真夏に採れたての白菜を食べる⑥
「必ず儲かります。」
「将来の生活の安心につながりますよ。」
「絶対に損はしません。」
「考えておくなんて言わないで、“今” 決めてください。」
「あなただけではなく、お子様やお孫さんのためですよ」
名刺にはハードバンクソーラーテック代理店 株式会社ヒーローズ 代表取締役 椎田広志と書いてあった。
彼はメガソーラーを推進するハードバンクの代理店をしていた。
「社長、本日もご契約おめでとうございます。しかしながらひとつご質問なのですが、本当に将来にわたってソーラー事業は儲かると思いますか。」契約書に印鑑を貰った帰り際に、隣に座っているハードバンクソーラーテックの担当者が語りかけた。
「今のところはみんなそれを信じてますね。国の補助金も充実してますし。」
「それなら国が自分でやるとか、ソーラー開発メーカーが自分でやればいいのでは?」
「それは良い質問ですね。農家が自分の農地を利用して、何千何万平米もメガソーラーに大金をかけて売電事業を起業していますね。
ところであのソーラーパネル1枚あたり、いくらで施工業者は仕入れるかわかる?一枚、約3万円ですよ。
それを10倍20倍の価格で、お客さまに数千万円数億円で売るんだから、利益率は当然高いし、今やそれは全国的な動きですよ。景気の起爆剤にはなるんじゃないでしょうか。」
「でもメーカーや国は自分で作ることはやっても、独占的にソーラー売電事業はやらない。」
椎田はそれ以上は答えなかった。
この世で絶対なものは死と税金である、とは、ベンジャミンフランクリンの言葉である。
しかしながらもはや人類は、お金を儲ける事、死なない事、税金の抜け穴を探す事に挑戦しようと考え始めているのでは?と広志はふと思った。
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