見出し画像

国会のお仕事

はじめに

国会と内閣は組織上違いますが、その違いが何かと言われると難しいかもしれません。国会の与党で内閣が構成されているので、混同するのも無理ありません。ニュースでたまに内閣の方針に自民党内から不満があったり、委員会での質問を行っていたりするのを見聞きするはずです。これって、身内のごたごたですか?と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。その理由を書いていきたいと思います。


国会の役割と与党のお仕事

国会は立法機関ですので、法律を制定する機関です。法律を作る権限は国会にしか認められていません。地方自治体の議会は条例を制定するという意味で、立法としての役割を充てられていますが、法律や政令・省令の範囲内でしか条例を制定することができません。そのため、国会が唯一の立法機関となります。

では、法律がどのようにして法律が作られるのでしょうか?国会の本会議で議論されて、本会議で制定されるわけではありません。現在の日本では国会だけで法律が作られることはほとんどありません。ほとんどが内閣から提出された議案を基に、法律が制定されています。これだけだと内閣が法律を作っているように思われますが、内閣は法案を提出するだけです。なぜ、内閣に法案提出権が認められているかは次の章に回します。

内閣から提出された法案を衆院と参院の委員会で審議します。この委員会が法案成立の過程で非常に重要になります。委員会では提出された法案をそのまま法律としていいのか、それとも修正すべきなのかを議論します。委員会での質疑応答の時間が設けられているのは、提出法案の不明点や内閣の意図等を解消・確認するためです。法案提出者は与党ではなく、内閣なので、質疑については総理大臣かその法案の主務大臣が答弁します。閣僚や内閣のメンバーではない与党議員からの質疑があるのもこのためです。内閣の決定に関与していない与党議員からすると不明点や疑問点があっても不思議な話ではありません。議員中心で練られた法案(議員立法)については、策定メンバーが質問を受ける側となります。質疑応答は法案提出者とそれ以外の国会議員とのやり取りです。なので、委員会でどうでもいいようなことを質問したり、揚げ足を取るようなことをしたりするのは単なる時間と税金の無駄です。

委員会で野党の合意が得られないまま、本会議で可決させる強行採決を実行することも可能ですが、強行採決をすると世論への影響と他の議題で野党の協力を得られなくなってしまうので、基本的に与野党の合意を得るような形で進めます。はなから協議をする気のない野党第一党のような政党への根回しも必要ですが、平行線をたどるだけになってしまいます。

委員会で法案の内容が確定し、本会議での採決を待つだけになります。憲法や法律で特別な規定がない限り、過半数で決します。衆院と参院で同じ党が与党であれば、与党が過半数を占めているので、造反行為や党議拘束をかけていない場合を除いて、法案は可決されます。衆参で与党が異なるねじれ国会の場合は、再度、衆院で出席議員の2/3以上の賛成を得るか廃案にするかとなります。

本会議場で寝ている議員を辞めさせろと言う人がいますが、本会議は採決するだけで法案の内容についても委員会ですでに決定しています。むしろ、委員会で寝ている議員の方が問題だと言えます。本会議での採決の行方はほとんど決まっています。不信任決議案のように特殊なものでない限り、本会議で否決されることはほとんどありません。そのために委員会に時間を費やして、議論をしているのです。



国会と内閣の関係

内閣に法案提出権があるのかと言うと、内閣は実際に法律の基に仕事をしています。裏を返すと法律の範囲内でしか、権限を行使することができません。政令や省令の制定権が認められていても、法律の範囲を飛び越えることはできません。そのため、現場で働いている内閣(行政)からの意見が重要になります。三権で一番業務の幅が広いのは行政です。そのため、行政運営がしやすいように法整備を求めるのは当然のことです。

各省庁からの要望を、主務大臣を通じて法案として国会へ提出します。その法案を提出するかどうかは内閣の裁量ですが、各省庁内で大臣の決裁をもらう前に省庁内で国会同様、議論をしています。その結果、大臣への提出が可能であるものを提出し、それを受け取った大臣は閣議にかけます。閣議決定を経て、総理大臣が内閣を代表して法案を国会へ提出します。閣議は全会一致が原則で、非公開ですが、議事録は閲覧できます。内閣の意思決定の最高機関は閣議ですが、ほとんどの場合は閣議の前にすでに結論は決まっています。会社に例えると、閣議決定が取締役会で、それ以前の議論が部課長会や部内会議になります。

内閣や国会での出来事を出来レースと言われることもありますが、それまでに根回しをしているだけです。限られた時間を有効に使うためにも、何の議論もせずにいきなり閣議決定や本会議での採決にかけるようなことをしていたら、課題だけが残り、処理できなくなってしまいます。

何でもかんでも行政のいいようにできるわけではなく、法律も憲法の範囲内でしか定めることはできません。大幅に権利が侵害されるような法律は定められることはありません。よく、独裁国家への道を歩むことになると騒ぐ人がいますが、制度上、非常に難しい話です。しかし、それをやってのけたのはナチスです。なので、事あるごとにナチスを引き合いに出しますが、憲法を停止したり、廃止したりする権限は国会や行政や司法にはありません。国民投票をしない限り、できませんが、そのような国会で国民投票にかける決議が出た時点で、政治問題への介入に消極的な裁判所ですら待ったをかける可能性があるでしょう。そのための司法でもあります。


最後に

国会と内閣のメンバーを見ていると与党議員で構成されているので、内閣と国会の役割があいまいになってしまうことがあります。法律を作るのが国会で、法律を基に仕事をするのが内閣です。国会と内閣は別組織なので、総理大臣以外の大臣を国会議員でない人から選ぶことも可能です。しかし、憲法上、過半数は国会議員なければならないとされていますので、総理大臣以外全員、国会議員でない人とすることはできません。憲法でも国会に関する規定は内閣や司法に比べると、評決方法など細かく規定されています。国会の評決方法を法律だけに委ねていると国会に有利な法律を作ってしまうリスクがあるからです。そういったことを防止するために、憲法で国会について他の機関よりも細かく規定しています。政治はものごと決める過程やその作業のことです。その結果が国会の場合は法律や予算になり、内閣の場合は事業の決定や措置の決定になります。政治のニュースを見るときに内閣と国会の役割を考えながら見ると、よくわからなった行動の理由が分かるようになります。

この記事が参加している募集

noteの書き方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?