花のある場所 【小説 #08】
※最後まで読んでいただけます。実質420字ほどです。
また、あの女になる時刻になった。
私は、化粧をする。
いつものことだから、要領は心得ている。
こういうのは、美的才能ではない。何か、きっと別のことだ。
心も変わる。
古くからの人は、夜の蝶と呼んだという。そういう存在へと。
演技者になるのではない。少しずつ、何かを忘れるのだ。
今の自分を、どこかに置いていく。
自分でない言葉を話すだろう。
自分ではない笑みを見せるだろう。
自分であって、自分ではない。そんな肌身に、何度も、彼らの無作法な手は触れようとする。
蝶であること。
誰も教えてはくれない。
自分ではないものを、自分で見つけるしかない。
また、お酒を飲む。
知っている。
何かが、遠くへ離れていく。
蝶だって、夢を見る。
でも、追いかけてはいけない。
きっと、見失ってしまう花だから。
夜だから。
夢の合間に思う。
普通の女のひとなら、誰もが自然に見つけるだろうことを。
きっと、こんなに戦いではないこと。
ありふれたこと。
平凡なこと。
無邪気な、私の顔。
太陽の下で、蜜を吸っている。
-終-
今回も読んでくださったことに感謝いたします。
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あとがき(反省する心を忘れない・・・)
これもまた、とても短く終わってしまうものとなりました。
この女性の思うところと具体的に絡んで説明できるようなエピソードめいた文脈を加味すれば、もう少し小説らしいものにはなるのかもしれません。
あるいはまた、たとえば化粧品関連の薀蓄を混ぜた心理描写とか、そういう何かを足すだけでも、ボリュームアップにはなるかもしれません。
しかし、それが私には難しい。難しい。
思いつきで書き出して、起承転結とか、AABA式とか、そういう形式性があるように見せかけ、オチとネタフリの配合を確認したら「これでいいかな」ということで「-終-」にしてしまう。
何より、長くしようとすると、今よりもっと自分の欠点が露骨に目立ってしまうようで不安なんですね。
いや、きっとそうなる・・・。
あと、何だか少し昭和っぽい感じもあるでしょうか? 雰囲気だけでなく、時代遅れで誤った描写があるかもしれません。
その点が心配です。
私は、時代に関係なく、そうしたお店で働くことを職業としていらっしゃる女性の何がどうだなどと書くつもりは全くありません。
私の書くものでは、その取り上げる人物像が多様となるように努めているのですが、誰もがみな悩んでいることに気づきました。
悩みも色々です。
むしろそこから、この女性の思いだけが特別に異質なものではないこと。その事実を理解していただけるのではないかとも思うのです。
最後に、念を押させてください。(もちろん、読み方は自由ですが・・・)
この人は女性です。
小説の目次はこちらです
https://note.mu/myoan/n/ncd375627c168
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