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№03【2分で読める】日々の暮らしにクスっとエッセイ『艶っと染まった生え際』

子どもが生まれ、ワタクシが乳飲み子を抱えている時期。

後ろ頭に手が届かないから? 
ダンナはだんだん自分で髪を染めなくなった。

ワタクシ、ぶっちゃけダンナどころではない。
日に日に白くなるダンナの髪の毛のことなど気にする余裕もなく、過ごしていた。

ところがある日、髪を切ってきたダンナをみて声を失った。

ついに白髪優勢の頭になってしまい、超焦るワタクシ。

「え? そんなに白かった?」

それは、まるでパンダ。
ちょっと前まで白髪ちょっぴりの、黒熊風の頭だったのに。いまや逆転、一部が黒いだけ。

ダンナはワタクシが知らないところで、苦労をしていたらしい。


すると予想に反して、ダンナがメッチャいい顏で、こう言った。

「それがさ~、最近若い子に、敬語を使われるようになったんだよね。ほら、俺って年齢不詳だから若見えするタイプでしょ? 」

キーッ!
ちょいちょい若見え自慢ありがとう。
ワタクシも年を暴露した瞬間、気持ちがいいほど驚かれてみたい。

「最近は、白髪のお陰で落ち着いて見えるのかな~。いやダンディ? ナメられなくて便利~」

と気に入っている様子。

うそーん。
白髪で得するって聞いたことない。
そんなレアケースある?
へ〜。

こうして、ダンナは髪を染めることが無くなり、今まで使っていた、毛染め剤はそのまま放置されることになった。


あれから数年。


最近、洗面台の収納棚の奥から、それを発見した。

「1回分残ってる」


そのまま捨てるのも、なんだかモッタイナイ。

ワタクシ、ダメもとでそれを使ってみた。


「何これ、今までで一番いい発色。すっごく若く見えるんですけど」

ダンナが使わなくなった毛染め剤が、時を超え、ワタクシの頭で大活躍。
艶っと染まった生え際が、眩しい。


「いいぞ、これ。どこかにタメ口をきいてくれる、30代は、いないかな」

鏡の中の自分が、静かに横に首を振っていた。

ちえっ。



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