我が家の食卓
今日、僕は生まれて初めて人を殺しました。
僕をフッた彼女です。
ドラマで見たとおり、ロープを用意して後ろから首を絞めました。
人間というのは、思うより簡単に死んでしまうものだと思いました。
それとも彼女が特別なのでしょうか?
そして僕は、屍になった彼女を裸にしてしばらく眺めていました。
そこへお母さんが入ってきました。
『ヒッ!!』と声にならない音を、喉でたてました。
「お母さん。いつも言ってるだろう?ノックくらいしてよ。」
僕のお母さんは、滑稽なほどガタガタと震えていました。
仕方が無いので、僕は事のあらましを言って聞かせました。
そして僕はいいました。
「お母さん。今日はシチューがいいな。」
お母さんは大きく深呼吸をして。
「そうね。」
と言いました。
やっぱりお母さんは、僕のお母さんだと思いました。
お母さんは、町内会の時一度だけ使った大きな寸胴鍋を引っ張り出して、沢山のシチューを作りました。
お父さんは美味しいと言って2杯お代わりをしました。
あんまり沢山作ってしまったので、僕たちは手分けして御近所におすそ分けをしました。
次の日、通学途中に彼女のお母さんに会いました。
「昨日のシチュー、とっても美味しかったわぁ。」
とにっこり笑った後、眉間に深くしわを寄せて、
「ところでうちの娘、昨日から帰らないのよぉ。何もなけりゃいいけどねぇ。まったく最近の子は・・・。」
と、頬に手をあてて、ブツブツと言っていました。
「きっと近くにいますよ。」
と、僕たちの関係を知らないおばさんにそう言って、その場を立ち去りました。
そして、僕は今日もあのシチューをたっぷり平らげて深く深く眠るのでした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?