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労基法を考える

はじめに

みなさんは労働基準法を聞いたことがあると思います。その法律がどういった法律であるかもご存知だとも思います。みなさんは、労働基準法は守られていると思いますか?それとも、蔑ろにされていると思いますか?この法律で労働者が守られていることは確かですが、この法律がうまく機能していないのが実情です。今回は労働基準法がなぜ、うまく機能していないかを考えていきたいと思います。

理念倒れにさせるな労基法

労基法を完璧に遵守している会社はあるのでしょうか?答えは残念ながら、NOです。完璧に遵守している会社を探すほうが難しいでしょう。もし、これをご覧になられた総務や経営者の方は「うちはしっかりと守っている」と思われているかもしれませんが、残念ながら、おそらくそれは幻想です。その理由は簡単で、労基法の内容や解釈が現状と全く異なるからです。労基法を完璧に遵守している会社はそれだけで誇れるほどのものです。
労働基準法が完璧に遵守されていれば、おそらく日本の労働問題はある程度解決すると考えています。激務薄給や何十連勤のようなこともすべてなくなりますし、いわゆるブラック企業は存在できなくなってしまいます。日本人がもっと心身ともに健康的になると考えられます。今、賃上げが話題を呼んでいますが、賃上げをしなくとも労基法を完璧に遵守していれば、今より給与が多くなる人は多くなるでしょう。労基法が守られていれば、もう少し日本人の所得は50-100万ほど高くなっていたと考えられます。つまり、違法労働を強いていながら、この有様は悲惨としか言いようがありません。ベースの賃金を上げる動きは非常に素晴らしいことで継続的に行うべきだと思います。
さきほど、給与の話をしましたので、残業代について、触れていきたいと思います。管理監督者には残業代がないという規定があります。しかし、これをまともに運用できている会社はほとんどないのが現状です。この規定が意図している管理職は管理監督者と言い、経営に携わっている人のことを指し、いわゆる本部長や執行役員がこれに該当すると考えられます。管理監督者になるとタイムカードでの出退勤の管理はありませんし、休日の規定からも除外されます。世間一般で言う課長や次長のような管理職は管理監督者には該当しません。おそらく、大半の会社では名ばかり管理職として働かされているはずです。ちなみにですが、残業代未払いの場合、時効は3年で遅延損害金が発生するので、本来受け取れる額より多く受け取ることができます。
これの一番の問題点は厚労省が上記の解釈をしていると通知しているにも関わらず、これを全くと言っていいほど、これが守られていないこととそれを取り締まれていないことです。厚労省もこういった現状を黙認していることになります。名ばかり管理職問題は社会問題と捉えても過言ではありません。人件費削減の手段として悪用されているのも現実です。厚労省の解釈を変更するか、違反を徹底的に取り締まるべきと考えます。この現状を看過すべきではありません。


労働法教育は行政とともに

労働法規がおざなりにされている理由は労働者が労働法規について知識がないと以前触れましたが、それだけではありません。経営者が労働法規について無知であるケースも多く、顧問弁護士がいるにしろ、専属ではないのでずっとその企業に付き切りではないので、その企業の法教育ができるとも限りません。会社の規模が小さくなれば、弁護士への顧問料も安くなり、弁護士も割に合う仕事でないと判断されるかもしれません。ここからは労働法規や労働法という言葉も出てきます。労基法は労働基準法のことですが、労働法規、労働法は労働に関するすべての法規範を指すからです。
顧問弁護士が何人もいたり、社内弁護士がいたりするのであれば、そういった法教育をしやすいと思いますが、大半の会社はそうではありません。労働法教育を会社任せにするのは限界があります。やはり、行政が労働法教育の指導を率先して行うべきだと思います。現在も労基署であったり、厚労省であったりが労働法に関するわかりやすい資料を公開していますが、広く知れ渡っているかと言えば、そうではありません。行政が何もしていないわけではないのですが、現状の方法だと限界があります。
行政の人員が少ないことは何度も触れていますし、日本の公務員の人口当たりの数は世界で見ても非常に少なく、小さな国家の代表でもあるアメリカと比較しても非常に少ないです。つまり、今の日本の行政はどれだけ業務の効率化を図ろうとも限界に来ています。無意味な公務員批判がこういった現状を招き、公務員志望者数を減らしています。
今回の労働行政もそうですが、取り締まりが行えていないのは明らかなキャパオーバーを起こしているからで行政の怠慢でもありません。働き方改革が声高に叫ばれる昨今において、違法状態をみすみすと見逃している現状は矛盾していると言わざるを得ません。行政の人員を増やして取り締まりを強化すべきだと思います。そうすることで違法行為の抑止力になりますし、労働者も安心して労働でき、安心した生活を送ることができるはずです。取り締まりを強化する一方で、労働法規に関する講習会を年に数回や法改正のタイミングで行うべきで、企業は行政に対して、具体的な対応方法などを聞き、社内環境改善に努めるべきだと思います。講習会に来ていない会社を中心に査察へ行くことで、講習会参加率を高めることもできます。


最後に

社労士の勉強をしていて、最初に労基法が出てくるのですが、労基法を完璧に遵守していれば、ブラック企業は間違いなく潰れますし、今の日本が抱える問題をある程度までなら小さくできると思いました。しかし、労基法が単なる理念になりつつあり、断片的に遵守されているのが現状で厚労省の解釈を無視した運用が常識になっているのが現状です。こういった現状を考えた時に法律を破っても取り締まられない状況がこうさせているのではないかと思いました。労働法を一つとっても行政の人員不足というのは深刻な問題であることがわかります。安易な公務員批判が回りまわって自分たちの首を絞めているだけで、現状が悪いのはすべて政府や役人のせいにしていても何も変わりません。法律を破る企業をのさばらしている現状は考えものですが、その遠因が我々の公務員批判であることを覚えておく必要があります。民主主義である以上、国民が主役ですが、その国民が間違った認識でいると自分の首を絞めてしまうことになります。我々が正しい知識を持つことで現状をよくすることは可能です。知識は非常に強い武器になり、さらに数はそれ以上に武器になります。我々で変えていきましょう。

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