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オージーはロックダウン中に何をして過ごしているか?

シドニーやメルボルンなどで実施中のロックダウン(都市封鎖)下では、行動の自由が制限される。そんな中、イージーゴーイングな国民性で知られるオージーはどんな風に日々を過ごしているのか、パンデミックの日常を取り上げてみたい。

散歩中に「テディ・ハント」

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昨年、2020年のロックダウンの際に、ちょっとしたトレンドになった「テディ・ハント」。直訳するとテディベア狩りだが、実際はテディベアを見つける遊びで、2021年の今もそのまま残っているようだ。

ロックダウン中も許可されているウォーキングやランニングなどの運動中に、家々の窓に飾られたテディベアを探すというもの。もちろん以前は窓際にテディベアを飾る人などあまりいなかった。テディベア以外にも、今は様々なぬいぐるみが窓辺や庭先にも座ったりぶら下がったりしている。

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特に小さな子供には楽しいアクティビティーだし、大人でも見つけるとほっこりとする。「見つける誰か」のために小さな幸せを仕掛ける気持ちの余裕は、ぜひ見習いたいところだ。

スポーツ好きは健在

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オーストラリアは一般的に、スポーツを好む人が多いといわれている。プレーも観戦も、だ。子供は学外で何かしらのスポーツを経験するし、住宅街にはスケートボード用の公園や、バスケットボールやテニスのコート、サッカー場などが付帯する公園も珍しくない。もちろん基本的に全て無料なので、スポーツが栄えるのも頷ける。

シドニーでは現在、ロックダウンによる規制で「2人まで一緒に運動可」なので、サッカー場に行けば個人レッスンを受ける子供や、2人組でボールを蹴る人たちを見かける。個人スポーツのスケボーは前にも増して人気のようで、専用の公園には年齢を問わず多くのスケートボーダーが集う。

穏やかな気候も手伝って、シドニーではランニングも元々盛んだ。ロックダウン前なら、ランニングシューズとウェアを身につけて走って通勤し、朝は会社に設置されたシャワーを浴びる、というライフスタイルも珍しくなかった。今も朝や夕方に走っている人を多く見かける。

家や庭のメンテナンス

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DIY好きも、オージーの特徴かもしれない。ロックダウンが始まってすぐ、家の外壁の塗装、納屋の修繕、庭の花壇づくりなどの資材を扱うホームセンターが普段以上に賑わったようだ。

元々、庭や広いバルコニーでBBQをするのは典型的なオージー家族の休日の過ごし方。家で過ごす時間も、ホリデーの旅行と同じくらい大事にしている彼らにとって、家のメンテナンスも楽しみの一つなのだろう(もちろん業者に頼むことも多いが)。

パンデミックにより在宅時間が長くなったことで、カーペットやソファ、ベッドなど、普段まじまじと見る機会がなかった家財に目が向き「なんて汚いんだ!」「もう買い替えなくては!」と気付いてしまい、新調するために散財した、という話もよく聞く。快適な在宅ワークのためのデスクや椅子も、ロックダウン中によく売れているらしい。

料理やベイキングも人気

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ロックダウン中、飲食店はテイクアウェイ(持ち帰り)のみの営業なので、市民に外食という選択肢はない。ウーバーイーツなどの配達業も盛況だが、やはり家庭で料理をする機会は増えたようだ。

今まで時間がなくてできなかった凝った料理に挑戦する人もいれば、料理そのものに縁がなかった人がしぶしぶやり始めてハマる、という例もあると聞く。

カット野菜や人数分の肉に調味料までセットになった、プレクックの食材配達サービスも、提供する会社が増えている。焼くだけ、煮るだけ、などの簡単な調理で出来立てが食べられて、買い物に行く手間もなく、しかも値段も手頃。多文化のオーストラリアらしく、ベジタリアンやビーガンなどのメニューの選択肢もばっちり用意されている。

パンや焼き菓子など、オーブンを使ったベイキングも人気だ。食通向けには美味しいサワードゥ(天然酵母)のベーカリーも多いが、酵母そのものを販売する店もあり、自宅で挑戦する人が増えていると現地メディアでも話題になっていた。大量生産のパンとは異なり、数日間かかるプロセスを経て作るサワードゥブレッドには特別な味わいがあるし、焼きたてはなおさらだ。

元来、人は全ての食べ物を手作りしていたはずで、そこには収穫から加工までの長い時間がセットだったと思う。長い時間をかけて関わり、方法を考え、自分の手で触れて作ったもののほうが、その価値を理解しやすい。「手作りブーム」がブームで終わらず、原点回帰のきっかけになればいい。

ウェビナーやバーチャル展覧会

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国土の広大なオーストラリアでは、都市間の移動も楽ではない。たとえば、国内第一と第二の都市、シドニーとメルボルン間の距離は約700キロ。これは東京〜広島間に相当し、シドニー在住の僕が、メルボルンで開催されるイベントに行きたくても、気軽に行ける距離ではない。

ところが現在、両都市がロックダウン中。リアルで行われるはずだった講演や展覧会などが、どんどんオンラインに移行し、国内のみならず海外から参加できるものもある。コロナ前よりお金も時間もかけずに、質の高い文化にふれられることは、パンデミックの恩恵だ。

もちろん、博物館で展示品の現物を見られず、講演参加者の息遣いを感じることもできないのは弊害だが、少なくとも今は良い点に目を向けたい。天文学者の解説付きの天体観測会、人との交流も可能なブッククラブなど、時間や場所の都合で、オンラインだからこそ参加できる人もいるだろう。

コロナが僕らに遺すもの

そこで気づかされるのが、コロナ以前、こうした催しに参加しにくかった人たちの存在だ。子育て中でベビーシッターを頼む余裕のない人や、介助の必要な障がい者や高齢者、夜に出歩きにくい人など。彼らは、イベントがオンラインに移行してやっと参加しやすくなったのではないだろうか。

暮らす町を歩く時間、体を動かす時間、料理に割く時間、そのどれも、忙しい日々の中ではなおざりにされてしまいがちなものだ。それらを取り戻すことが、丁寧に生きることだとは思わない。生き物として普通に生きることなのではないか。

新型コロナウイルスが僕ら人間にもたらしたものが、パンデミック期間限定の習慣や考え方とはならずに、何か新しい変化や気づきとなって残っていくことは、人間社会の今後のために必要なことである気がしている。





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