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こじろう

我が家の車には、名前がついている。彼の名は、小志朗こじろうという。

長女が就職して家を出るとき、先代の大志朗だいしろうから交替して我が家にやってきて。長女が県またぎの少し遠方に住んでいたこともあり、毎週のように通って、1年でかなりの距離を乗ることになった。

その長女は転職して我が家に帰ってきており、足かけ2年、よく走った。

その間、総走行距離のODOメーターを家内と観察し、走った距離がゾロ目の瞬間をとらえて祝うという、ゾロ目祭りを、やっていた時期もある。

それも、なかなかその瞬間をおぼえていて、とらえられない、ゾロ目逃しも横行し、長女が前の会社を辞めて我が家に帰宅してきて、定期的に長い距離を走ることもなくなり、総走行距離の確認をすることもなくなった。

そして、7月の末のことである。

家内が、突然、ダッシュボードを見て、大声を上げた。

コジくん、見逃すところだったよ!

家内によると、そろそろ30,000kmに達するのだという。

私は、スマホのカメラを準備し、シャッターを切った。

危うく逃すところだった


家内が、言った。

小志朗、乗らなくなったね。だから、ゾロ目祭りも、しなくなったね。


心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、つぶやいた。

そのぶん、長女の心配事も、少し減ったけれどね。


この夏は、家内も、私も、いろいろあって、関西には帰らなかった。むろん、小志朗こじろうの長距離運転は、しなかった。

ゾロ目祭りの原則からすると、今度狙うのは、33,000kmである。


あと3,000km近くある。



心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、また、笑いながら、つぶやいた。

そんなこと言ってると、また、ゾロ目逃しをするよ。



「カーライフ」なんて、マガジンまで作っている。小志朗とのカーライフを、もう少しだけ真面目に、残していこうかと思う。

そんなことを話しながら、夜、家内の脚をマッサージした。


マッサージをすると、家内は、上機嫌になる。

家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。


だから。


これで、いいのだ。

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