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シティ


長女と、家内の、こだわりポイントは、何度となく登場した。今日は、少し前のことになるのだが、長男のこだわりポイントを、少し、書きたいと思う。

長男のこだわりポイントは、マンチェスターシティー(シティと省略することもある)と、水と、食事である。

わざわざ、水、というのは、不思議に思われるかも知れないが、事実、匂いや味に敏感で、水ききが、できるほどである。

ゴールデンウィークも、長男のために、私は、ミッションで汗をかいた。


その後、暫くしてから、普段はほとんど連絡を入れてくることの無い長男から、LINEが入った。

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マンチェスターシティーというのは、長男が贔屓にしている、サッカーチームだ。イギリスの、プレミアリーグに所属し、今年、絶好調で、プレミアリーグ通算7度目の優勝と、リーグカップを制し、あとは、クラブ初のファイナル進出で、ヨーロッパチャンピオンズリーグ(UCL)を制せば、史上初の制覇。しかも三冠という、千載一遇のチャンスのステージにいたのだ。

長男の興奮は、もう、一月以上前から続いていて。このご時世でなければ、仕事もなにもかも投げ捨ててでも現地で応援するのにと、海外に行けないことを、心底嘆いていた。


私も、その劇的な瞬間を見ようと、長男に、WOWOWのIDを聞くと、もう、私のiPadに、ゴールデンウィーク中に、セットしてあるという。

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試合は、日本時間の早朝、4時からライブで中継され、やがて、キックオフとなった。

途中、相手チームのゴールで均衡が破れ、形勢不利が続き、長男からは、やがて、気弱なコメントが入ってきた。

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私は、こう、返した。

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心の中の、リトルkojuroが、静かにつぶやいた。

長男よ、お前もか。


試合は、結局は、その1点が決勝点となり、残念ながら、マンチェスターシティーは、敗れた。


長男からは、もう、LINEでも、何も、返信も、連絡も、無かった。



私は、Twitterを、読んでみた。いろいろな情報が、出ていた。


マンチェスターシティーの選手たちは、呆然としていた。


大チャンスを逃して。

恐らく、こんな大チャンスは、普通に考えると、一生のうち、もう、無いだろう。だからこそ、千載一遇のチャンス、なのである。

泣きじゃくるのは、負傷退場したデ・ブライネ選手である。

まだ若者とは言え、大の大人が、人目をはばからず、泣き崩れている。


それは、そうだろう。

選手たちの喪失感は、どんな鋭敏な想像力や、AIをもってしても、他の誰にも、分かるものではない。



捲土重来という言葉がある。

たとえば、すべての希望が打ち砕かれたとしても、今は、一条の灯りも見えないとしても、それでもなおかつ、前を向き、立ち上がり、奮い立ち、なりふり構わずに、立ちはだかる壁に抗ってほしいと思うのである。

マンチェスターシティーの選手達には、その姿勢を、これから先、ずっと、貫いて欲しい。

なぜならば、それこそが、人に、夢を与え続ける、スポーツというものの本質だと、私は、思うからである。





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