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BtoBのインハウスデザイン部門が考えるデザインシステムのあり方

これまでの状況

インハウスデザインチームのメリットの中でも最も大きな効果と実感しているのが、共通言語が多いため背景理解が容易なこと、かつ深い真意まで触れることができる環境にあることです。
当社のデザインチームはその強みを生かすべく、クリエイティブコンサルティングを強化し、深くそして具体的な課題に対して、マーケティング戦略をより最大化することを使命とした最適なクリエイティブ案で提案するというアウトプットを長年積み重ねてきました。

アウトプット制作に最大限時間を割くべきと考えていたことと、デザイナー以外の人がグラフィックを作ることはほとんどないため、デザインガイドラインは最小限しか作成していませんでした。

  • ロゴのレギュレーションガイド

  • サービスブランドごとにあるカラーパレット

  • foundationをカスタマイズしたCSSフレームワーク

  • デザインテンプレート

  • パワーポイント資料のテンプレート

  • 過去に作成したデザインデータ

これらがあればデザイナーが、頭の中に自然と存在しているルールを用いていい感じに調理してくれるので「○○らしいデザイン」を都度作成することができていました。

デザインシステムに着目したきっかけ

2020年からのコロナ禍でテレワークが爆発的に増えたことを背景に、当社の電子契約サービス「電子印鑑GMOサイン」も多くの人に注目されるサービスとなりました。
より多くのお客様にご満足いただけるよう、だれでも使いやすい画面にできるようにと、管理画面のUI/UXリニューアルプロジェクトが発足し、そのタイミングでデザインシステムに着目しました。
当時は簡単なパターンライブラリしか作成していなかった私にとってデザインシステムはやりたいことが詰まった光のような方法であり、デザインシステムを活用して自社で実現したい形とは何か、実現するにはどうすればよいか、夢中で模索しました。

ではなぜ、デザインシステムに着目したのか。
それは、持続可能なデザインを作りたかったというのが原点です。

前述したとおり、都度、社内の依頼主から相談を受けて制作を重ねてきたのですが、担当者が変わる度に微妙にニュアンスが変わってくる。広告クリエイティブの世界では、その時々のトレンドにあった表現を盛り込む内にニュアンスが変わる必要があると許容していました。(これも元来、「変わる」のではなく「変える」ものだと今は思います。)

しかしお客さまが日々操作するUIともなれば話は別です。 機能を開発ごとに仕様やUIデザインも考え、部分最適を積み重ねることにより、体験に一貫性が持てなくなってしまっていました。 この現状課題を解決するには「持続可能なデザイン」は不可欠であり、それを実現するもってこいの方法がデザインシステムでした。

当社の描くデザインシステム

デザインシステムとは、組織や事業における目的を達成するために作られた首尾一貫したデザインをパターン化し、そのパターンの運用方法をルール化することでデザインの民主化を実現する仕組みです。(ここでのデザインの民主化とは、だれもが主体的にデザインができる状態を指しています。)
そのために、デザインガイドライン、パターンライブラリやツールに加え、デザインを運用するために必要なプロセスのルール化、デザイン判断基準も開発していきます。

どのポイントに重点をおいて設計するかは、その企業それぞれの特色があるようですが、 当社におけるデザインシステムの目的の中でも優先順位が最も高いのは「エンジニアとデザイナーの協働環境構築」です。

これまで当社内のエンジニアとデザイナーは、それぞれ違う視点、違う思考法、違う道筋をたどってきました。同じ課題を解決するにも、それぞれのアタリマエを形成している背景が違いすぎるため相互理解が難しくなることも少なくはありません。しかし、両者とも同じ課題を解決したいと考えています。最高のUX品質を創るという目的はひとつです。

そこで、デザインシステムという共通言語を構築し、プロトタイプ生成速度を上げることで可視化する頻度を上げた結果、お互いの理解を深め、かつ理解コストが下がり前向きな議論が生まれるようになってきています。

現在はまだデザインガイドラインからパターンライブラリまでをシームレスに一括管理できておらず、デザイナーとエンジニアが分業して管理している部分が多く残っています。 また対象も実務に活用できているのは一つの事業ブランドのみです。

会社全体を対象としたデザインシステムについては、プロダクトデザイン領域を中心に鋭意開発中です。
また各種コミュニケーションツールも随時リリースをしていく予定です。

今後の展望

「エンジニアとの協働環境の構築」が最優先目的と前述しましたが、次に取り組んでいかなければならないと考えているのが、「コミュニケーションデザインの共通化」です。

個々が発信する伝えたいことは、当社のミッション「コトをITで変えていく。」が元になっており本質の誤差は少ないのですが、話しかけ方や聞き方という「コミュニケーションデザイン」という面においては、発信する場面ごとの担当者それぞれで見た目の工夫をしなければならない状況のため組織としての一貫性を保てていません。
すなわち、社会への認知の広さや深さに影響するブランディングの機会損失をし続ける状況を作ってしまっています。
また、個人が都度試行し工夫していただいているため、コストも多くかかってしまっている現状です。

今後は、このようなコミュニケーションにおける課題感もデザインシステムを利用し打破していきたいと考えています。


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