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【取材記事】メンターと伴走するAO入試 大学受験を通しグローバル社会に適応する非認知能力を育む

日本でもグローバル教育が重要視されている昨今、留学や語学など学ぶ選択肢が多くなっています。そのような中、非認知能力の向上を高める教育を行う「ONLINE AO」は、一般入試を目標とせず、学ぶ人が自らのキャリア形成まで明確になるAO入試対策に特化しています。地域差による教育格差の解消にも務め、あらゆる場所から学べるオンライン教育を確立し、新たな課題を解消するためオフラインの教育を取り入れた「EQAO」塾をリスタートしました。今回は起業の経緯や教育方針についてGlobalSIGHT合同会社代表の玉村ナオ様にお話を伺いました。

【お話を伺った方】

玉村ナオ様
GlobalSIGHT合同会社代表
高校時代にAO入試(推薦入試)を利用し大学受験に挑むも惨敗、その数5校。そこからAO入試の研究と戦略を立て直し、AO入試の攻略法を発見。再度受験に挑戦し難関大学3校に合格。
この必勝法を全国の高校生に伝えたいという想いから
【(現)完全オンライン個別型総合選抜入試専門塾ONLINE AO】を18歳で創業。
上智大学他、難関私大合格に塾生を導き、現在も実績を積み上げ続けている。


■非認知能力の向上を目指す、塾っぽくない塾「EQAO」

mySDG編集部:塾っぽくない塾 EQAO(エカオ)開塾の経緯から教えてください。

玉村さん:EQAOの前身になる「ONLINE AO」(オンラインAO)塾の起業の話からになります。
僕が起業したのは大学1年生の時です。自分自身がAO入試を利用して大学受験をした際に苦戦と成功を経験したことが起業のきっかけになります。「合格する方法」と「不合格になる要因」をこの時に学び、それを多くの人に届けたいと18歳になった2020年に起業することにしました。

しかし、その頃はコロナの真っ只中。地方では塾に通えない学生が問題になっていました。そこで、特に塾の少ない地方学生に向けたサービスをしようと模索していた時、ちょうどオンライン会議システムが広がりはじめ、オンラインという方法でAO対策をする教育サービスをスタートすることになりました。

mySDG編集部:ONLINE AOは今年で何年目なのですか?

玉村さん:今年で3期生を迎えています。しかし、3年間の間に非認知能力の部分がオンラインのみでは補いきれないと感じてきたんです。

mySDG編集部:IQや学力テストなどの知能検査で図れる能力を「認知能力」と言いますが、非認知能力とはどういったものなのでしょうか?

玉村さん:非認知能力とは、主体性や行動力、粘り強さやコミュニケーション能力などの数値では図れない能力のことです。

EQAOはオンラインとオフライン両方を取り入れたハイブリッドにしました。オンラインでは補いきれなかった非認知能力の部分を手厚くした塾なんです。非認知能力を育成し、その後のキャリア教育へつなげていくことが大事なので、それを実現するためにEQAOを立ち上げました。

mySDG編集部:非認知能力を育成する方法とはどんなことでしょうか?

玉村さん:一番有効なのは、塾生同士のディスカッション交流です。オンラインだと少人数でも通信の状況で待ち時間が発生したり、発言が同時になってしまったりします。
それが10人の交流になると全くかみ合わず、参加している塾生の集中力が欠けてしまう。集中力を保つため、ディスカッション交流は対面が一番効果的なのではないかとオフラインでやろうと決めたんです。

mySDG編集部:ディスカッション交流が非認知能力の向上に有効なのですね。

■AO入試対策に特化した「ONLINE AO」その理由とは?

mySDG編集部:EQAOの前進「ONLINE AO」を起業された時、AO入試に特化したのはなぜだったのでしょうか?

玉村さん:一般入試の試験方法に疑問を持ったことがAO入試に特化したきっかけです。

一般入試は因数分解や古典などの問題がありますが、そうした知識が一般の社会生活で本当に必要なのか?という疑問でした。
もちろん不要ではないですし、知ることで研究者や学者を目指す人もいるので学ぶことが無効とは思いません。

ただ、優先順位として、人間力の基盤である非認知能力を高めてから、次にIQを積極的に高めていくという方が好ましいと感じます。
現在の学校教育も一般入試も、合格をゴールに設定していて、テストの点で評価されます。「果たしてそれが本当に個人の能力を測れる方法なのか?」という疑問が拭えません。
反面、AO入試では人間力を表現し、課外活動、意欲や目標、大学生活も含めた卒業計画などを論文にします。すると自らのキャリアが鮮明になり、自分のやりたいことを明確にできます。

学ぶ目標を合格の先に設定し、非認知能力を存分に発揮したうえで大学に合格することがとても重要と考えて、AO入試に特化すべきだと、1択でしたね。

mySDG編集部:具体的にはどんな指導を行うのですか?

玉村さん:僕らの理念は「すきを見つけて、好きを伸ばす」。個性のある人を育てるという理念で、いいところをガンガン伸ばす教育をします。苦手な分野は克服しようとしても限界があるのでやらないのが基本的な方針です。

授業の中ではカウンセリング形式で1対1で対話します。ディスカッションのように進めて煮詰めていき、論文に仕上げていくんです。

mySDG編集部:一般の塾のイメージとは随分違いますね。

玉村さん:そうですね。小論文はお題に対しての文章の採点はありますが、テストの採点のようなことはしません。入学志望や学習計画など、伝わるような文章になっているかをみるんです。入社時のエントリーシートに似ていますね。

mySDG編集部:個性のある人を育てるという理念が、グローバル人材の育成と教育内容が近い部分を感じるのですが、海外へ向けた人材教育のお考えはありますか?

玉村さん:基本的に留学事業を考えていますが、既存の選択肢が充実しているので、僕らは少し角度を変えて「成功する留学」を考えています。

どういうことかというと、留学を1年間経験し、得られた結果の差は人によって違います。その原因は何かというと、基盤にある非認知能力の差ではないかと。留学の目的を成功させるために、まず非認知能力を高める。そうすると留学の内容が格段に良くなる。

言語は、母国語を超えないと言われていますから、まずは日本語でのコミュニケーション、ディスカッションの経験をしっかり積んでから海外に出る。この順序で能力を身に着けていくと留学体験の質が上がります。

このような非認知能力を中心に考えた留学事業を後の事業として考えています。

■メンバーに支えられ、国内外で教育格差を埋めた3年間

mySDG編集部:玉村さん自ら18歳で起業されていますが、一般的に18歳のときにはアイデアを思いついたり、起業する意思があっても自分1人では方法がわからずに行動に移せない人が多いと思います。玉村さんの周辺に助言していただける人はいたのですか?

玉村さん:いえ、そもそも人に聞くという選択肢も考えつかなかったですね。
実は、起業する時は口座残高は38円からスタートしたんです。お金をかけずに試行錯誤しながらオンライン塾を進めました。とにかく自分でやってしまえ!と、本当に少しずつ前進しました。
間違えたことや効率の悪いやり方も沢山しました。上手くいかないことの連続からスタートしましたよ。

mySDG編集部:風向きが変わるターニングポイントはどこだったんですか?

玉村さん:今のメンバーの堀内梨々花さんと秋元秀磨くん、この副塾長の2人の教育愛が僕の後押しをしてくれました。
例えば今の理念である「好きを見つけて、好きを伸ばす」は堀内さんの案です。ある程度までは一人でやることは可能なのですが、その先は周囲の助けや後押しが必要だと痛感しました。

それから、理念が一致する仲間が現れたことで、より頑張れるようになり、自分自身の意識にも変化がうまれましたし、塾生さんも増え、ターニングポイントだったと思いますね。

mySDG編集部:塾生さんはどこにお住まいの方が多いのですか?

玉村さん:国内では北海道から沖縄までさまざまなところから集まっています。一都三県の関東地区は多いですが、長野、新潟、群馬、兵庫、大阪、広島、淡路島など。海外からもフィジー、オーストラリアなどから塾生になってくれています。

mySDG編集部:海外からAO入試を目指すのですか?

玉村さん:はい。現在は海外留学中で、日本の大学受験を考えているのでオンラインで対策できるところを探している人ですね。

mySDG編集部:なるほど。国内では各地に塾生がいらっしゃいますが、地域差による学習格差は大きいのですか?

玉村さん:そうですね。地方ではAOの塾の情報も数も少ないんです。先日、新潟の塾生で合格した子から聞いた話ですが、その子の学校の中では公募推薦AO入試で行ったのがたった1人だけだったらしいんですね。

東京都だったら当たり前のAO入試なので、1クラス3、40人は当たり前の感覚ですが、新潟では学校で1人。そうなると学校の先生もAO受験を進められない。合格者が極端に少ないので、学校側も認知度が低い試験方法になってしまっています。地方ではこのような状態で滞っています。

mySDG編集部:想像以上に格差がありますね。

玉村さん:可視化されてないだけだと思います。格差があることすらも、認知されていないのではないでしょうか。

mySDG編集部:大きな問題ですよね。本来であれば、どの地域に住んでいようとも個人の才能を開花できる環境を整えることが必要ですからね。

■日本教育のゴールとプロセスを変え、個人の能力を評価する教育に

mySDG編集部:玉村さんは、日本教育を変えたいとお考えのようですが、最も変えたい部分を教えていただいても宜しいですか?

玉村さん:変えたい部分は一般入試。一般入試で合格するというゴール設定がある限り、小学校から高校までの教育の内容は変わりませんし、学校の先生の指導方針も変わりません。テストと模試の連続です。

とは言っても、急激な変更や完全撤廃は難しいと思うんですね。現実的にシフトチェンジ可能だとすれば、一般入試枠を減らし、EQ、非認知能力が求められる入試形態を増やす。

学部別に試験の方法を変えてもいいと思います。理経系や医学部系など知識が重要な学部はテストで評価をし、そうでない学部はEQ、非認知能力を重視する試験方法にするなどです。
今の合格ありきのゴール設定を変えて、学んでいくプロセスを変えたいです。

mySDG編集部:塾生皆さんの合格率はいかがですか?

玉村さん:今季の発表は冬以降なんですが、昨年までの合格率はいいですね。入試2ヶ月前に入塾して上智大学に受かった子もいるんですよ。毎日2時間の指導を60日間行いました。2ヶ月で受かることも珍しくないんです。

mySDG編集部:しかし、玉村さんは大学1年で起業して高校時代から教育関連の経験があるわけでもない中で、なぜ生徒さんを成功に導けるようになったんでしょう?

玉村さん:高校時代の受験の経験があるからですね。多くの大学を受験したんです。5校程受けました。その時大きな挫折もあって。落ちるとこまで落ちたという感覚を経験しました。

それがとても悔しくて、学校生活を全てつぎ込むほどの時間をかけてAO入試の情報を収集、分析をして改めて難関校3校を受験し、合格をしたんです。その時の経験と知識が大きいですね。

指導面としては基本的に相手の気持ちを理解することに勤めています。
威圧的な先生は誰も好まないですよね。共感して、理解してあげられることこそが信頼と学びの基盤になるので、教育という感覚よりも、「一緒に学んでいく」伴走者のようなイメージです。
僕らは「講師」とは言わず「チューター」「メンター」のような存在として、教えることがメインではなく、自ら学びたくなるようにガイドする立場をとっているんです。

mySDG編集部:今後は新しい教育インフラとして、日本の中でどんな存在になっていきたいですか?

玉村さん:肩書きとして教育のエバンジェリストになりたいですね。僕が20歳の今、非認知能力の重要性はまだ十分に一般的とは言えないですが、60歳になるころには当たり前に求められている能力になっていると思います。
その時代を目指して教育研究現場や学校などでインフルエンスできたらいいと思います。

今後も非認知能力を伸ばす教育を続けていれば、次の世代もついてきやすい。目標は30〜40年後。日本教育でも、個性を表現することが評価基準となるよう、教育の変化に尽力していきたいと思います。

mySDG編集部:ちなみにSDGsの目標年である2030年には、非認知能力を重視する空気感はどれくらいになっていると思いますか?

玉村さん:僕ら次第じゃないですかね。僕らが大いに主張することで、若い世代の声、注目度の高い塾の声が注目される。ただ、まだその議論に火がついてないと思うんですね。ですから、僕らがもっと注目度を上げて主張することが大事ですね。

塾っぽくない塾 EQAO(エカオ)東京都港区浜松町教室

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