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砥川 佑子
2016年4月23日 14:57
人魚姫は恋に散ったから泡沫へと散ったんだっけ。海へと溶けていくとき、何を思ったんだろう。彼女の心はいつまで残っていたんだろう。たとえば、泡へと変化していくその身体を、見つめることは出来たのだろうか。もしくは何も思い返せる瞬間もなく変わっていったのだろうか。ウォッカの入ったコップへ炭酸水を注ぐ。氷に反応して、しゅわしゅわという音がよく聞こえた。半分に切ったレモンを、グラスの上で思い切り握りつぶす。
2016年4月6日 18:20
男は黒いマフラーと背中に金の龍が刺繍された黒いスカジャンを身にまとい、黒く染色されたジーパンを履いていた。茶色の巻き毛は肩まで伸びきり、冬の空気を含んでぼさぼさに膨らんでいた。その襟足を抑えるように巻き付けられているマフラーが、彼の口元をも隠している。都会の駅から程近い歩道を歩く彼は、ひどく苛立っているような様子だった。その目つきは殺気をはらんで据わっており、時折携帯電話の通知欄を見ては、なんの知
2016年3月14日 21:13
僕には世界が2秒早く訪れる。昔から感じていたのは、他人よりすこしだけ早く反応できてるな、という些細な自尊心だった。返事が周りより少しだけ早い。踏み出しが早い。もしかしたら本当に反応が少し早いだけで、世界の時間軸の中には収まっているのかもしれない。でも僕にとっては、世界を他の誰かよりも先駆けて体感できていると思った方が、楽しくて仕方なかった。そんな僕はこの日本でただの中学生をやっていて、将来
2016年2月29日 23:53
ドライヤーが壊れた。持ち手の部分のネジが取れたようで、折り畳み式の可動部分を動かすたびに取れてしまいそうな不安な音がする。温風を出す部分については引き続き使っていけそうな感じなので、なんとかごまかしながらそのまま使っていくことにした。それから数日が経ったころ。今度はヘアーアイロンが壊れた。こちらは完全な大破だった。トングのような形状をしたタイプのヘアーアイロンだったのだけど、その可動部