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№106【2分で読める】日々の暮らしにクスっとエッセイ『座っていれば大丈夫』


大昔、ワタクシがOLをしていた頃のお話。
まだ書類のやりとりはFAXが主流で、メールを送っても電話確認をしていた時代(もしかして、うちの会社だけかもしれない)。

ワタクシ、社会人1年が過ぎた頃、正社員を辞めて派遣社員になろうと決めた。それは「パソコンを触る仕事がしたかったから」。と言っても、大層な目標があるわけでもなく、ただただPCに入力をしたり、書類を作ったり、ラベルを作ったり、そんなことで良かった。

派遣社員に登録してすぐに紹介されたのは、経理の仕事。
「伝票を見ながらPCに入力するだけです。仕訳はしなくても大丈夫。のんびりアットホームな会社なんですよ」

月によって日によって数は増減するけれど、初日はたぶん伝票が100枚もなかったと思う。1枚1分なんて掛からないくらいのチョロい入力だった。入力を終えると、こんどはプリントアウトしてチェック。教えてもらいながらやっても全部で2時間も掛からなかった。
とりあえず、出来そうな仕事でホッとしながらこう訊いた。
「次の仕事はなんでしょうか?」
すると、指導係の派遣の人がメッチャ困った顔をしてこう言った。
「なんもないの他の仕事。どうしよう・・・、私もヒマで困っているの」
8時間契約で来たこの職場。初心者でもたったの2時間。これが土曜日隔週まで毎日ある仕事なんて、あり得ない。

あまりにも暇すぎて上司に指示を仰いだら
「前に辞める人もそう言ってた。だから座っていれば大丈夫。暇だって言ったら人を減らされるから、シーっ!」


そのうち、ワタクシも仕事にすっかり慣れてしまい、労働時間が2時間から1時間に。メッチャ暇が、気絶するほどヒマになった。それにより、ワタクシ、就業時間のうち7時間の暇つぶしが必要になった。

それで思いついたのがパソコンソフトの使い方を覚えること、自分のための勉強をすること、電卓検定を取ること。数字を扱う仕事なので、電卓検定の初段が取れるようになるほど電卓に触った。給料をもらって、どうなんこれ。・・・手厚い福利厚生だと考えることにした。
そうするうちに月日は流れ、恐ろしいことに10年が過ぎた。

ワタクシ退社することになり偉い人がいない酒の席で、実は仕事以外のことも、たっぷりしていたと告げると、その場にいた全員が驚いた。
「え? 本当に? 全然知らんかった! あんなに忙しそうだったのに」

それを聞いたワタクシ、心底驚いた。
「全然バレてないって、逆にどうなん」

よくよく考えてみたら、他の人はこっそり昼寝していた。
特に昼ご飯あとは、部長も軽くいびきをかきながら。


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