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本を読んだ: 半分、減らす。(川野泰周)


要約

物はいくらあっても心を満たすことはない。 適量を超えた食事は身体の負担となる。脳が処理できる情報の量には限界がある。このような「多すぎる」「やりすぎる」はやがて心身の不調を招く。本書では,健康で豊かな生活を実現するために,「多すぎる」「やりすぎる」を中道の精神に則って半分減らすことを提案する。「半分」は減らす量として明確であることに加えて,決して少ない量ではないことから減らすための工夫が必要となるため,行動変容につながることが期待される。

内容と全体の印象

多くの物事が「過剰」になっている今日において,それによって生じる心の荒みを解消するためのヒントを,仏教と精神医学の知見を踏まえて提供するものである。身の回りの物事を適度に減らす方法を,物,食事,消費,情報,仕事の5つに焦点を当てて解説している。難しい表現や難解な文章構成がなく,また読者に対して厳しい言葉をかけていることもないため,気軽に読むことができると思われる。

特に印象に残った部分

「あまりにも多くの物に囲まれていると、一つひとつの大切な物や人とのご縁が希薄な物になってしまいます。」(P. 41)

この文を読んで,ミニマリストは縁を大切にするために所有するものを厳選しているのであり(すなわち,所有する物一つひとつと真摯に向き合うために物を減らしている),単に所有している物の数を減らせばいいというわけではないのではないかと考えた。

「五観の偈」(p. 95)

この後に「五観の偈」について記述されている。これを読んで,食事とは「生きるために命をいただく」行為であると改めて意識させられた。

「ショ糖も果糖もオリゴ糖も、すべて「血液脳関門」を通過できないため」(p. 113)

ブドウ糖が脳のエネルギーとして使われるという話だが,多くの糖が存在する中でなぜブドウ糖なのかという点については知らなかったため,勉強になった。

感想

川野先生の前著に「心と身体の正しい休め方」がある。一見類似した内容であるかのように思われるが,前著が疲労解消の一翼を担うマインドフルネスの実践を軸に書かれているのに対して,本書ではマインドフルネスな状態を導きやすくするための日常生活での工夫に焦点が当てられていると思われた。前著に共通することだが,川野先生の穏やかな人柄が文章に表れていると感じられた。

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