2021.8
朝、職場へむかうために家をでると雨が降りはじめた。アスファルトを白く煙らせながら、ばらばらと音をたてて降る雨。足早に最寄りの駅まで行き、地下鉄に乗る。
地下鉄から降りると、くっきりと晴れていた。雨が夢だったかのような青い空。強い日差し。影がない場所では目をあけるのもつらいほど。
そうだ!と、さっきまでさしていた傘をひらく。日差しよけにもなるし、雨でぬれた傘も職場につくころには乾くはず。そう思いながら背の高いプラタナスが街路樹の道を歩く。
すると、さした傘にさわさわとゆれる影が映っているのであった。それは道沿いに植えられたプラタナスの葉の影。
歩いている私のリズムで大ぶりな葉の影は傘の中を通りぬける。
傘の内側がモノクロフィルムのスクリーンになったかのよう。小走りすると次々と、ひっそり歩くとゆったりと。影が私の傘の中を動いてゆく。
ときおり強い風が吹く。ざざざざと葉がふるえ、とどまっていた雨粒がプラタナスから降る。ぱらぱらと傘にこまかい音がたつ。そして粒のひとつひとつが光りながら傘から地面へと落ちてゆく。
きれい。
何度も通っている道なのに。まだ見知らぬ美しいものに出会うこともあるだなんて。
豪雨や長雨とは別のサッと降ってカラリと青空になるそんな夏の雨は好き。