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全集中

20日の日曜日、ちょっとした過保護な所用で、長女の自宅に向かった。長女の自宅は、我が家からは、かなり遠い。その遠い道のりを、小志朗で(我が家の車には、小志朗=こじろう、という名前がついている)、向かうのである。

私と家内には、絶対に忘れてはならないものがあった。それは、ゾロ目祭りである。

今度は、9999㎞。そして、切りの良い、10000㎞の、2つを狙っている。

家を出発するとき、あと90㎞足らずだった。2人で、注意をしながら、行こうと、言い合った。距離からすると、次女宅からの帰路、出てからほどなく、その時を迎える予定だ。

次女宅からの、帰宅のとき、ちょっと予定が変わった。

家内が、お礼の品を寄り道して購入するというのだ。私は、快諾した。

さて、そのお礼の品を購入して、さあ、帰宅する。

あと、16㎞。すぐだ。

走り出してからほどなく、家内が、眠いと言い出した。私は、スマホで調べ物をしていたが、交代しようと言って、どこかコンビニに入るように促した。

ところが、なかなか見つからなかった。

すると、今度は、家内が、DAZNの試合を聞かせてほしい、眠気は、一応、おさまったからと言い出した。

私は、パッドを準備し、家内からチラチラ見えるように工夫して、見せていた。

横目で見ていたからだろう。家内が、また、言い出した。

睫毛が入った。目が痛い。見えない。

私は、かなり焦った。

ついさっき、コンビニは、過ぎた。次の、コンビニは、どこだ?スマホで調べながら、周りの車の様子を確かめながら、左に車線変更をさせ、心配しながら、交代の時を待った。

しばらくすると、コンビニが見えてきた。

交代しよう。

私が家内にそう言うと、家内は、

睫毛、涙で流れたみたい。もう、大丈夫。

私は、心配しながら、

そう。大丈夫。ならば、良いんだけれど。

そう言っているうちに、家内が応援しているチームの試合が、終わった。

負けた。

しばらく車内で沈黙があったあと、家内が、叫んだ。


あーーー!!!

最初、何が起こったのか、理解ができなかった。

忘れたーーー!!!

え?え?

私が言うと、家内が、言った。

思い出せないよね。忘れてたよね。あなた。


……。


家内が、静かに言った。

今、10,036㎞です。過ぎました。



私は、その時になって、初めて我に返った。そして、家内に、静かに問うた。

これって、誰の責任だろうか?

すると、家内がこたえた。

助手席に乗っている人。つまり、あなた。

……。

そして、家内が付け加えた。

だって、私は、全集中の呼吸で、運転しているんだもん!


心の中のリトルkojuroが、言った。

いや。こっちは、あなたの要求に、全集中の呼吸で、対応していたのよ。


時、既に遅し。

心の中のリトルkojuroは、欧米人のように、両腕を広げ、掌を上に向けて、首を左右に降り、ふぅとため息をつきながら、お手上げのポーズをした。

私は、とても残念だったが、反省をした。決して、心の中のリトルkojuroも、タセキング〜!とは、言わなかった。

次回、狙うは、11,111㎞の、ゾロ目だ。

ちゃんと、計算をして、狙おう。家内と2人で、きちんと狙おう。そして、直近には、タイマーをセットしよう。忘れないように。

帰りにちょっとした買い物をして、今日も無事に、家に着いた。

家内と2人で、小志朗に、ありがとうと言ってなぜて、労った。

何事も無く、仲良く、2人で帰宅する。本当に望んでいるのは、それだけなのだから。

これで、いいのだ。

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