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『無門関』第四十四則 芭蕉柱杖

無門禅師の本則口語訳

芭蕉和尚が修行僧に言った。柱杖持っていたならば、柱杖を与えよう。

柱杖持っていなければ、あなたから柱杖を奪い去ろう。

説明

柱杖は身の丈程の杖であって雲水にとっては杖に使ったり獣除けとしても僧にとっては実用品であった。

それが何時ともなく禅修行上の仏性の象徴であり用具でもあった。

そこで杖は象徴であることに注意する必要があり、言葉に拘って解釈してはいけないのです。

そこで何の象徴であるかと言うのが問題になります。

何を与えるのか、奪うのかと言うことです。

人間の誰もがが持っているのは分別心という自我です。

そこで公案ですから分別心を奪うことになります。

といっても分別心や言葉がなくては現実には生きてゆけないと考えるかもしれません。

ところが禅では与えて奪う、奪って与えるということは常套手段であります。

例えば子供が補助車輪を付けて自転車を練習していたらその自転車から補助車輪を奪って練習をさせるようなものです。

人間が生きてゆくにはとても大切な言葉を奪うことも修行上はしばしば行います。

その典型が公案第四十三則首山竹箆と言ってもよいでしょう。

言葉では伝わらないことは沢山ありそのことを自覚させるのに言葉をうばうのです。

創意工夫とはそこから生まれるのではないでしょうか。

充分にある物、何不自由ないところに人間の工夫成長が生じるだろうか。

無門禅師の評語口語訳

壊れて橋の無い河を渡るのを助け、また月あかりの無い夜に村に帰るのをたすける。

これを柱杖と呼べば地獄に落ちること矢のごとし。

解説

壊れた橋を渡るには新たに橋を作らなければ成らないと言い。

月あかりの無い夜は現代であれば道路を整備して街灯を作る創意工夫が生まれるのです。

奪うことは創意工夫を促し助けるのです。

無門禅師の頌妙訳

全国何処にいる者も、

全て創意工夫の働きの中にいて、

天からの雨、地上の洪水をささえ、

何処に居ても創意工夫の恩恵にあずかる。

説明

「柱杖持っていたならば、柱杖を与えよう。」とは橋を作る能力のある人には資金協力をしようということです。

なをこれは私独自の考えであって絶対的真実でも無ければ公式正解でもないことを申し上げておきます。

参考引用
『公案実践的禅入門』秋月龍眠著 筑摩書房
『無門関』柴山全慶著 創元社
『碧巌録』大森曹玄著 柏樹社

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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