中平了悟

尼崎市のお寺の住職/大学で仏教・浄土真宗などを講義しています。

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最近の記事

『タイパの悪いこと』(『ないおん』2023年3月号掲載)

 数年前、誕生日プレゼントでコーヒー豆をもらいました。それから、家にあった古いミルで豆を挽き、コーヒーを淹れるようになりました。  ミルで豆を挽くと、豆を砕く感覚が手から伝わってきます。カリカリ、コリコリ。挽きたての豆にゆっくりとお湯を注ぐと、大きく膨らんで、呼吸をしているかのようになります。モコモコ、ポコポコ。  お湯を沸かすところから始めて、コーヒーを口にするまで十分くらいかかります。手間と時間がかかるのですが、その「プロセス」に面白さや楽しさがありました。  しかし

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    • 「どうして勉強しないといけないの?」(『教育あまがさき』第90号、2022年10月刊行)

      ※『教育あまがさき』第90号(尼崎市教育委員会、2022年10月発行)に寄稿・掲載された文章です。 ※有料記事になっていますが、全文無料でご覧いただけます。 活動や記事への応援として、ご寄付いただけるとありがたいです。 タイトル「どうして勉強しないといけないの?」 「どうして、勉強しないといけないの?」 子どもたちからこんな質問をされたらどうしますか?高校・大学、就職先といった希望する進路を得るため。将来に夢をかなえるため。子どもが納得する答えを探さなきゃ。そんな風に思わ

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      • 「赤ちゃんに会うと笑顔になれるから」(『ないおん』2021年7月号掲載)

         赤ちゃんのもつ力はすごいなぁと思うのです。  ある日、電車で赤ちゃんを見かけました。お顔をお母さんの肩にのせるようにだっこされていました。目に映るものが面白いのか、きょろきょろとしています。  ちょうど駅から、不機嫌そうな顔をした方が乗ってきました。その方が赤ちゃんの方に近づいていきます。トラブルになったら困るな、とドキっとしました。しかし、次の瞬間、その方が「あばばば」と赤ちゃんをあやすかのように、にこやかな笑顔を赤ちゃんに見せたのです。難しい顔をしていたその方の表情と雰

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        • 〈法話原稿〉「S高校の成道会にて」(後編)

          ※ 過日 S高校・S中学校の成道会にて行わせていただいた法話の原稿です。前編(https://note.com/n_ryogo/n/ned76192dd892)の続きです。 【歪んだ見方】 もうひとつ、お釈迦さまのさとりについて、みなさんと今日は考えてみたいと思います。  お釈迦さまのさとりを、真実にめざめるということ、それから「正しくありのままに物事を見ること」といいました。 さとりとはそういうものだそうです。 しかし、私たちはまだ、さとっていません。 ですから、真実に目

        『タイパの悪いこと』(『ないおん』2023年3月号掲載)

          〈法話原稿〉「S高校の成道会にて」(前編)

          ※ 過日 S高校・S中学校の成道会にて行わせていただいた法話の原稿です。 みなさん こんにちは 中平了悟といいます。 浄土真宗のお坊さんで、お寺の住職をしています。大学や、お坊さんの学校で仏教の授業をさせていただいたりすることもあります。お寺で法話をすることもあります。 今日は、こちらS中学校 S高校の「成道会」の法要での御法話、お話をさせていただく機会をいただきました。 20分弱の時間です。どうぞよろしくおねがいします。  さて、成道会は、仏教をひらかれたお釈迦さまが、

          〈法話原稿〉「S高校の成道会にて」(前編)

          「なにもおこらない日常にある配慮」

           ある日、駅のホームでのことでした。空き缶がころがっていました。「誰かポイ捨てしたのかな」。すこし不快な気もちが生まれました。その時、それをスッと拾ってゴミ箱に捨てる人がいました。とても自然に、当たり前のようにそれをしてくれました。うれしい気持ちになりました。  私はその人が空き缶を拾って捨ててくれたことを見て、知っています。しかし、後からこの駅に来る人は、その人の行いを知ることはないのでしょう。空き缶があれば、それを見て「不快」に思う人がいたかもしれません。けれども、その

          「なにもおこらない日常にある配慮」