるような徳を積むことではないだろうか。そして、そういう人間を育てようとする精神なのではないだろうか。」

本田宗一郎の「思いやり」の哲学は、常に相手の立場に立ち、その心を理解しようとする姿勢から生まれたものだった。お客様の本当に必要としているものを見抜き、部下の苦しみや悩みを自分のものとして受け止める。そうすることで、真の思いやりが生まれ、人を動かすことができる。この哲学こそが、本田の経営の根底にあったのだ。

ほかの経営者からも「思いやる気持ち」に関する発言が見られる。

葉隠の教えに「武士は己を知るもののために死す」とあるが、トップに自分の名前と能力を知られ、期待されていると社員が感じれば、おのずと仕事へのやる気は高まるのである。
社員の名前を全て覚えるようにしていた。
江副浩正(リクルート創業者)

好きだから、自分にとって都合がいいから思いやるのではない江副は万人に対し広い心を持てと説いた

君は近いうちに気の合わない人間に出くわすだろう。あいつとは気が合わない、あの人はどうも苦手だ、等という心を持つことは自分の居場所を狭くする。誰に対しても「彼も人なり、我も人なり」と、広い心を持って接するように。
江副浩正

仲間の大切さを説く経営者は多い

孫正義
「今まで自分が悩んできた国籍だとか人種だとか同じように悩んでいる人達がいっぱいおる。俺は立派な事業家になってみせて孫正義の名前で、みんな人間は一緒だと証明してみせる。」
ナンバーワンと組むことに成功すれば、黙っていてもうまくいく。
成功したければ運の良い人と付き合え。
「怒るのは自分の知恵の足りなさを認めるようなものです。」

三木谷浩史
自分の周りを探せば、答えはたいてい見つかる

前澤友作
いい人が集まれば、いい商品が提供でき、いい会社ができる。いい会社にはまたいい人が集まって、好循環が生まれます。


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