彼とカメラと私と
授業が始まる前の時間や寝る前、バスに揺られている時間といったふとした時に、彼との思い出が詰まったカメラロールを遡る。
なんだか眠れない
そんな今もカメラロールに残った写真を眺めている。
付き合いはじめた頃はiPhoneで写真を撮っていたが、彼の手元にFUJIFILMのカメラがやってきた去年の夏頃から、カメラロールの景色が変わった。
彼は私の姿を沢山撮ってくれる。
今まで、他撮りされる自分が好きじゃなかった。
恥ずかしかった。
2人で写真を撮る時はiPhoneで自分の姿を見て、可愛く見える最適な角度や盛れる最適な表情を調節しながら、なんとか納得できる写真を撮っていた。
だからこそ、友達にカメラを向けられた時に、最適な自分を確認できず構えすぎたり力んだりして、ネタのような写真を見ながら笑いに変えていた。
初めて彼が私1人の写真を撮ってくれた時のことを、カメラロールを遡りながらよく思い出す。
高校3年生、付き合って初めて彼と行く初詣。
私がおみくじを結んでいる時にその時が訪れた。
あ、今撮られたかも。どんな表情してた?変じゃなかった?ふいだったし半目とかだったらどうしよう。
不安が募っていく中その写真を見た時、そんな感情は一切なくなっていた。
彼の見ている私って可愛いのかもとちょっぴり自惚れてしまうくらい自然な姿だった。
ネタになんかしたくなくなる程の。
同時に「彼の前でなら自然でいられる」という感情が芽生えた。
それからというもの、彼に撮られることが楽しくなり、カメラに記憶された写真が愛おしくなった。
彼が覗くファインダー越しの世界にいる私は、きっと彼の大好きな恋人なのだろう。
適当にシャッターを切って適当に終わらせている姿なんて見たことないもの。
私もね、写真を撮ったあとに「すごく良いのが撮れた」「今の表情可愛い」と満足げな表情で見つめてくれる彼が大好き。
彼が撮ってくれる写真の中には、見返す度に思わず吹き出してしまう、おふざけ写真も多い。
彼がカメラのシャッターを切る瞬間、ジャンプしてみたり変顔してみたり。
「ふざけすぎ」と呆れながらも笑ってくれる彼の姿を見ていると、もっともっと笑わせたくなってしまうのだ。
こうやって全力で変顔したり意味不明なポーズを試みたりめきるのも、彼が良いところも良くないところも全部受けとめてくれるから。
良いところばかり見せていると、いつか必ずボロが出るし自分のことが嫌いになってしまう。
今までは写真の世界でも現実の世界でもその繰り返しだったのかも。
私のカメラロールに彼がいるようになってからは、それまでとは段違いに表情が豊かになったと実感している。
彼と撮った写真、彼の撮ってくれた写真を見ていると、物語を途中から読んで「そういえばこのシーン○○だったな」と思い出すように、当時の景色や感情が鮮明に蘇ってくる。
いわば、写真が私の記憶の『しおり』となっているのだ。
そのくらい、彼の寛大な心に救われて変わることができた。
私も、彼が彼自身のことをもっと愛しく大好きになってもらうために
その時の記憶・感情を残していきたいな。
大学3年生になった今、私も彼も新しいカメラを新調した。
私は手軽に取り出せて持ち運びやすいカメラが好ましいことに気づき、一目惚れしたSONYのコンデジを。
彼はずっとずっと、ずーっと欲しがっていたFUJIFILMの一眼レフを。
「映え」とか「盛れる」とかそんなんじゃなくて
その一瞬の出来事をおさめて
かけがえのない思い出を語り合えるように
思うがままにシャッターを切ろう。
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