見出し画像

進撃を続ける世界中の巨”像”

『世界のすごい巨像』という本を読みました。

そのタイトルの通り、開明獣スフィンクスやオカルティックな人気も併せ持つモアイ、自由にレプリカが点在する自由の女神、日本で言えばみんな大好き茨城県牛久大仏といったものを含めた世界中の巨像群をこれでもかとピックアップしてくれています。最高に面白かったです。

iOS の画像 (35)

旅行ガイドブックの『地球の歩き方』から、こうした横断的なデータブックが出ることがまずカッコいいです。

Q.「Stay home」の最も対極にありそうな対義語は?
A.「Travel overseas」。

という設問があっても違和感のないほど、ステイホームが全世界に浸透した今、海外旅行なんてもってのほか、という認識をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。

旅行が憚られる、それはつまり、旅のしおりであるガイドブックの売れ行きが日陰に入るのもやむを得ないことです。左様な逆風下にありながら、旅行せずとも楽しめて、それでいてコロナ禍が落ち着いたら「ここに旅行してみたい!」と思わせてくれる本を作った地球の歩き方社の水平思考的展開には、尊敬の意を覚えずにはいられませんでした。こうした本が企画販売できるのは、過去に制作したガイドブックのデータの仕分けが行き届いている証であり、実直な企業努力の賜物です。

そのようなことを考えながら読み終えたのですが、ひとつ、竹谷の認識と異なることが書かれていました。

Q.今後、巨像は作られていくか否か?
A.無理ではと思います。

質疑応答の形式にするなら、上記のような感覚を竹谷は持っていました。

スフィンクス界隈でも特段有名な「ギザの大スフィンクス」は、紀元前2500年ごろ作られたと言われています。なぜかティッシュケースになったり名作ゲーム『塊魂』の王様に似ていたり、と独特な知名度を誇るイースター島のモアイは、7世紀から中世あたりのいつごろかしらでドコドコ立てられたようです。むかしむかしあるところに、の域です。

奈良や鎌倉の大仏を実際に見ても、王政や宗教といった強い権力ないし権威があってこそ建造され得た、という風に考えていました。もう少し言うなら、自由や平等、科学などの概念が未発達な状況下ゆえに成し遂げられたことで、現在においては、奮起した獣人のしっぽよろしく巨像をおっ立てようなどという望遠な計画は出てこないのではないか、と。

ところが。

世界最大の巨像が作られたのは、2018年でした。

その身長は182メートル、台も入れれば240メートルに達するインドの「統一の像(Statue of Unity)」です。遠近感の狂いそうな景色、ぜひ画像や動画をご覧ください。

その物理的な大きさも起因してか、統一の像は大きな関心を惹き、パキスタン等のイスラム国に対するヒンドゥーかつナショナリズム的な意思表示の是非や、日本円換算でおよそ458億円にも上った製作費等、大小さまざまな問題を孕んだようです。

反対に、4年の製作期間に渡り雇用を生んだことや、新たな観光名所となり得る可能性もプラス面としてはあるようです。ほかには、「巨大な像が立てられたことはインドの技術力の結晶である」とドヤれるのもひとつの見方でしょう。いにしえのゲーム雑誌にインスパイアされた表現をするなら、”インド人の右に”出る巨像は現在なく、それは結果だけを見れば、インドを越える巨像建築技術を有した国はいない、と言えます。

そうなのです。「巨像が立った!」と少女ハイジをして言わしむるに必要なのは、霊峰アルプスや権力でなく高度な建築技術であり、つまり、テクノロジーが進歩すればするほど、巨像の高さの理論値は更新されていくのです。

あとに残るは、大体のビジネスや人生と同様、情熱とお金です。

簡単ではないことですが、そこがうまく進めば、箱根にエヴァンゲリオンや使徒を立てたり、大分県日田市の山間に、エレンたちやリヴァイのみならず、『進撃の巨人』の巨人像を乱立させることもできるわけです。

それこそ、淡路島では実物大のゴジラができたように。

そうして今から数千年後。愚かな人類が滅亡して別の種族が地球の覇権を取ったのち、はるか深い地層から煤けた巨像の欠片がたくさん出土し、「昔はこんな巨大な生物がいたのか」と推測される未来。

想像すると、なんだかトキメキませんか。

――――――――――

せんもじ雑記とは:
書くといつも長文になってしまうのをなんとかするべく、1000文字を目処にエッセイのようなものを書こうとする試みです。「せんべろ」から感触をお借りしました。

画像1

▽株式会社ミリアッシュはイラスト・ゲームイラスト制作会社です▽

▼最近eスポーツ会社DEPORTARを立ち上げました▼


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?