超短編/脳髄注射
あまりにも頭がいたい博士次郎は、国立河川敷あたま研究病院へ行くことにした。到着後、問診票に『あたまがいたい』と書くと、さっそく脳髄注射と相成った。
「ちょっとチクーとしますけど我慢してくださいねー」
美少女看護婦人の声が聞こえる。脳天から針がブスリ、エキスが注入される。
「注射のなかみ、まさかお姉さんのおしっこじゃないでしょうね」
そんなかる口を叩くヒマもなく、あっという間に眠りに落ちた博士次郎は総天然カラーの淫美な夢を見たが、目を覚ましたらたちまち見ていた夢の内容を忘れてしまった。
診断をしたのは五十がらみの白衣の男だった。
「どんな夢を見ましたか」
「それが、起きたら忘れてしまって思い出せないのです」
「そうでしょう、夢ってそういうところありますよね。では待合室でお待ちください」
待合室には14型ブラウン管テレビがあって、昭和時代の金八先生が再放送されていた。博士次郎は『イマドキあのテレビが写るということは、どこかにデジアナ変換機が有るのだな』と思った。
「博士さん、博士次郎さん」
受付に呼ばれ、立ち向かう次郎。
「あのテレビ、なんで写るのかアナタにわかりますか?デジアナ変換機はどこだ!」
「博士さん、今日は25000円です」
「え」
「博士さんは保険証がないので10割負担になりますもので」
「...」。
「なんで保険証ないんですか。健康保険料を払っていないのですか」
「大きなお世話だ」
「さてはあんた、保険料を払ってないから保険証がないんでしょう?」
「僕こじきなんでお金がないんです」
待合室の椅子にもどりしばらくすると五十がらみの白衣のひとがきた。
「あ、さっきのしとだ」
「きみお金がないんだって?いいでしょう、そしたらうちでがんばってみますか、それでどうですか」
こうして博士次郎は新しい職にありつくことができた。博士次郎は河川敷脳髄研究所の人間モルモットになった。美少女看護婦人に脳髄注射を連射される毎日だ。
「ちょっとチクーとしますけど、もうすぐ死ぬので我慢してくださいねぇ」
おわり
先日同様の不条理な短編です。うまく意味不明なことを並べ立てることができました。まぁまぁ面白い気がするのですが、やはりそう感じる人は少ないのでしょうか。トップ画像は街中の看板を撮影して加工したものです。
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