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真夏に採れたての白菜を食べる ⑧完結

 「太郎ちゃん、お風呂沸かしたから入って。」  「ありがとう。」  陽が落ち始めてようやく涼しくなってきた時間だ。  桜子の家は五右衛門風呂だった。家の離れに風呂場があり、脱衣所の奥に洗い場が見える。洗い場と釜風呂の上面はほぼ同じ高さであった。 洗い場には大きな釜風呂と小さな釜風呂がふたつ並んでいた。ひとつは身体を沈める風呂だ。踏み板が湯面に浮いている。もうひとつの小さな風呂は水風呂で、風呂が熱い場合にはこの水で温度を下げる様に差し湯をするための物だ。  風呂から上

    • 真夏に採れたての白菜を食べる⑦

       「皆さんおはようございます。今日はこのT県N地区でメガソーラー推進のローラー作戦を行います。顧客を徹底的に潰してください。」  株式会社ヒーローズの社長、椎田広志が総勢50人の歩合給契約社員に挨拶した。  顧客の徹底的潰しとは?地区全ての住居を訪問して全ての顧客にランク付けをする作業の事である。 AからFまで顧客をランク付けし、Aは契約に持ち込める顧客。Fは契約は出来ず、訪問しても全く時間の無駄になる顧客である。  契約社員の目的は、Aランク顧客を発掘する事と、その

      • 真夏に採れたての白菜を食べる⑥

         「必ず儲かります。」 「将来の生活の安心につながりますよ。」 「絶対に損はしません。」 「考えておくなんて言わないで、“今” 決めてください。」 「あなただけではなく、お子様やお孫さんのためですよ」  名刺にはハードバンクソーラーテック代理店 株式会社ヒーローズ 代表取締役 椎田広志と書いてあった。  彼はメガソーラーを推進するハードバンクの代理店をしていた。 「社長、本日もご契約おめでとうございます。しかしながらひとつご質問なのですが、本当に将来にわたってソ

        • 真夏に採れたての白菜を食べる⑤

           昼間の日向は息もできないと思うほど暑い。 茅葺き屋根の上に登った桜子の父親が、刺し子と呼ぶおよそ1.8メートルの竹の棒に荒縄を引っかけて裁縫をする様に茅の束を屋根と結束する。  太郎は小屋裏に潜り、屋根梁に荒縄がしっかりと絡むのを確認しながら固定していく。  時折り入道雲が太陽を隠して、風が吹いていく。裏庭の欅の葉っぱが風で揺れる。うるさいほど鳴いている蝉が一瞬静寂になり、また鳴き始める。  西から黒い雲が広がり始め次第に雷の音が聞こえてくる。少しだけ涼しくなってきた様

        真夏に採れたての白菜を食べる ⑧完結

          最近の株式投資ブームでのぼくなりの違和感が判明しました。ぼくは個人事業主です。個人事業主の目標としては、法人成りなので、株は買うものではなくて株式会社を作って、自分が株を売る立場になりたいからなんだなと気付いたからです。株は買うものではなく、ぼくが売るものというスタンスでいきます

          最近の株式投資ブームでのぼくなりの違和感が判明しました。ぼくは個人事業主です。個人事業主の目標としては、法人成りなので、株は買うものではなくて株式会社を作って、自分が株を売る立場になりたいからなんだなと気付いたからです。株は買うものではなく、ぼくが売るものというスタンスでいきます

          つい最近、株価乱高下がありましたが、原因は新NISAに新規参入した方々の動揺買いと売り戻しだったという事で、そんなに参入者がマーケットに影響を与えるんだと驚きました。よく靴磨きの少年の話を聞きますが、今は小学校で株の授業があるそうで、この株は買いだとか小学生に教わりました。

          つい最近、株価乱高下がありましたが、原因は新NISAに新規参入した方々の動揺買いと売り戻しだったという事で、そんなに参入者がマーケットに影響を与えるんだと驚きました。よく靴磨きの少年の話を聞きますが、今は小学校で株の授業があるそうで、この株は買いだとか小学生に教わりました。

          暑いから怖い話というか不思議話を。自宅の南に事務所を建てようと思って、易の女性の先輩に相談した所、南側の建物は、初代は繁盛しても2代目が家を滅ぼすと言われて、そういえば思い当たる節があって、お客さんで一代で大企業にしたけど、二代目が癌三代目が自殺という事例があった偶然かもだけど。

          暑いから怖い話というか不思議話を。自宅の南に事務所を建てようと思って、易の女性の先輩に相談した所、南側の建物は、初代は繁盛しても2代目が家を滅ぼすと言われて、そういえば思い当たる節があって、お客さんで一代で大企業にしたけど、二代目が癌三代目が自殺という事例があった偶然かもだけど。

          真夏に採れたての白菜を食べる④

           太郎はひまわりと、カワサキエストレアに乗って買い物を済ませてから、近くの滝に寄った。この滝は有名な蛇伝説があった。 滝は森の中の日陰にあり、涼しい。 真夏の入道雲が木陰から見える。蝉の声がうるさく聞こえる。  「ひまわり、知ってる?」太郎は唐突にひまわりに話しかけた。 「なに?」 「入道雲が見えるだろ。」 「見える。」 「あの入道雲のモコモコしてるひとつひとつが、入道っていう妖怪なんだよ。」  「へえ〜」 ひまわりは、なにそれ?って表情で太郎を眺めた。

          真夏に採れたての白菜を食べる④

          真夏に採れたての白菜を食べる③

           人生で成功するには、明確な目標を持てとか、計画を立てろと成功指南本では言う。  しかし、人はそれほど成功を常に考えて生きている訳ではない。 生活できるお金と幸せがあればそれで良しとする人もいる。  前者はまさに太郎の父親、後者は太郎である。 太郎の父親は常日頃から太郎の不甲斐なさが気に入らなかった。一方の太郎は気持ちの優しい男だったので父親の成功のためなら他人を蹴落としてでものしあがる生き方が嫌だった。  桜子の父親はどんな人なのだろう。太郎は興味を持った。  桜子

          真夏に採れたての白菜を食べる③

          真夏に採りたての白菜を食べる②

           桜子の実家は大きな長屋門のある茅葺き屋根の平屋だった。 なぜ家の前にこんな門があるのだろう。太郎は不思議だなという表情をした。 「昔は門の両側が部屋になってて、人が住んでたの。たぶん防犯用とか稲作をする小作人の為とかの意味があったのかも。」桜子は言った。 「なるほど、長屋門の長屋は、そっちの長屋のことか。」 今でいう借家の事だろうと太郎は納得した。 「ひまわりー!挨拶しなさい!太郎ちゃんが来たよ!」 桜子には妹がいた。桜子は家の玄関に入り妹を呼んだ。 玄関は、

          真夏に採りたての白菜を食べる②

          今回の株価暴落はブラックマンデー超えらしいですね。ぼくは株を持ってないですが、以前のリーマンショック株価下落時では、実質経済であるぼくのフリーランスの案件が全く無くなって、しかもしばらく案件が無かった状況が続いて自己破産寸前までいった思い出があるので、今、少々身構えてます。

          今回の株価暴落はブラックマンデー超えらしいですね。ぼくは株を持ってないですが、以前のリーマンショック株価下落時では、実質経済であるぼくのフリーランスの案件が全く無くなって、しかもしばらく案件が無かった状況が続いて自己破産寸前までいった思い出があるので、今、少々身構えてます。

          短編小説 真夏に採りたての白菜を食べる①

           「冬ではなくて真夏に白菜が採れるなんて珍しいね。ぜひとも食べてみたいね。」  「白菜だけじゃないよ。今の時期は鮎も美味しいし、猪の肉も食べられるよ。」 「猪?猪はちょっと遠慮しておくかな…。」 太郎の20歳の夏はとても暑く、歴代の夏の最高気温を更新していた。 太郎はまだ20歳だから肉体も若く、笑顔も輝いていた。 彼は自分がどんな大人になっていくのか想像もつかない。建築士になりたいと漠然と思ってはいた。 「桜子さんの実家をリフォームするのにぼくが手伝いに行って本当に

          短編小説 真夏に採りたての白菜を食べる①

          フリーランスの喧嘩マネジメント

           なんだか物騒なタイトルにしてしまいました。 なぜ喧嘩をマネジメントしてみようかと考えるに至ったかというと、最近喧嘩を売る(ことでマウントを取りにかかる)フリーランスと出くわせてしまったからです。  会社の社員であれば、上司、同僚、部下といった、縦に序列がしっかり決まっているので、感情的な場面でも、たいしたトラブルに至らない場合があるのですが、フリーランスでは上下関係が曖昧なために、案件を争うような場面において、お互いマウントを取りにいって喧嘩になってしまう事があります。

          フリーランスの喧嘩マネジメント

          短編小説 彼はどうしてこうなった?

           椎田ヒロシは北関東の某所に向かっていた。移動手段は社用車のプリウスである。助手席には不倫相手の寿美礼を乗せている。寿美礼はうっすらと花の香りがしていた。  数日前、地蔵太郎と椎名ヒロシはカクテルバー[フランスの百合の花]で季節のカクテルを飲みながら、行方不明のコウスケの話をしていた。  地蔵太郎はスーパーゼネコンを退職後、太郎設計事務所を起業していた。  椎名ヒロシは株式会社ヒーローズという怪しげなコンサルタント会社を経営している。一見、儲かってる様に見える。  コ

          短編小説 彼はどうしてこうなった?

          真山仁さん著作の「疑う力」はとてもおもしろい本でした。 テーマごとにショートストーリーが始まり、ストーリーの場所がカクテルバーなんです。   とても興味深い点は、今日から始まる日中韓首脳会議のぼくの思うところが180度変わって見えてきたという事ですね。

          真山仁さん著作の「疑う力」はとてもおもしろい本でした。 テーマごとにショートストーリーが始まり、ストーリーの場所がカクテルバーなんです。   とても興味深い点は、今日から始まる日中韓首脳会議のぼくの思うところが180度変わって見えてきたという事ですね。

          あぶないパパ 伊達ひろしの「今夜は泣かないで。」

           元町中華街駅からニューグランドホテルへ、伊達ひろしは歩いていた。   今日はヒューゴボスのスーツを久しぶりに着用していた。 ひろしはすでに古希70歳だが、身長が180センチの長身でスラリとした身体をしており、全く70歳には見えない。スーツの内ポケットにはアメックスゴールドの入った薄いカードケースとハズキルーペを忍ばせている。  ホテルのレストランからは港の美しい夜景が見える。彼女のレン(蓮)とはホテルのラウンジで待ち合わせをした。  「パパ、ここよ。」ラウンジのソフ

          あぶないパパ 伊達ひろしの「今夜は泣かないで。」