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将来に繋がるかもしれない・・・

Oct 19, 2005(楽天blogより)

将来に繋がるかもしれない・・・

舞台芸術学院(以下舞芸)の学生は
演劇を将来の仕事と決めて入学してきた学生だけではありません。
しかし教師は演劇・表現の専門家であり、授業もそのように
カリキュラムが組まれています。
事実、何人、ここから演劇人として巣立っていくのでしょうか・・・
そのことはいつも頭からはなれません。

演劇学校の卒業生の将来は、全く保証されていません。
就職活動もなければ、就職への斡旋もありません。
そのことは学生も承知しています。

それなのに厳しいレッスンは続きます。
年間の発表会は決まっていて、そのスケジュールに沿って
レッスンは組まれています。
少しずつ与えられる課題が上がっていく中で、
今やらなければならないことにひたすら夢中になることが、
将来に繋がるかもしれない・・・
健気なほど彼らは一生懸命です。

舞芸での二年間は、多分彼らにとっては初めての厳しい経験
だと思います。
クラスは仮の劇団のようなものです。
発表会に向かって具体的に立ち上げて行く作業は、やはり劇団の
公演と同じ作業です。
クラスは協力し合うしかなく、こんな密な関係を集団で持つことも、
こんなに汗してからだを使ったことも初めてでしょう。
しかし何と言っても、
教師や演出家からの自らの存在の核心に迫る助言を受け止めるには、力を必要とします。

「僕には演劇は厳しくてやっていけないと思う」

そろそろ決断しようとしている男子がいます。
彼はそれでも卒業公演まで精一杯やろうと決めています。
繊細で傷つきやすい彼は、自分の将来に不安を抱き、自分の問題を解決する為 あえて舞芸を選びました。

彼の存在は、クラスメートに少なからず影響を与えました。
何気ないこと、簡単なこととして気楽に通過できることも、彼にとっては重要な問題になりました。
生きることをまじめに考えなくっちゃなぁ・・・、
彼を横目に見ながら哲学するようになったのです。


放課後、狭い廊下を陣取って、
「ここを通る人は将来の夢を言わなければ通れない」 
という遊びをやっていました。
グループの中に彼も混ざっていました。
捕まった人は笑いながらも真剣に将来の夢を語り、それには
おもわず聞き入ってしまったのでした。


今日のレッスンは…

「バランスを崩さなければ、
 動きは生まれない」

             野口 三千三

〜でした。

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