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しぬ、死を受け入れるってなにか考えた夜

昨晩21時頃
母から
「祖母が胸痛を訴えていて救急車で運ばれる、
病院が決まり次第来て欲しいと入所している老人ホームから電話があった」
と連絡があった。
そして緊急手術・入院となった。
平和な夜が突如、死の気配に包まれた。

*命を決める2択

私は一緒に行かなければならないと思った。
一番早く駆けつけれる位置にいたし、
無職だから何時まででも一緒にいられる。
母の不安を拭うことができる。
祖母が今話せる状態なのか、
胸の痛みとはどんなものなのか何もわからなかったし、病院に行ったら何をすべきなのか何一つわからない。
だけど母を助けるために、病院に向かった。

そうして私は母と2人で先生のお話を聞いた。
痛みの状態は「心筋梗塞」であること、
本人と会話はできるが、
かなり苦しがっていること、
そして今すぐ治療方針を決めねばならないことを説明してくださった。

①カテーテル手術する
成功したとしても年齢や持病を考えると
合併症のリスク、
手術中の急変など心配事はたくさんある。

うまくいけば即手術して痛みをなくせる。
手術するなら早ければ早い方がいい。

②薬で様子見する
手術した場合に起きるリスクを回避できるけど、
今のところ薬が効いてないから
苦しむ時間が長くなる。
薬でよくなる保証はない。
調整してる間に最悪の事態になる可能性あり。

どちらを選んでも「死の可能性」から逃れられない。母と2人でその場で決めるにはあまりにも重たい選択で、2人では決められなかった。

私たちはまず祖母の意志を聞き、
次に親族に電話で同意を得て手術をお願いした。

*苦しみながらも生きることを諦めない祖母

横たわる祖母を見た時、
「これが最期になってしまうかもしれない」と思った。
あまりにも苦しそうで、涙目で、弱っていた。
こんな状態で「薬で様子見してください」と私たちが言ってしまったら、それはすごく残酷なことだ。
いつまで続くかわからない痛みと苦しさに耐えろと宣告することになる。
祖母は2つの選択肢を聞いてすぐに
「やってみるしかない、手術をしたい。
もしダメでもそれはもう仕方ないこと。」
声はか細かったけれど、はっきりそう言った。

手術が終わると、
祖母はほっとした顔をしていた。
会話もできるし、
起きあがろうとする元気もあり、
手術前の弱々しさは消え去った。

*延命治療を希望するか

先生は私たちに画像を見せながら
どの血管がどうなっていて、
どういう処置をしたのか説明してくださり、
最後に「これで一安心だけど、心臓にかなりの負担がかかっているから急変する可能性はある
とおっしゃった。

そして祖母に
「もし、心臓が止まってしまったらどうしますか?」と延命治療の意志確認をした。

祖母の返答は早かった。
「心マや電気ショックで回復の可能性があるならもう少し生きたい、
意識がもう戻らない場合の延命処置は要らない」

私たち家族は全員、
祖母の意見を尊重することにした。

その後いろんな同意書や、入院の説明、手続きを終えて家に帰った。
いつのまにか外は明るかった。

*祖母のこれからの生きる道

祖母はもう4年近く自分で歩くことができず、
老人ホームで暮らしている
ちょうどコロナ禍と重なってほとんど家族に会うこともできず、外出もできず、だけどボケることはなく、単調な日常を生きてきた。

目が悪いので毎日の楽しみはラジオとご飯だけ。
家族がしてあげられることはほとんどない。

糖尿病でご飯には制限があるし、
長年住んでいた家に短時間でも帰してあげることさえできない。

だけど数日前、
祖母に希望を与えることができた。
彼を紹介し、年内に結婚する報告をしたのだ。

祖母は何年も見ていない明るい顔で、笑顔で、それはそれは嬉しそうに彼と話をしてくれた。
ずっと自分の不安を話すばかりだった祖母が
自分のこと、家族のことを語っていた。
私は最後に「絶対にウエディングドレス姿を見て」と伝え帰った。
たった2日前の話だ。

*私が希望になれていますように

私の結婚が決まったことを伝える前の祖母は
「あとはもう死に向かうだけ、祖父も愛犬たちも向こうで待ってる。だから日々をどうにかやり過ごすだけ」とこれからの時間に全く希望を持てていなかった。
今よりできないことが増えて、
頭もクリアでなくなってしまう、
抗えない老いと死への道を静かに受け止めていた。

その祖母が「もう少し生きたい」と言ってくれた。
目前に迫った私の結婚のためと
思ってくれてたらいいなって、
彼を紹介したことがその原動力になっていたらいいなと、思った。

祖母に孫は2人、
従妹はまだ大学生だから
「孫の結婚」という一大イベントを届けられるのは私しかいない。
小さい頃から祖父母にそれはそれは大切に愛情を注いでもらってきた。
恩返しする間もなく祖父は他界し、
祖母とは自由に会えなくなってしまった。

だから、
死がぐっと近づいてきた今、
わたしが、わたしが希望になれたなら。
本当に少しでも希望になれたなら。
そうなっていて欲しいと思う。

*人生を終える決意

大変な一晩を過ごした後も、
やっぱりまだ死ぬということがよくわからない。
祖母が生きられる時間はきっとあと数年。
いつか必ず「死」はやってくる。

祖母にはそれを迎える覚悟があって、
その上で「もう少し生きたい」と言ってくれた。

いつ、どんなふうに、何を思って覚悟を決めたのか。本当に死を目前にしたら何を思うのか。
やっぱりまだ生きていたいと思うのか、
自分の人生に満足して晴れやかに思うのか、
わからない。
ひとはしぬ、
みんなしぬ、
いつか絶対にしぬ。
わかるけど、わからない。

今は「もう2度と目を開けられないのに無理やり心臓を動かすだけの延命治療なんてしてほしくない」と思っているけれど、
その時が来たら私の考えも変わるかもしれない。

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