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転ばぬ先のベトナム情報(5) 労働者との問題を減らすには? part2

前回の続きです。
広告的な『ベトナム人材は優秀』『笑顔のベトナムで楽しく働きませんか』などと言った記事はコロナ前にはたくさんありました。 
JETROのアンケートでも赤裸々に書かれているように実際にはかなり違うのですが、現実の姿をベトナムに来て働く日本人は口にしなくなりますし、ネットには意外と情報が少ないです。 貧国ならではの事情や日系企業のあれこれ、個人差や個々のケースの内情を考えると問題は常に複雑で、無責任な広告的な「ムード」に抗ってなにか言うのも面倒だからでしょう。 
情報を共有して現実の理解のコンセンサスがあれば協力し合い、日本人もより良く海外で働いたり、行動の幅を安全に広げられると思いますので、参考に慣れば幸いです。

トラブルを避けるには

労働者と実務上の問題やトラブルをさけ、お互い楽に仕事をするための手法は主に、マナー(常識)と作業方法、2つがあるでしょう。 ざっくり以下の方法が必須となると考えています。

  1. 日本人側の結束、ルールの徹底

  2. 入社基準の明確化

  3. ビジネスマナーの導入

  4. ユビキタス言語の導入と文書作成の徹底

  5. 明確な指示、文書(テキスト)ベースでの指示

  6. タブーをしない

3,4は日本人には難しい事が多いです。なぜなら日本人はマネジメントを行うための教育があまりされておらず、大学卒でも大量の文書のINPUT/OUTPUTが出来ない人が多いこと、企業としてもその作業を見積もっていなかったり、評価しない風土があります。 いわば下の人が自分で考えて忖度して仕事をして、ダメなら叱るというような(マネジメント)です。
これは海外では通用せずコストとなるだけでしょう。

1.日本人側の結束、ルールの徹底

無駄に長い会議、無責任な管理職、というのが日本式。ベトナム人のカモでしかありません。

まず重要なのは、日本人側でコンセンサスをとり、どのようにベトナム人労働者に仕事をしてもらうか、あらゆる面で強調・協力して揺らがないようにすることです。

(理由については過去記事でかきました。お時間があればご参照ください。)

理由はいろいろありますが、

  • 会社は根本的には学校ではなく、マネージャーは教育の専門性はない(学校でも教えられなかったことが会社で急に教えられるのか?現実を共有)

  • ベトナム人に仕事をさせる大変さを共通認識として持ち協力する

  • 必要な文書作成や作業方法を決め遵守する

  • ベトナム人への指示方法のルール策定と徹底

  • ルールや作業フローを徹底する

などについて、日本人側でまず意識・作業ともに徹底することです。

ありがちな問題として、日本本社側とベトナム支社側の上下関係が透けて見えたり、日本人の中の温度差をベトナム人が見透かして、それを逆手に取るようなケースです。 ベトナムではほぼ全員がFacebook messenger 他複数のメッセンジャーアプリを使いこなし、グループなどを使い情報共有が盛んです。
人数で圧倒的に少数派となる日本人はあらゆる所で観察され、情報共有をされている意識が必要ですが、業務の方針では更に神経質になる必要が有ると考えます。

業務ルールの徹底は製造業では当たり前と思いますが、IT系で出来ていると思われるのは超有名な大企業の関連会社以外では ごくわずかの企業になるかと思います。 
ベトナムオフショア開発の雄アスタリスクさんなどは早くから体制を築いている雰囲気がありますが新興企業では少ないでしょう。(アスタリスクさんはオフショア・ラボから脱皮して次のステージに行っていますね。)

日本人の業務範囲や職責の定義も重要

また、教育についても限界が有ることを共有すべきです。
日本人は凄いのでベトナム人に教えるのだ!というような人もたまにいますが、ショパンやガリレオ・ガリレイのような偉人でも「人に教えるのは難しい、ましてや子供に教えるのは」と語っていたそうです。
そもそも、子供っぽく抑制がききづらい感情的な人が多いベトナムで、素人の外国人がなぜ教育できると考えるのか理解できませんし、本社側などが丸投げで「出来るはず」という前提から関係がおかしくなり現地社長が離脱、というのも珍しくありません。

先に書いた記事で説明しましたが、そもそも優秀でな人が来る前提しか無いのです。 自分で学べない外国人に、学校の先生でも出来なかっったことを教えられるスーパー教師が社員の中には居ないだろう、という共通認識が大切です。
そもそも、そんな事ができるなら日本で塾を作って大儲けですよね。

ベトナム人への指示方法のルール策定と徹底

これは比較的簡単なものですが重要で、日本人側が守るべきベトナム人へのマナー集ともいえます。

  • ベトナムの法律・監修の理解と尊守

  • 失敗を人前で注意をしない

  • 決して怒らない

  • 嫌味などを言って、ベトナム人の子供基質のレベルに落ちない

など。こうした事は当たり前、とせずに文書化してゆらぎがないルールで徹底し、ベトナム人のマネージャーとも共有をして文化を育むことはお互いの尊敬に繋がります。

実際には難しい日本人によるマネジメントの現実

海外では指示を出す側と作業をする人たちが明確に分かれており、作業する側は受け身で決められたこと”だけ”をイヤイヤでもやればよい、という考え方が基本です。
(そもそも喜んで仕事を失敗しても、イヤイヤやって普通の結果かとか、確認のしようがなく、思い込みや好き嫌いで人を評価することになってしまい問題があります。)

指示を出す側は作業者のため、明確な資料を準備して、作業者が集中して黙々と作業が出来るようにする必要があります。 
日本では労働者が欠員などでステップアップした人が「あれやって」「これはダメ」と、ゆるい依頼と後出しの注意による「マネジメント」がほとんどですが、これは海外では「無能」以外の何物でもありません。

日本人がベトナム人を使うのを好むのはこの部分に面と向かって「なんで?」と質問をせず、ダラダラと適当にあわせて、成果は出ないながらもマネージャーの顔を潰さずにトボケて仕事をしてくれるから、というのは大きいでしょう。 そしてたまたま仕事が進むと「やはり優秀だ!」などと安易な結論に飛びつくが成長性に結びつかない、というのはベトナムITあるあるでしょう。

裏を返せば、多くの日系企業がより能力が高い人が居る英語圏でITの開発を積極的に行わない(行えない)理由もここにあります。 幼稚なプライド、低いマネジメント能力が理由でコストパフォーマンスが良い中東欧やロシアの技術者を使いこなせず今に至っています。アメリカやイギリス、ドイツなどは早くからスロベニアやバルト三国に投資して技術者を獲得しているのは有名な話です。

山本五十六の教えに学ぼう

様々な知識経験が乏しいベトナム人に資料を作って指示を出しただけでは全く成果が期待できません。文書など資料があり説明をしたら、さらに手間をかける必要があります。
ベトナム人のマネジャーが自社の作業ルールで指示を出せるようになるまでは1つずつ手取り足取り、で進める必要があるのです。

超有名ですね

山本五十六が昭和初期に日本海軍を育成するに当たり書いたと言われる有名な名言があります。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、
ほめてやらねば、人は動かじ。

話し合い、耳を傾け、承認し、
任せてやらねば、人は育たず。

やっている、姿を感謝で見守って、
信頼せねば、人は実らず。」

山本五十六

これと同じことを粘り強く続ける必要があります。まさに名言ですが、筆者は仕事中は上の色紙をデスクトップの壁紙にしているほどです。

この名言が出来た背景には当時の厳しい事情が合ったようで、 日本で軍隊にはいった若者はちょうど今のベトナムと同じように、地方の農村からでてきた中高教育どころか家庭教育も微妙な人たちです。
日本が兵隊さんを募集するにあたり「軍隊に入ると米がたべられる」と宣伝したのは有名な話で、今のベトナムより遥かに貧しく、ましてやスマホどころか何もインフラがない時代で知識は家族でおこなう農家の仕事だけ、という人が近代化を進める軍隊に入るのですから教育の苦労ははかりしれません。

軍隊では税金を使い、国の資産として人を育てるので予算感や世の中のムードなど、スケールが違います。 ベトナムで小規模事業主が身銭を切って人を育て、ベトナム企業へ転職、という状況も有る中で、ある意味もっと過酷になります。

話を戻すと、ベトナムで一番重要なのは、この最初の「やってみせ」です。それは言葉の壁・外国人が命令している、という文化的背景の壁という2つの障害が有るからです。

長い長い道のりの始まりです

しかし、実際にはITでは「みせる」ことに限界の有る作業もありますし、言葉の壁もあり簡単には生きません。 またコストが膨大になることで「何のためにベトナムに?」ということになるでしょう。そこで必要なのが前述をした3,4の文書作成となります。

いずれにしても、日本人サイドが一丸となって、こうしたマインドを共有してベトナム人を巻き込んでいく体制が何よりも大切です。 これがなくて他の小手先のルールなどは長続きしないでしょう。

1.作業の文書化、説明
2. 「やってみせ」
3. 「みまもり、意見を聞いて承認し」
4. 振り返りをして必要があれば1へ戻る

と言った形でしょうか。ベトナムの人は子供っぽい所があり、また非常に自尊心・自己顕示欲が強い人が多いので「意見を聞いてあげる」というのも大切なポイントです。

何事も理屈より気分優先になりやすいので、まずは話を聞き褒めてあげた上でこちらの主張をだしていく、という「対等な会話」が常に重要となります。

また、これらが面倒・日本側のコストが見合わない場合は報酬額を上げていくか、より能力が高い地域で仕事を進めるほうが合理的な場合もあるかと思います。
現実に合わせて柔軟に対応することが海外では何より大切です。

2.入社基準の明確化

CVや面接時に嘘の記述や解答をするのが日常茶飯事のベトナムですので、入社時に問診票にはサインをしてもらい虚偽があった時にトラブルにならないよう試用期間で終了にする対策や、入社時にテストを行い予め「ふるい」にかけるのは重要な要素です。

「せっかく来てくれたのに」とか「それだと人が来ない」という場合には単に募集の条件が悪いと考えるべきで、要件にあわない人を入れ後になって「使えない」「なんとかしろ」という日式ダメダメマネージメント選手権が開幕、というのはよくありません。

これまで見たトンデモ技術者

必要性がピンとこないかもしれないので、日常的に有る問題を列挙しますと、たとえば

  • 指示を聞いてわかったふりをする。かなり後になってから大問題に

  • 文言(単語)の意味がわからない。調べない。わかったふりをする。

  • メッセンジャーなどで遊んでしまう。

  • 社内の情報をネットに書き込んだり、お客様のソースコードをgitなどに公開してしまう。

  • バグや問題の認識が皆無。バグでないと主張する。

  • 就業時間に勝手に居なくなる。カフェなどで遊んでしまう。

  • 仕様書などを見ずに適当に作業して、問題があってから見る。

  • 算数が苦手

  • 他人のせいにする、嘘の理由を作りごまかす

  • 通訳が嘘の翻訳をしてごまかす。

  • ほうれんそうが出来ない

  • 終わっていないのに、終わったと言って帰宅、そのまま忘れる。

  • 態度が悪い(DQN的な態度の人が一定数います)

  • 社内ベトナム人が日本人社員の行動を逐一共有、さまざまなゲリラ戦でサボタージュ

※これらはベトナムの工科大学を卒業したレベルの人たちで普通に見られる現実です。

低レベルすぎて、中学校の問題のような感じですが30歳前後でもこんなだったりします。
日本人の前ではやらない、若い社員には態度を変える、なども普通で日本人どうして評価がわかれてコンセンサスが崩れるようなこともしばしばです。

メンタリティーがプロフェッショナルからかなり遠く、またベトナム人労働者たちの村社会的な力関係が前提にあり、日本人はそこに触れると揉め事に発展するなど、感情的な話になることが多いため、採用とその時の枠組みが非常に重要となります。

一度はいってしまうと、そもそも相手が納得する気がなく、駄々をこねているような状態になることも多いですし、心が弱い傾向があり責任をとるといった考え方も希薄で真面目な人が損をする組織に変貌しやすいのはベトナムの特徴と言えるかと思います。

(ジェトロのベトナム人材力調査.PDFも参考になります)

https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07000251/vietnam_jinzairyoku2.pdf

3. ビジネスマナーの導入

マナー問題は根深いので完全な解決は難しいかとは思いますが解決策がないではありません。具体的には例えば以下のうようにすれば最低ラインのガードレールを作ることが出来ます。

  1.  入社前後にマナーの説明文書の読み合わせを行う

  2. 納得してもらえたら、文書にサインをもらう

  3. 問題行動があれば、その場で注意をせず別室で指導(マナー文書の読み合わせ講習をルーチン化)

  4. 問題行動はマネージャーが記録して経緯をつける

会社として、「これはダメ!」という事は入社時に雇用契約書とあわせて別文書で列挙し、読み合わせの上サインをもらうようにして、入社後の指導を事務的に粘り強く続けることが大切です。

✪製造業は安全確保もあり、こうしたノウハウが多いですがIT系は日本人職員がそもそも自由にしたい人が多いため、非常にこの点が弱いです。
日本人も遅刻などが目立ち、ベトナム人が困る場面もよく見てきました。人のことを棚に上げることではベトナムは天下一品です。日本人は太刀打ちできませんので、日本人職員の管理は非常に重要です。

ベトナムの人は写真が大好き。写真を撮らせて!というと快諾してくれることも多いです。
ルールが厳しすぎる日本では。。。物事には両面がありますね。


4.ユビキタス言語の導入と文書作成の徹底

職務エリアが違っても話が通じるように、というのが本来の目的ですが
他国籍チームではより必要性が高いです

開発者やドメインエキスパートを含むチーム全体の共通言語として定義され、チーム内の会話、ドキュメントやコードに至るまで統一的に使用される「単語の定義集」のことです。
要するに社内で使う「専門用語集」なのですが、ベトナム人にはユビキタスランゲージとして権威付して導入すると効果があります。

下画像はQiitaにあった記事からのもので、記事のリンクは下にあります。
業務で使用する単語が不統一で混乱が起きると、日本人だけでも時に大問題となりますが、通訳の人が入り日英ベトナム語が入り乱れると、プロジェクト後半で大変な混乱が置きますので必ず作るようにしましょう。

Qiita:ユビキタス言語のフォーマットサンプルを探してみた


5.明確な指示、文書(テキスト)ベースでの指示

まず前提として、日本語が出来るベトナム人であっても音声(会話)による指示の到達率は50%以下と見積もるべきと考えています。
たとえ口頭で指示をしても、その後必ずテキストで共有し直す必要があります。
これは「実際に伝達ミスが起きる」ことと「伝達ミスのふりができる」ことで2重3重の問題を生み出します。
なぜなら、「そんな事を聞いてません」「そうは聞いていません」と言い訳した本人が実際にどうだったか忘れたり、その先にどのように伝えたかの調査など、問題が連鎖していくからです。

不可能に挑まない、教育者には成れない

また、英語が出来るベトナム人であっても発音は訛りがきつく、こちらの言うこともわかっているか微妙です。というのもベトナム語にはない音が英語には多く、発音も聞き取りも根っこの部分で出来ない部分が有るからです。
一例では日本語の 「やゆよ」行、とくに「ゆ/ Y」は聞き取れない人が多いですが専門家であっても教えるのは難しいでしょう。 指導は出来ないと達観すべき点です。
また、日本人側の英語も相手にとてはツッコミどころとして便利なので、問題が増幅してしまいます。

ベトナム語と日本語の問題

これはあまり知られていな重要な点かと思いますが、他国籍で作業するとき、日本語にも弱点があることは認識すべきと思います。
日本語はよく「あいまい」だと言われますが真剣に研究している人は少なく、普段は意識をしていないでしょう。しかしプログラムの仕様書などでは確認すること満載となります。たとえば英語であれば a , the などの冠詞や複数形のルールがあり、そこだけとってもプログラムにする時に確度が高い情報になりまえます。

// 単数
int value = 10;

// 複数
int values = [ 10, 11, 12 ];

同じようにベトナム語も曖昧な言語で、文法で規定がゆるく自制がはっきりしないなど、日本語の上を行きます。
少なくとも日本語=ベトナム語でITなどの厳密性のある事柄を大量に扱い、きちんと通じるというのは幻想なのです。

ストレスを減らし、「言った言わない」問題を回避

以上のことを考えても、口頭で指示が出せるという幻想は一旦捨てて、文書・テキストのワークフローを日本側=>ベトナムで徹底する必要が有ると考えます。
口頭の指示も後からテキストで上書きするのは「言った言わない」を防ぎベトナム人の「言い訳やウソ」をつく癖を引き出さないためです。
もちろんテキストを送っても言い訳や嘘は出ますが、押し問答は軽減され、問題発生時に事務的に指示を出しやすくなります。
また英語を挟むことで公平感が出るだけでなく、日本語の曖昧いさや慣例から「丸投げ感」で依頼する事が軽減できます。
英語では構造上、主語と目的語が必要な文体が多く、そこを外して書くのはへんてこな英語になるため、是正にはちょうどよいのです。
(英語は無理、という場合には通訳がはいるのでしょうが結局は間違い探しと言い訳の鬼ごっこが始まるでしょう。)

複雑なことは文書で

単発の指示以外は文書を作成して作業に当たらせるべきです。
たくさん書く必要はなく、少なくても確実に伝わり終わった時に結果が残るようにしてあげるのもポイントです。 

文書作成について書くと本が何冊もかけてしまうのでこの記事では具体的に書きませんが、例えば簡単なもので言うとアマゾンの会議の文書が良い例となりそうです。

会議を招集したマネージャーは先に会議内容を文書で通知、メンバーは目を通した上で参加をし、意見があれば議論しなければ解散、というものですが、これはマネージャーが文書を適切に作成できる前提があります。


6.タブー(禁忌)をしない

日本は豊かになり医療やインフラが発達して生活リスクが激減したことも有り、様々な『縁起を担ぐ』『禁忌を避ける』という風習はこの半世紀で激減したかと思いますが、ベトナムはまだ日本の昭和なムード、多くの人が迷信を信じているだけでなくベトナムならではの規範があります。

こうした事は理屈ではなく、仕事のストレスが多い場面で触れれば相手に『正義の言い訳』をする理由を与えるのはもちろん、感情的な理由で炎上しかねません。

しかし、ベトナムのローカルで寝食を長くともにしたとしても、こうした風習を全て理解するのは不可能ですし、縦に細長く地域差が大きなベトナムですから、個人間でも感覚にかなり差があります。またベトナム人どうしではOKでも外国人であれば横柄であったり、文化のリスペクトがない、と反発を招くこともあるでしょう。

ここまで遡らなくてもベトナム人の外国人との不都合はいくらでもあります

「ベトナム人はプライドが高い」の間違い

よくベトナム人はプライドが高い、という話がビジネスガイドに書いてありますし、受け売りなのかそんな話をする人も散見されます。 細かいことを言うようですが著者はベトナム人の『反応』と『プライド』は違うと考えています。 
ベトナムでプライドに触れた(なんか不機嫌にさせた)というケースでは

(a) 辱めた(相手を下げる行為、言動をした)
(b)  否定をした(間違いの指摘)
(c)能力・勝ち負けごとで負かした、評価しない(本来のプライド、自信が損なわれた)

ですがcは稀で殆どがa, bなのがベトナムでしょう。 c についても国がすごいとかベトナムがすごい、みたいなのは客観性や努力ではない思い込みや感情論で本来のプライドの意味とは違うでしょうが、これも多いのがベトナムです。 
現実にa,b の部分で感情的になってしまう理由として、前述の貧困や歴史的な屈辱を説明しました。こうしたことの「拒否反応」「痛み」としてプライドではなく「禁忌」の一部として考えるのが理解しやすいと考えています。

無用なトラブルを招かないために、現地人から見聞きしたことや欧米のガイドなどでも書かれている、外国人が気をつけるべきタブーや理由は以下。

6-1. 礼儀正しく

長い植民地時代と大国のための代理戦争、共産化のあとの貧困、と常に苦難と屈辱の歴史のなかで生き、支配者に抗ってきたベトナム人ですが、一方で戦中や経済解放後に外国人を見れば商売や安全のため、頭を下げ笑顔で外国人と渡り合ってきたベトナム人ですが、裏側から見れば同じ人間、ベトナム人同志の時の笑顔違いや挨拶した外国人が去ったあと嫌悪の表情を見ることもしばしばです。

ベトナムの人は礼儀正しいです

また日本と同じくお辞儀をし、物を両手で持って下から渡すような儒教的な文化のあるベトナムですので、若者やベトナム人どうしがフレンドリーにやり取りしているとしても、外国人はある程度礼儀の線を逸脱せず、常に尊敬を見せる態度は重要かと思います。当人以外の周りの誰が見て何を言うかわからないのがアウェイの環境です。

6-2. お金や物の貸し借り、プレゼントは注意

金銭の価値観が違うこと、どのような禁忌にふれる可能性がわからないため、プレゼントは必ず複数のベトナム人に意見を聞いて、他の人たちを真似して後から行く、くらいの慎重さがおすすめです。

また世界どこでもそうですが、お金や物の貸し借りは基本しない、どうしても必要ならプレゼントの形を取るか、

  1. snsなどで文字ベースのやり取りの上スクショ共有

  2. 貸したものが帰るまで、次のお願いは受け付けない約束(多重債務無し)

  3. 戻らず関係が壊れる前提があることを互いに確認

は必須でしょう。金融機関の視点賞をしている友人に聞くと、金を借りる頭の人は多くがパニックで正常ではないといいます。 尻に火がついているわけで、鎮火したらパニックのときのことは覚えていないのです。

6-3. 物を壊すと口論、諍いは同じ

あまり公式に書かれませんが、ベトナムでは諍いはたいへん縁起が悪い、富が減る行為とされています。 茶碗などが割れる=人間関係が壊れる(2度と元に戻らない)として忌み嫌われているそうです。

諍いそのものがひどい底辺な貧乏くさい行いでということで、特にお正月や催事では、諍いも食器が割れることも忌み嫌われるそうです。
これは風水的なことやビジネスマナーの根源とは別に、ベトナムの風土や水田など生きてきた環境も理由でしょう。非常に重要で言うまでもないことのようです。

職場ではあまりに子供のような言い訳が多かったり、ちょっと注意をすればむくれたり、時間にルーズであったりと諍いになる理由はいくらでも有るベトナムですが、『諍い」「不機嫌」になったら負け、というルールの中、アウェイの劣勢な環境でどうやって結果を出すかを考える必要が有ります。

最もこうした事は現在世界全体であるようで、とくに多民族多文化なうえ、やりたい放題が多いアメリカでも同様になってきているそうです。

6-4. 国の批判や戦争の話

ベトナムの政治体制や歴史を考慮して、ベトナム人だけでなくベトナム国内では口頭・SNSに限らず国家体制や共産党、有力者の批判や話題は禁物です。
また戦争関連の話も単に暗い・気分が悪くなる話という部分と、部外者が語るべきでないマナーの両面から避けるべきことです。

ベトナムの方は紙幣全てにホーチミンさんの顔が書かれている事も有り、よくこれ関連のジョークを言いますが、外国人が言って笑いを取ろうとすると事故のもとです。

どの国でも家族を使ったジョークが許されるのは家族だけ


6-5. その他、具体的にやってはいけない行為

  • 他の人が居る所でミスを指摘しない

  • 相手の頭に何があっても触れない事

  • 異性に触れない

  • 相手の肩に触れない

  • 両手で物を渡す

  • 越に手を当てて相手の前に立つ(偉そうにする)

  • 相手のミスを直球で指摘しない、まず褒めてから説明

  • 後輩の女子社員を食事に誘う

  • 仕事終わりの飲み会で仕事の愚痴をこぼす

  • 不幸や不運が合った後の訪問 (悪運を運ぶ)

実際に上記6つ全てを徹底するのは難しくても最後の禁忌編だけはぜひ考慮して事故を避けていただけたら嬉しです。

仕事でトラブルを避けるために一番重要なこと

各論では説明をしたものの、トラブルを大きくしないために一番大切なことは日本人同士の協力体制と考えています。

これまで書いたことはどれも各論です。個々の問題にはそれぞれ異なる理由や条件があリベトナム人にしても人により様々な中、アウェーの絶対少数派の中で現実には理屈通りにいかないことがほとんどでしょう。
また、場当たり的に対策をしても、ベトナム人にはすぐ見にすかされあの手この手で回避策をひねり出されることも多いのが現実です。

ベトナム人と日本人が仕事をするにあたり、大切だと思うのな日本人同士の協力体制社内の体制整備です。 これは製造業の見学をした時に、国内であってもこれらを徹底し、ベトナムでも現実的かつスマートに対処されている用に感じました。

一方零細が多いIT系やベンチャーではルールはグダグダ、ルールがなく個人任せが多いかと思います。
結果として起きるのは、ベトナム人が裏で結託し個々の指示ではのらりくらり、というパターン。 笑顔で従ったふりをされても、実績が伴わなければいずれ事業は行き詰まります。

仕事で個人個人の軋轢を避けよう!と号令だけで進めず、社内のルールを明確にベトナム人にきちんと説目・納得をするトップダウンの秩序の土台がある中で、個々の日本人が協力して対応をすることが重要と考えます。


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