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結局は信頼の積み重ねが大切

最近、過去のことを振り返る機会が多くて、特にイギリスに住んでいた時のことを改めて考えている。

私が若い頃に留学したセントラル・セント・マーチンズという芸大は、世界の芸大ランキングで5番以内の常連だ。特にファッションが人気でアレクサンダー・マックイーン、ステラ・マッカートニー、ジョン・ガリアーノなど排出している。彼らに憧れる、一流のデザイナーになりたい若者が集まってくるのだ。

私が在籍していたテキスタイルコースはファッションに比べ温厚な生徒が多かったが、「本当はファッションコースに入りたかったけれど倍率が高すぎるからテキスタイルに来ました」というアグレッシブな生徒もいて、なかなかのカオスだった。

芸大は社会不適合者の集まりやすく、日本でも、海外でも同じらしい。

ただセントラル・セント・マーチンズの特色は、世界を牽引するデザイナーになるんだ!という向上心の塊のような人が集まるので、ナイーブ社会不適合者よりアグレッシブなタイプの社会不適合者が多い。

大学の初日のオリエンテーションで、自分の作品やスケッチブックなどから絶対目を離さないように、管理や保管は徹底することを注意される。

自分の作品を作るために魂を削ることも厭わないが、他人を蹴落とすことも厭わないという生徒に、作品を盗まれたり、捨てられたりするからだ。

講師は勘違いしている若者たちの鼻を折るのが仕事と言わんばかりに、作品を作る過程でのリサーチが足りないとか、デザインの考察が足りないとか、出来ていないことを挙げ連ね、「課題提出までに時間はないのに、こんなゴミみたいな作品を作ってどうするの?」と連呼する。

始めのうちはメソメソしていた学生たちも、
「私の作品の良さを理解できないアイツの感性がゴミ!😡」
「あの人はいつも同じこと言うよね〜😅」など、受け取り方はそれぞれだけれど、だんだん慣れて鋼のメンタルに磨きをかけていく。


そんな環境に飛び込んでくる学生たちは、それなりに自信があり、努力も惜しまない。けれども悲しいことに優劣はついてしまう。

素晴らしい作品たちを作り出し、先生にも目をかけられていて成績もトップクラスという学生が数名いた。いま振り返っても現役のトップデザイナーのコレクションと並べても遜色ないような作品を作っていた。

私も周りの人々も、彼らは近い未来に世界から注目されるようなブランドを作り、ハイファッションブランドの仲間入りをするんだろうなと思っていた。

けれども、彼らは卒業後に世界に注目されるわけでも世に出るわけでもなかった。

彼らはどこか有名どころのインハウスデザイナーとして働いているのかもしれない。ファッションに飽きて、別の分野で仕事をしているのかもしれない。今やどうなっているかもわからないけれども、あのままでは自分の名前を冠したブランドを世に出すことは難しいと思う。

ファッションやテキスタイルに限らないけれど、デザインを製品化するには沢山の人の協力が必要だ。

例えば協力者がパトロンとして資金を投入してくれる人かもしれない。アレクサンダー・マックイーンは卒業コレクションが有名スタイリストとして活躍していたイザベル・ブロウの目に止まり、5000ポンドで買い取ってもらったことがキャリアのスタートだ。しかし、これはとても特殊でレジェンド級の出来事。

大抵の人は、沢山の人々と信頼を積み重ねていかなければならない。

特に生産者は無名デザイナーの小ロットの製品化は、良くてトントン、赤字覚悟のお仕事。メリットはなにもない。

有名ブランドのデザイナーは、他のブランドで下積みをし、生産者さんと信頼を積み上げてきてから独立して、自身のブランドを作っているのがほとんどだ。

この生産者さんとの信頼の積み重ねは、カッコいいデザインを作るかどうかは関係なく、その人自身の行いの積み重ねだ。

若い頃は、デザインの才能があれば、良い作品が作れればデザイナーになれると思っていた。

この年になってわかったのは、デザインの才能を磨くことと同じくらいかソレ以上に人間性を磨くことが大切ということ。

沢山の人に信頼してもらえるように鍛錬しなければダメだなと、若い頃を振り返って思ったのでした。



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