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あぶないパパ 伊達ひろしの「今夜は泣かないで。」

 元町中華街駅からニューグランドホテルへ、伊達ひろしは歩いていた。  

今日はヒューゴボスのスーツを久しぶりに着用していた。

ひろしはすでに古希70歳だが、身長が180センチの長身でスラリとした身体をしており、全く70歳には見えない。スーツの内ポケットにはアメックスゴールドの入った薄いカードケースとハズキルーペを忍ばせている。

 ホテルのレストランからは港の美しい夜景が見える。彼女のレン(蓮)とはホテルのラウンジで待ち合わせをした。

 「パパ、ここよ。」ラウンジのソファに座って先に待っていたレンは手を振って笑顔を見せた。

レンはひろしの事をパパと呼んでいるが、傍目にはどう見ても孫とおじいちゃんとしか思えない。おそらくレンは30歳そこそこだろう。

 こういう女性に「あなたはいくつになりますか?」と聞くと、「私いくつに見えるかしら。」と、定番の答えが返ってくるだろう。

 女性が歳を聞かれて正直に答える女性と交際してはならない、とオスカーワイルドは言った。

 なぜならば、正直に年齢を答える女性は秘めるべき全てを人に話してしまうからだ。という…

 ひろしはチェックインを済ませて部屋の鍵を貰った。クラシックホテルに相応しい昔ながらの鍵に真鍮製のプレートのキーホルダーが付いていた。真鍮製キーホルダーは綺麗に磨き込まれている。

 2人はレストランに入り窓際の席に案内された。

ひろしはレンの誕生日のために1番高い値段のコースを予約していた。

 ワインはメニューからレンの誕生日に相応しいものを前もって注文していた。 

 「いかがでしょうか。」ソムリエがボトルを持ってひろしに伺った。

「ん?1997年レンの誕生日年だな。」

ハズキルーペでひろしは確認した。日本製だから良くできたルーペで故障しにくい。
 
にくい演出をしてくれる。レストランのシェフは知り合いの古い友人で、わざわざ気を利かせたのかもしれない。

 70歳のおれに27歳の娘か…笑えるな。ひろしはフッと笑った。


 朝を迎えたレンはホテルの洗面室でネイルを付けた。

「昨日のパパは激しかったわ…」

レンは独りごちた。

ひろしはまだベッドの中で寝ているようだった。

 〜完




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