見出し画像

【取材記事】大量生産・大量廃棄を止める第一歩。リユース梱包材の循環型サービス「stible(スティブル)」始動!

88Base株式会社は、リユース梱包材「stible(スティブル)」事業を2022年11月に開始したスタートアップ企業です。ゼロ・ウェイストに取り組み、配送時にごみを出さない梱包材を販売しています。梱包材stibleを起点としたコミュニティや、サステナブルな社会に貢献できる仕組みを構築する。企業と消費者が「共創」し、社会課題への取り組みを後押しをしています。本日は代表の望月様に、創業のきっかけやサービスへの思い、今後の展望などを伺いました。

【お話を伺った方】

望月 大(もちづき まさる)様
88Base株式会社 代表
山梨県南アルプス市出身。1993年生まれ。 大学卒業後飲食店勤務、
その後フィリピンへ語学留学へ行き帰国後に梱包材に着目。
リユース梱包材の循環型サービスstibleを運営する88Base株式会社を起業。


■リユース梱包材循環型サービス「stible(スティブル)」


mySDG編集部:リユース梱包材サービス「stible(スティブル)」を始めるきっかけを教えてください。

望月さん:大学生の頃、海外へ出たいという気持ちから、フィリピンのセブ島に行ったときのことです。まだつたない英語力だった僕は、当時日本で流行っていたセブ島に留学することにしました。そのセブ島の街で見た光景に衝撃を受けてしまったんです。

セブ島では、子どもたちが裸足や裸に近い状態で生活していて、観光客に物乞いをしている子も多くいました。いわゆるストリートチルドレンです。子どもだけではなく、その親も貧しいわが子を抱いてお金を求めてきました。

当時はSDGsやサステナブルなどに特別関心を持っていませんでしたが、その光景を見て、日本人として何かできることはないのかと考えたんです。
そして考えついたことが、社会課題に取り組めるビジネスをつくり、収益を還元し、利益の循環ができる会社をつくることでした。

帰国後、社会課題を学び直したところ、貧困問題や食料危機、環境問題は全て関連していて、個別の問題ではないことを知りました。

自分にできることで、日本では未だ存在しない領域はどこなのかと考えを巡らせていたとき、マンションのゴミステーションに積まれた大量の段ボールが目に入りました。その時「一度使用した段ボールを1度で捨てず、何度も使えたらいい」と思い、リユース梱包材ビジネスを始めるきっかけとなったんです。

mySDG編集部:貧困問題をきっかけにして、なぜ梱包材で起業しようと思ったのですか?

望月さん:まずは、自分の身近なところの問題解決をしていくことが大事だと考えたからです。自分ができることから始めることが、数々の社会課題の解決につながると思うからです。

mySDG編集部:「stible」という名前にはどんな意味があるのですか?

望月さん:長く使うことが当たり前になり、リサイクル・リユースが当たり前になって欲しいという気持ちから、stible=still usable「まだ、使える。」という名前にしました。

mySDG編集部:なるほど。リユースサービスにはいい名前ですね。日本では馴染みがないものですが、海外では一般的なのでしょうか?

望月さん:梱包材に注目をした後、海外の配送梱包材を調べました。すると、環境への負担軽減目的でアメリカやヨーロッパ中心にリユース梱包材の会社があり、徐々に主流になってきていることを知りました。そして現地リサーチの上、日本でスタートさせました。


リユース型梱包材「stible」

mySDG編集部:stibleのサービスを詳しく教えていただけますか?

望月さん:2022年11月7日にスタートしたばかりのサービスで、現在はテスト配送もしながら2社様にご利用いただいている段階です。今年の2月頃には10社程度になる予定です。

stibleの用途としては、シンプルに段ボールの代替品になります。現在の配送フローは、ブランドさんが自社段ボールに商品を詰めて発送し、購入した方は商品を取り出し、段ボールは回収日まで待ってから捨てます。

stibleの場合は、商品の発送後、購入した方がstibleを折りたたんでポストに投函します。
折りたたみ可能な梱包材になっていて、たたむと弊社の宛先が出てきます。stibleが弊社に到着したら、クリーニング後、購入いただいたブランドさんに再度納品します。

mySDG編集部:使用済みの梱包材を家にため込まなくてよいので、すっきり片付けられますね。何回くらい使い続けられるのですか?

望月さん:再生利用回数は20回以上です。本体に保冷保温機能は備わっていませんが、冷蔵便、冷凍便での配送が可能です。20回の配送で、段ボールを使用した場合と、stibleを再生利用した場合と比べると、63.5%のCO2削減量になります。

リユース梱包材を使うことで、CO2削減、配送の場面でのごみ問題、大量生産・大量消費のサイクルにストップをかけることができるんです。
世の中の流れも価格や利便性のみではなく、環境保護を含めた選択が注目されていることもあるので、これからリユース梱包材の注目度も上がってくると思っています。



■「つながり」が生まれるサービスだからこそ、コミュニティを創出できる

「stible」サービスフローから生まれるコミュニティ

mySDG編集部:リユース梱包材はメリットが多いと感じましたが、stibleに課題などはあるのでしょうか。

望月さん:まず、返却率の向上です。消費者の方からご返却いただくことで、仕組みが成り立つサービスです。我々のビジョンでは『共創し共感し共有する社会を創る』としています。ご返却いただくことで、コミュニケーションが生まれ、stibleが広まることによってカルチャーになり「共創」が可能になると思っています。

次に、価格面のデメリットをクリアすることです。郵送で梱包材を返却するので、定形外郵便の料金が発生してしまいます。そのため料金を適正価格にするための交渉活動と段ボールと比べて割高な部分をご理解いただくためにも、stibleのブランド力や付加価値をいかに高め、どのように広めていくかが最大の課題になっています。

mySDG編集部:返却すると、ポイントが付与されるのですか?

望月さん:そうですね。ご返却いただくと、デジタルギフトでポイント又は寄付をお選びいただけます。

mySDG編集部:寄付活動も仕組みの中に含まれているんですね。

望月さん:消費者の方が選択された分の寄付金を四半期に一度、既定の団体に寄付させていただいております。
我々は日本で運営していますので、国内で人権問題に取り組まれている認定NPO法人フローレンスさんと、環境問題に取り組まれているWWF JAPANさんに寄付させていただいております。今後は動物保護や森林保護、海洋保護などに広げていきたいと思っています。

今までなら当然のように捨てていた梱包材をstibleに変えることで、消費者も巻き込みながら、社会貢献することが可能になります。

mySDG編集部:消費者も含めたコミュニティということでしょうか?

望月さん:そうですね。stibleを返却することでコミュニケーションが生まれ、デジタルギフトで寄付を選ぶことで、一つのつながりが生まれます。stibleを利用するブランド同士の横のシナジーも生まれ、stibleに関わる全ての人が一つのコミュニティになれる。

「つながる」ことで成り立つサービスだからこそ、コミュニティが創出できる。これは段ボールにはない部分ですね。


■大量生産・大量消費にストップをかける、小さな一歩「stible」

mySDG編集部:先ほどCO2削減量のお話もありましたが、SDGsの観点から広まってほしい活動や成果はありますでしょうか?

望月さん:stibleそのものが社会課題に対する活動です。その中でCO2削減量の成果はわかりやすいのですが、どちらかと言うと「大量生産・大量消費」「1回使っただけで捨てる」という現在の世の中に「もう一度使える」「まだ使える」ものが眠っていることに気付いてほしいと思っています。

実は、SDGsやエシカル、サステナブルなどの言葉を前面に出さないように取り組めていけたらと思っているんです。

mySDG編集部:それは、なぜですか?

望月さん:日本ではSDGsやサステナブル、エシカルという社会課題に取り組む意味の言葉が広まってきた一方、多くの方が独特の思想と拒否感を持っているように思います。

本来、社会貢献は自然と皆さんに浸透していくことが好ましいですが、拒否感を持った大多数の方々に、本来の意味を伝えることは難しい。ならばエシカル思想の方々とだけ共存すればいいのかというと、それでは環境問題や貧困問題を改善するという、本当の意味でのエシカルにはならないと思います。

社会課題は多くの方々が取り組むからこそ解決できるものではないでしょうか。我々は、多くの方々に届くサービスをつくり、ご利用いただくことで、社会課題の解決に近づけると思っています。本質的にサービスを向上させ、言葉ではなく行動でstibleを広めたいと考えております。

弊社のミッションにある『「+1」を創り出す』にあるように、どれだけ小さくても動き出すこと、一人でも1歩を踏み出すことが大事で、隣に踏み出した人がいれば協力をする。こうしたことが「+1」になると思います。そして我々が踏み出した「+1」の1つがstibleです。
リユース梱包材を、どのようにカルチャーとして形作り、多くの人に選択してもらうか、これも今後の課題でもあります。

mySDG編集部:今後の目標をお願いします。

望月さん:我々の本質である「大量生産・大量消費」からの脱却、という領域で運営していきます。
stible事業は段ボールの代替品という立場のリユース梱包材ですが、実際は共存が好ましい。可能であればリユース、必要な場合には段ボールなど、どちらを選ぶかはTPOだと思います。

結果的にごみを減らしていくことを目標とする「ゼロ・ウェイスト」で廃棄するものを減らしていく。梱包材領域を超えて消費されるものを減らしていきたいというところが我々の一番の目標です。stibleの収益が向上すれば森林活動や寄付先との提携など、地球環境に取り組める活動も行っていきたいと考えています。

mySDG編集部:「ごみを減らす」ことが最大の目的なんですね。

望月さん:ごみを減らせたらいいよね、という気持ちです。単純に街を見るだけでも、ゴミが捨てられていない方がカッコいいですよね。

ヨーロッパでは、サステナブルもビーガンも、ファッショナブルな印象があり、多くの人が消費活動の選ぶ基準にしています。理由の一端は、発信力のある著名人を含めライフスタイルで環境保全や社会課題などに取り組み、スマートに発信をしていることではないでしょうか。
「ごみを減らす」環境軸だけのアピールでは、このサービスは広がりにくいと思っているので、ファッショナブルな視点なども含め、多角的な視点で柔軟にこのサービスを構築していきたいと考えています。

mySDG編集部:最後に、未来のstibleコミュニティの皆様にメッセージをお願いします。

望月さん:価格やサービスの知名度など課題は沢山ありますが、各クライアントのバリューになっていけるように、さまざまな取り組みを行っていく予定です。企業の皆さま、消費者の皆さまと一緒に「大量生産・大量消費」を減らし、ごみを減らす活動を歩んでいきたいと思っていますので、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

mySDG編集部:本日は貴重なお話をありがとうございました!


この取り組みが参考になりましたら、ぜひいいね・シェア拡散で応援をお願いいたします🙌
mySDGへの取材依頼・お問い合わせは mysdg.media@bajji.life までお気軽にご連絡ください。


この記事が参加している募集

#SDGsへの向き合い方

14,837件

#仕事について話そう

110,977件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?