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トレーニングの構成


週間トレーニング計画で設定した1日のテーマをトレーニングに落とし込んでいきます。
トレーニングで最も重要となるのは難易度の設定です。
成功と失敗のバランスと言われますが、70%程度の成功、30%程度の失敗が起こることが基準です。
ほとんど誰も失敗しないのであれば、複雑性と難易度を高め、ミスが起こりすぎてトレーニングが成り立たないのであれば、複雑性と難易度を落とす必要があります。

複雑性と難易度のコントロールですが、コーチがコントロールできる要素は5つです。

①人数
②サイズ
③ルール設定
④始め方と終わり方
⑤時間
*これら5つを微調整して、複雑性と難易度をコントロールします。

「人数」

同数なのか、フリーマンやサーバーを入れてアウトナンバーを作るのか、そもそもアウトナンバーなのかで難易度をコントロールできます。
また、同数であれば、人数の増減によって複雑性をコントロールできます。

「サイズ」

試合では105m*68mで
GKありの場合、 1人あたり10:7
GK無しの場合、 1人あたり10:6
の比率が基準になります。
縦*横/プレーする人数で比率を出して小サイズなのか、中サイズなのか、大サイズなのか基準にすることができます。
 →縦×横/プレーする人数
  小 <100
  中 <200
  大 >200
基本的に、人数比が大きいほどプレーする時間とスペースが確保されるので難易度が低くなります。


「ルール設定」

ルールはかなりのバリエーションを出すことができる部分です。
ここではタッチ制限を例に挙げます。
タッチ制限はボールを受けた後のプレーに対して制限をかけることで、ボールを受ける前のプレーを改善しようとしています。
あとは、2タッチ以上であれば1stタッチの質です。
タッチ制限をすることでトレーニングのテンポは高まることが多いです。
何事もメリットとデメリットがあるので、失っている要素としてはドリブル突破やドリブルで持ち運ぶことがあります。
ルール設定によるメリットばかりに目がいき、デメリットやそのルールによって失っている要素に目がいかないことが多いので注意が必要です。

「始め方と終わり方」

トレーニングをどうやって始めるか、どうやったら終わるのかはあまり気にすることがないかもしれませんが、非常に重要なポイントです。
始め方
個人練習の場合は、選手個人のタイミングで始めることが多いです。
複数人のパス練習や小さいボール回しなどは、各グループのタイミングで始まることがあります。
コーチの指示や配球によって時始まるトレーニングが多いのではないでしょうか。
配球に関しては攻撃側に配球するのか、守備側なのか、ルーズボールなのか、GKからなのか。
起こしたい現象によってどう配球するかはトレーニングのテンポ感、質を決める重要な要素です。
終わり方
トレーニングの難易度を決定する要素にもなり得ます。
目標が高すぎる場合や低すぎる場合は、選手のモチベーションを保つことはできません。
トレーニングの終わりを設定しない、指導者や選手が満足するまでというのは効果的でないことが多いです。

「時間」

時間はフィジカル要素との関係が強いです。
どれくらいのフィジカル的な負荷をかけたいのか、もしくはどれくらいの頻度でアクションを起こして欲しいのかで時間を設定します。
時間が短いほど、アクション頻度を高くプレーでき、時間が長くなるほどアクション頻度は低くなります。

トレーニングの考え方

トレーニング現場は想定外のことが発生することが当たり前です。
想定通りに行かなかったときにこだわりすぎるのではなく、指導者がコントロールできる部分に目を向けて修正を試みることをお勧めします。
また、難しいと思ったらキッパリ諦めて次のトレーニングに進むことも必要です。

トレーニングを考える上で重要な図を説明します。

ピッチ上で起こるプレーや現象は、「選手同士で相互作用しながら、与えられた環境で、タスクの達成を目指す中で、選手はアクションするために知覚/認知し、知覚/認知するためにアクションを起こす結果として現れる。」
コーチの仕事は、タスクと環境を規定し、知覚と認知のヒントを与えることで、ピッチ上で起こる現象を改善し選手を成長させること。と考えています。

5vs5+2FM+2Sを例に説明します。

タスク
・攻撃側がパス20本繋ぐこと。
・Sを経由してボールを2往復させること。

環境
・Sはライン上のみ移動可能。
・FMはセパレートされたエリア内のみ移動可能。
*攻撃守備全員が 1つのエリアに入ったとしても、SとFMがいるので+2のオーバーナンバーでボールを動かすことができます。

知覚・認知
・相手DFが何人ボールを奪いにきているのか。
*つまり、パスを回させないように3人以上でボールを奪いにきているのか、前進させないように後方でカバーのポジションを取っているのかです。

求める現象
相手の人数に応じてパス20本を狙うのかサイドを変えて2往復を狙うのか変化させることです。また、ピポットのポジションを外さず、相手を中央に寄せてサイドのスペースを使うプレー、サイドにボールが入った時にピポットが平行サポートに入って選択肢を作ることも求めます。

必要なアクション
・身体の向きを作り、複数のパスラインと選択肢を持つこと。
・パス20本と2往復を常に両方狙えるように相手のラインを越えたポジションを取りながらパスラインも作ること。

このトレーニングの中で、コーチがコントロールするのは、タスクと環境のみです。求める現象を引き出すために、その現象を説明してはいけません。選手は与えられたタスク、環境、選手との関係性の中で解決策を探ることで成長します。知覚・認知のヒントを与えるのみです。選手のアクションと知覚・認知のサイクルを奪うことは、上手くなるチャンスを奪っているに等しいということです。

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