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№32【2分で読める】日々の暮らしにクスっとエッセイ『完全に開きなおれた日』

ある日、いつもお酒やお菓子を買うお店に行った。

でも、お店の扉は固く閉ざされ、お店をぐるりと取り囲むガラス窓はシャッターが閉めきられたまま。

「あれ? なんか様子が変。あと2分で開店時間なのに」

よくよくみると、お店の前でお揃いのズボンを履いた人が4~5人困った様子でソワソワ、警備会社の人が2人扉前で待機。さらにその横でオロオロしている人が2~3人。

なんだかとっても物々しく、とても店内に入れるような雰囲気ではなかった。


とりあえず、駐車場で待つことに。

するとお揃いのズボンを履いた人が1人近づいてきて、うちの車の窓をコンコンとノックした。

「あのお客様、お店のカギが届かなくて。いつお店を開けられるか分からない状態でして」


お揃いのズボンの人はお店の人だった。

どうやら、鍵を持っている人がまだ来ておらず、お店が開けられないとのこと。とても丁寧に謝罪をされ、隣の車に移ってまた謝罪をしているようだった。


「大正解! お店が閉まっていた理由、よくわかったね」
と、ダンナが驚いた。

「ふふふ、でしょ?」

お店が閉まっている理由を、ドンピシャで当てたワタクシ。
遠い昔のことを思い出していた。

ある会社に転職したばかりの頃、土曜日の朝8時15分に会社のカギを開ける当番があった。

ある日、8時になり、そろそろバスで出かけようと思ったその時、その当番のことを思い出した。

「ひょー! 今日はワタクシが当番! 忘れてた~!」

慌ててタクシーに乗り込み、ぶっ飛ばしてもらった。

到着時間は、約10分遅れの8時25分。

めっちゃ寒い冬の日だった。

外で待っていたのは、他の部署の先輩2名。携帯番号なんて知らない。
「ごめんなさーい!」


その時の表情が、あのお店の前で待っていた、お揃いのズボンの人と全く同じだった。


「だからピーンときたんだよね~」

いや、これが分かったのはあの超寒い中
「大丈夫だよ。どんまい」
と怒りもせずに声をかけてくれた先輩のお陰。
カッコよすぎる~!

でも、その朝払ったタクシー代とお詫びの差し入れ代。
いつものバス代の15倍。授業料としては高すぎる~!

当番を忘れたら
「実は裏技があるんだよね~」
なんてあとから言い出す先輩たち、意地悪すぎる~!




それからしばらくしてお店が開いた。そんな中、店で一番しょんぼりしていた店員さん(たぶん犯人)の姿を見ながら

「ピーンときたんだよね~」
って笑える日が来るから大丈夫、と心の中でエールを送った。

そしてワタクシも
「いや、もう時効でしょ」
と、過去の失敗から完全に開きなおれた日、となった。



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