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【取材記事】パン通販サイト「rebake」全国のユーザーとパン屋さんをつなぎ、ロスパンの削減に成功

合同会社クアッガは、廃棄を減らすパンのお取り寄せ通販サイト「rebake(リベイク)」の運営を行っている会社です。「人にも食べ物にも幸せな一生を」をビジョンとし、斉藤 優也(さいとう ゆうや)代表のもと、社会全体の幸福度が上がる仕組みに取り組んでいます。今回はサービスをはじめるきっかけや、困難だったこと、ロスパンについてなどを、水戸部様にお伺いしました。

【お話を伺った方】

水戸部 あかり(みとべ あかり)様
幼いころから食べること自体が大好きで、大学では栄養学を学ぶ。
パンを作るのも食べるのも大好きなrebakeスタッフです。

■廃棄物削減活動を発端に、扱いやすい「パン」のロス削減にたどり着く

mySDG編集部:まずは創業の経緯からお願いします。

水戸部さん:代表の斉藤は、北海道の農家出身なので幼い頃から大自然と畑に囲まれて育っていました。大学では生態系や有機農業を学び、その後、農業系のベンチャー企業に就職してからは、廃棄物削減の活動も行っていました。徐々に斉藤個人として取り組めることはないかと考え出した頃、ちょうど斉藤の姉がパン屋さんで働いていて、パンの売れ残りを身近に感じたんです。それをきっかけに、実際にパン屋さんの主人に直接話を伺い、リサーチをした上で、パンを取り扱うことを決めました。

mySDG編集部:フードロスと聞くと、野菜やお惣菜などは思いつきますが、パンのロスは気が付きませんでした。

水戸部さん:私もパンが好きですが、斉藤もパンが大好きだったんです。当初は中食(なかしょく)、お弁当やお惣菜などの販売も考えていましたが、取り扱いが難しく賞味期限も短い。特に中食の賞味期限は当日が多いんです。しかしパンの場合は常温保存で翌日でもおいしく食べられるので、取り扱い部分で最適だったんです。さらにパン屋さんの特色として、個人店は職人さんが一つひとつ手作りをして、自ら販売することが多いんです。その分、売れ残ったら自ら廃棄しないとならないので、精神的につらい部分だというお話を多数聞いて、なんとかしたいと、斉藤は感じたようです。

家庭料理でも捨ててしまう瞬間は悲しいものですが、材料や品質にこだわって作り、商品としてお金に代わるものを捨ててしまうことは、お店の経営者であり職人であるパン屋さんにはとても負担なことなんです。

mySDG編集部:ロスパンとして発生してしまう量というのはどれくらいなのですか?

水戸部さん:全体的に10%くらいですが、天候や日によって変わるので、天候の悪い日は半分くらい残ってしまうこともあるようです。お客さんの入り方も日によって変動があるのでロスの具合はまちまちになります。

mySDG編集部:パン屋さんも天候をみて、作る量をコントロールしているとは思いますが、ロスゼロは難しいですよね。

水戸部さん:そうですね。それに、パン屋さんに話を聞くと実は沢山作りたいとおっしゃるんです。作りたい量がそれぞれあって、量の制限はしたくないらしいんです。作る量を減らしても手間はそれほど変わらないのと、一度に多く作った方がおいしくなるそうなんです。お料理でも少なく作るより多く作った方がおいしいですしね。
店頭に並ぶパンが少ないのもよくなくて、お客さんが来店したときに目的の商品のみしか購入いただけない。色々な種類のパンが並んでいるのを見て、おいしそうだから買うという経験が皆さまあると思いますが、陳列していないと買っていただけないですからね。
※参考マガジン


■「社会貢献」+「安心してロスパンが購入できる」=「rebake(リベイク)」

mySDG編集部:努力して作られたけれども、余ってしまったパンを違う形で販売できるようにしたのが、「rebake(以下、リベイク)」になるんですね。どういったプラットフォームなのですか?

水戸部さん:まずはパン屋さんに、リベイクに登録をしていただいて、画面上で売り出していきます。パンはセット販売にしていて、お客様には事前予約をしていただきます。待ち人数が表示されていまして、ロスパンが出たら予約順にお送りします。ロスパンが発生する際にお送りするので届く日にちの指定はできません。

mySDG編集部:価格はどのように設定しているのでしょうか?

水戸部さん:内容量と価格のバランスは事前に決めて、店頭よりも2〜3割お安く提供できるように設定させていただいています。S、M、Lとありまして、Mサイズだと10〜12個くらい、Lサイズだと20個以上入っている詰め合わせになっています。パンの種類がかぶらないように、なるべく工夫をしていれてくださっています。

mySDG編集部:パンを発送するタイミングはいつになるんでしょうか?

水戸部さん:業態にもよりますが、個人店などの小さなお店は閉店後や、閉店の1〜2時間前にロスと判断をしています。ロスが出たタイミングで冷凍し、その翌日に箱に詰めるというパン屋さんが多いです。

解凍方法は、リベイクのサイトに冷凍パンの上手な解凍、焼き直し方をマガジンに掲載していますし、配送する箱に印字してあるURLからもご覧いただけます。パン屋さん独自の解凍・焼き直し方法をお客様に伝えたいという場合、パンと一緒にご案内を入れています。

mySDG編集部:冷凍なら全国配送できますから、町の小さなパン屋さんも、リベイクによって、全国に知っていただけるパン屋さんになりますね。
現在登録店舗はどれくらいあるのですか?

水戸部さん:1200店舗です。(※2022年12月現在)北海道から沖縄まで日本各地のパン屋さんにご参加いただいてます。個人店の小さなお店が多いのですが、「初めて沖縄に送りました」とか「47都道府県全部に送りました」などパン屋さんから喜びのメッセージをいただきます。遠方のお客様にご購入いただけることも楽しみにしていらっしゃいますね。

mySDG編集部:ロスの削減はもちろん、新しいお客様との出会いの場にもなっていますね!

水戸部さん:はい。リベイク上でパンを注文してくれたお客様とメッセージのやり取りもできます。お客様はマイページ、パン屋さんは受注管理画面からやり取りが可能ですので、発送する前段階でもやり取りができますし、購入後お客様から感想も送れます。直接のコミュニケーションが可能なのもリベイクの特徴です。パン屋さんの紹介ページでは、外観写真やご主人のお顔など掲載しているお店もあります。

パンについても、タグ検索機能を使って頂ければ、天然酵母、国産小麦、有機小麦、マーガリン不使用などの検索ができます。ヴィーガンの方やグルテンフリーを希望される方、アレルギーをお持ちの方などにもご購入いただけるように、なるべく購入前から使っている材料がわかるように表示しています。

mySDG編集部:お店とパンの情報がたくさんあると、安心ですね。パン好きの方は、あちこちから取り寄せたくなりますね。

水戸部さん:旅の目的地にパン屋さんを入れるようなパン好きの方は、コロナ禍で旅行ができなかった分、リベイクでお取り寄せをして楽しんでくださっています。

やむをえない理由で余ってしまったパン

mySDG編集部:ちなみに、小麦高騰と円安の影響はありますか?

水戸部さん:影響は受けています。小麦の値段が上がるとパンの値段も上げざる負えないので、ロスパンの価格も正規の商品価格に応じて値上げしていただいています。
パンの原材料の高騰は小麦だけではなくて、ドライフルーツやナッツなども輸入で価格も上がっています。惣菜パンのようにお肉を焼いて入れていたり、クリーム、牛乳なども使っていたりすると、全部の材料価格が上がっているので値上げは仕方がないですね。その値上げの中で作ったパンなので今は特に廃棄するのは苦痛になると思います。

リベイクには色々なパン屋さんがあるのですが、特に材料にこだわりを持つお店もあって、有機小麦、有機フルーツやナッツを使っているとか、米粉を使っているお店です。有機栽培の原材料の価格は元々高めなのですが、米粉も国内産ですが高騰しています。

光熱費の値上がりも、パンの袋などの資材の値上がりもあります。消費者の気が付かないところにも影響があるので本当にすべて値上がりしています。おそらく、上がっていないのはパン屋さん、ご自分の人件費だけですね。

mySDG編集部:お話を聞いていると本当にパン屋さんのご苦労が伝わります。やはりロスにはご協力したいですね。
※参考プレスリリース


■人の幸せを目指す「合同会社クアッガ」 SDGs流行が後押しとなる


合同会社クアッガ  ロゴ

mySDG編集部:運営をしていく中で困難だったことや難しかったことはあったでしょうか?

水戸部さん:「パンを冷凍しておいしいの?」という質問がよくありました。普段は焼くことが専門のパン屋さんに、冷凍してもおいしく食べられることを伝えることが課題でした。それから、サービスを開始した2018年は、今ほどに「フードロス」が一般的な認識には至っていなかったこともあり「ロスを出していることを知られたくない」とパン屋さんからいわれました。「ロス=売れていない」と思われてしまう懸念があったようです。

近年はSDGsを耳にする機会が増え、フードロスの概念も一般化してきたので、気軽に「参加してみよう」と言ってくださるパン屋さんが増えました。リベイクをどこかで見つけて、パン屋さんの方からお声かけくださることもあります。ご賛同いただくハードルは下がったと思います。

mySDG編集部:ちなみに、社名の「クアッガ」の由来はなんでしょう?ロゴマークも変わっていますね。

水戸部さん:ロゴのイラストは実在した動物の名前で、クアッガという絶滅してしまったシマウマのような動物です。社名の由来は、「絶滅する動物をなくそう」という意味で、実際絶滅してしまった動物のクアッガをモチーフにしました。生き物は、環境を守っていくことで絶滅から守れると思います。リベイクも環境保護に関与したいと考えているので、現在寄付活動と子どもの支援もしています。

mySDG編集部:寄付や支援はどういった団体にしているのでしょうか?

水戸部さん知床財団に寄付をしています。寄付活動は、生態系保護を学んでいた代表の強い意向でもあります。将来、飢餓をなくすためにも環境保全を続けていかなければならないですし、将来も人々が幸せな暮らしをするには、自然環境を守りながら、フードロスなどの取り組みをしつつ、サステナブルな経済活動をすることが大切です。
子どもたちへの支援は、社会福祉法人共生会 希望の家(児童養護施設)と中野区の子ども食堂さんに、月に一度ロスパンのお届けをする「誰かのためのrebake」活動をしています。ロスパンの存在を子どもの頃から知ってもらい、将来、食べ物を大切にしたり、食品ロスを出さないようにしたりする意識の芽生えにつなげてほしいと考えて、お子さんにパンをお送りしています。


■リベイクユーザーと共有する成果「パン廃棄 削減500t」

mySDG編集部:パン廃棄削減500tを超えたという素晴らしい成果は、ユーザーの方にも知っていただきたいですね。

水戸部さん:はい。500tの小麦をロスパンとして廃棄すると、100万平米の広さで作られた小麦を捨てることになり、それらをロスパンとして購入いただくことで、100万平米の小麦畑を救うことになります。リベイクのユーザーさんには、ロスパン削減量を知っていただくために、ご自身の購入量と救われた小麦畑の広さのグラフをマイページに表示しています。パンの購入がどれくらいの成果につながるかを、実感いただけるのではないかと思います。

mySDG編集部:今後の展望を教えてください。

水戸部さん:日本全国のパン屋さんは1万店舗ほどあるので、まだまだ多くのパン屋さんにご参加いただいて、ロスパン削減を加速していきたいです。
それと、パンマルシェなどのイベントに参加して、リベイクを使っているユーザーさんにお会いしたいと思っています。

mySDG編集部:イベントではロスパンを販売するのですか?

水戸部さん:ロスパンを販売することもあれば、登録店舗さんにイベント用にパンを焼いてもらうこともあります。春と秋は気候が良いので、野外イベントのパンマルシェが多い季節なんです。登録店舗のパンの販売を通じて、ユーザーさんの実際のお声をお聞きしたいですね。

mySDG編集部:最後にアピールしたいことはありますか?

水戸部さん:来月はクリスマスなので、シュトーレンの販売をしています。どのお店も、年に一度のイベントなので渾身の一作として、力を入れて作っています。シュトーレンのみで販売のお店や、シュトーレンとパン、焼き菓子などのセットで販売するお店もあります。ユーザーの方にもリベイクでクリスマスを楽しんでほしいと思います。


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