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言い伝え

最初に断っておこう。この話は、笑い話である。オカルトでも、ホラーでもない。そして、この前の投稿記事「墓地」の、補足記事である。

だが、最初に謝っておこう。タイタンさん。タイタン杯に参加されたみなさん。ごめんなさい。


このまえのタイタン杯、本当にありがたいことに、入賞することができた。これは、たまたまであり、それこそ、感無量であった。


そこに投稿したのが、この記事である。

義母が、「墓地には、絶対に、ひとりで行かないこと」という、家内からのTwitterの転送情報に、素直に従った。
それから毎回、人形を抱いて、墓地の掃除に通ったという。
だがそのTwitterの真意は、年配の方が熱中症などで倒れて手遅れにならないようにという配慮で、決して、魂を抜かれないようにという、オカルト情報では、なかったのである。

この、カバー画像の写真の雰囲気と、「墓地」というタイトルに、夏の怪談のイメージも重なり、怖いイメージを抱いた方も、少なからず、いらっしゃった。

それはそれで、私にとっては新たな発見もあり、実に面白くもあったのであるが、実は、ここで、ちょっとした告白がある。せっかく、入賞させていただいたにも関わらず、その賞を、剥奪されかねない、告白である。


私は、家内から伝え聞いた話を、そのまんま、タイタン杯に投稿したつもりだった。

ところが、入賞の知らせを家内に報告したところ、一緒に喜んではくれたのだが、ちょっと、元の話の筋が違うと言い出したのである。


心の中の、リトルkojuroが、ちょっと困り顔で、つぶやいた。

入賞したって、言わなきゃ良かったかもね。


そして家内は、義母にも確認をするということで、最近、韓国ドラマにどっぷりハマっている義母にも確認の電話をし、ゲラゲラ笑いながら、その電話を切った。

家内になり代わり、この、「墓地」に関する、真実の話を、今回は、3行にとらわれず、いつもの独り言日記の口調で、再現してみよう。


義母は、丹波篠山市の奥の、田舎に住んでいる。自然豊かで、周囲の集落は、暖かい近所付き合いの中で、平和に暮らしている。

その集落で、昔からの言い伝えがあった。


墓地には、ひとりで行ってはならない。


義母が嫁いだときには、祖母もいて。もう、四半世紀も前の話だが、言い伝えは、もっともっと、昔からあったという。

この言い伝えは、この集落では、みんなが知っている事実で。ほんの近所に住んでいる、ある同世代の主婦の方は、魂が抜かれると思い、いつも、身代わりのクマのぬいぐるみを持参していたという。

そして義母は、ぬいぐるみは持ち出さないものの、怖いので、絶対に1人では墓参りや墓の掃除には、行かなかったそうである。

事実、子供たちが小さい頃から、義母はかなりきつく教え込んでいた。子供たちにも。私たちにも。

お墓には、絶対に、1人では、行っては、ならない、と。


祖母も、そして、義父も数年前に亡くなり、このご時世になり、流石に、お盆も、法事も、近所で集まることがなくなった。檀家のお坊さんも、各家に、別々にお経をあげにまわることが、この2年、続いていたそうである。

私たちも、この2年間、義母の田舎には、帰省できていない。


この夏、お坊さんが、お経をあげにきた時、恐る恐る、義母が、切り出したという。


あのー。

昔から、墓地には、絶対に一人で行くなという言い伝えがありますが。この集落で。

それは、どういう理由からか、教えていただけますでしょうか。

それは、やっぱり、魂を抜かれるというか....。


すると、お坊さんが、義母に、静かに、冷静に、ゆっくりと、こう、こたえたという。


それは、ひとりで行くと、熱中症で倒れたり、熊や猪、鹿も出ますし、スズメバチや、蛇も、ムカデも、います。

1人で行って、手遅れなどということになると、危険なので、この集落では、昔から、1人で行くと危険だと、教えているのです。


この話をお坊さんから直接聞いて、義母は、はばからず、ケラケラと笑ったという。


ほどなく、家内が、あるお坊さんが、Twitterで、そういうことを発信しているのを見て、ここにもこういうことが出ているよと、義母に送ってあげて、また、その時に、一緒に笑ったのだ、というのだ。


それを、このあいだ、長女や長男と一緒に話している時に話題にして、みんなで笑っていたのだそうだ。

それを、側から、ちこょっと聞きかじりをしていた私が、面白おかしく、でも、中途半端に仕上げて、タイタン杯に、投稿してしまったのだ、というのだ。


心の中の、リトルkojuroが、嘆きながら、つぶやいた。

全然、話が違うじゃん。

これは、入賞、返上じゃね?

オリンピックでも、ドーピングがバレたら、メダル剥奪だからね。



い、いや、これは、断じて、ドーピングではない。

フライングだ。


心の中の、リトルkojuroが、がっくり肩を落として、つぶやいた。

フライングならば、反則、即棄権だよ.....。


いやいや、フライングじゃなくて、創作だ。

事実から派生した。


心の中の、リトルkojuroが、頭を抱えて、つぶやいた。

苦しい言い訳だな。いずれにしても。

まあ、事実を少しもじった創作だ、ということにしておこうか。

順序が逆だけれど。



家内が、言った。

私がこう書いた、という話を聞き終わった後に。

コジくん、人の話は、きちんと聞くこと。

それができなかったんだから、マッサージね。週末。

愛が、そこに、あるんなら、ね。


私の週末は、必ずミッションがある。

その名は、マッサージ。


でも、マッサージをすると、家内は上機嫌である。

家内が上機嫌ならば、我が家は、明るく平和になる。


だから、


これで、いいのだ。






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