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不自由さを手に入れるために人間関係を手に入れる【読書記録】「水たまりで息をする」高瀬隼子 (著)

おはようございます。にんにちは。こんばんは。
今日紹介する人生をラクにする1冊は高瀬隼子さんの「水たまりで息をする」です。

高瀬さんの芥川賞受賞作「おいしいごはんが食べられますように」がとてもおもしろかった。一気にファンになってしまったので1コ前のこちらの1冊も読んでみました。

結論から言うとこっちの方が面白かった♪
おいしいごはんが食べられますようにを読んだ人にはこちらもぜひ読んでほしいと思い、今回この記事を書きました。

このnoteでは、読んだ本の感想を中心に読書に関する記事を発信しています。ぐちゃぐちゃになった頭の中を読書で整理してみると、それだけで人生がラクになる。人生をラクにする1冊を紹介するnoteです。

<こんな人にオススメの1冊>
・人間関係に悩んでいる
・ビジネス本、自己啓発本には飽きた
・「芥川賞ノミネート作品て難しそう」って思っている←この本めっちゃ読みやすい!

もう風呂には入らない

『風呂には、入らないことにした』

これは旦那が風呂に入らなくなった夫婦の物語。1週間、1ヶ月、半年経っても夫は風呂には入らない。たぶん夫は2度と風呂には入らない。

風呂に入らないことの何が問題かというと、それは「匂い」。
夫の母親からは「なんでそんなことになったの?」と電話がかかってきて、夫のその匂いは会社で、通勤電車の中で、社会の中で大きな問題になっていく。

会社でのパワハラ、人間関係が希薄な都市生活、心の病。
周りからいろいろ言われるけど夫からは決定的な理由は聞かされない。
ただ風呂に入らないだけ。

風呂に入らなくなった夫に対して困惑、心配、共感していく話。

人への説明っているの?

そもそもなんでいちいち人に説明しないといけないのだろう?
風呂に入らない。ただそれだけ。それ以外は特になにもしていない。

そもそもなんで人がしていることがこんなにも気になるのだろう?
風呂に入らない。ただそれだけ。本人よりも周囲の方が大騒ぎをしている。

夫の腕についたゴミをとろうとしたらペリペリと剥がれた。ゴミではなく皮膚。雨水で頭を洗うと頭皮がズルっと剝ける。

それでも風呂に入らなくなった夫の方が清々しくて自由に見える。

狂っているのは夫の方なのか?私の方なのか?

自由を不自由にするための人間関係

人間はただただ行動しているだけ。

風呂に入らないというのもただ入りたくないから入らないだけ。
そこには自分で自分を動かすための意思も、他人に納得してもらうための理由も必要はない。

何をしても自由、どう生きても自由。

でも何をしていても、どう生きてもいても、誰からもなにも言われないと自由は無限に拡大していく。ひょっとしたら私達は自由を持て余しているのかもしれない。

その手に余る自由をほんの少し不自由にするためにあえて人間関係を持とうとしてるのかもしれない。

広すぎる大海原よりも小さい水たまりの方が息がしやすいのかもしれない。

そう思うと人生がラクになる。オススメの1冊です。

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