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高橋克彦作品紹介(現代ミステリ)

 電車移動中や就寝前に、何かしら本を読んでいたい。私はそんな性分の人間です。

 最近は未読の新刊よりも、再読、再々読を重ね、すっかり読み慣れた本を読むことが増えてきました。歳を重ねて保守的になってきたのかもしれません。

 出かける前に、とりあえず今日の移動中に読む本として、私が手に取りがちな高橋克彦氏の作品はこちらです。

「パンドラ・ケース よみがえる殺人」
「南朝迷路」
「即身仏の殺人」

 いずれも現代ミステリ、といっても舞台は昭和60年頃。スマホどころか携帯電話もない、今となってはある意味ノスタルジックな環境です。
 さらに「パンドラ・ケース よみがえる殺人」の物語は、17年前に大学のサークル仲間で埋めたタイムカプセルを掘り出してみると、何やら不穏な気配……という始まりです。
 昭和40年代(1960〜70代)の世相やサブカル情報がふんだんに詰め込まれた上に、目の前の殺人事件の謎が二転三転し、解決というカタルシスへ向かいます。
 これがもう、何度読んでも見事な展開なのです。

「パンドラ・ケース よみがえる殺人」で探偵役となった塔馬双太郎ことトーマは、サークル仲間だったチョーサク、リサらと共に「南朝迷路」「即身仏の殺人」でも事件に巻き込まれます。

 この2作はタイトルにも示されているように、日本史の知識が盛り込まれています。南北朝時代の幻のお宝や、即身仏が生まれた(作られた)理由についての解説が、作中の事件の謎とあいまって、頁を繰る手が止まりません。

 歴史の解説だけでなく、雑誌編集者のリサの暮らしが垣間見える描写も素敵です。特に「即身仏の殺人」で絶妙にリアルな女性視点をさらりと書く高橋克彦氏の筆力は脱帽ものです。
 他の作品でも、女性の描写が非常に巧みというか、「男性作家が描く女性像」への違和感を、高橋克彦作品ではほぼ感じないのです(あくまでナカケの個人的な意見です)。理想化も簡素化もいきすぎることなく、ちょうどいい現実感を持つ「女の人」という印象です。
 この印象の謎については、また稿を改めて考えてみたいところです。

 とにかく。
 やっぱり高橋克彦作品は面白いです。

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