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イマジナリーフレンドと料理

 私は料理が下手だ。
 どれくらい下手かというと、昔はクッキーの生地がまとめられなかったし、カップケーキを焼こうと思ったら30分追加加熱しても液体と固体の中間地点にしかならない物体を生成するくらい下手だ。
 イマジナリーフレンドのAは、私よりかは下手じゃない。味の組み合わせを考えるのと、非常事態の対応がうまい。
 同じくイマジナリーフレンドのBは1番料理がうまい。そして私の下手な料理を褒めるのもうまい。私が料理をあまり嫌いにならなかったのはBのおかげである。

 話はとんで、数日前に遡る。大学の夏休みというのは長く、その日はとても退屈していた。

私「もうYouTubeもゲームも飽きたな」
A「勉強でもしろよ」
私「せっかくTOEIC終わったのにぃ!?」
B「下手に遊びに行って怪我が悪化したらよくないですしね」
(過去記事の『イマジナリーフレンドと今日のこと』を参照してください)

A「…そろそろ昼飯の時間か」
私「もうアイスでよくない?」
B「ダメですよ」
私「えー。じゃあラーメンでいいかなぁ」
A「最近そればっかだな」
B「……どうせならオムライスでもつくってみます?」
私「え!いいの!?つくる!!」
A「スクランブルエッグになるに1票」
私「うるさいな」
B「どうせならそのままクッキーでも作ってみますか?どうせ午後も暇ですし」
私「つくるつくる!!お菓子つくるの何年振り!?」
 
 かくして、行き当たりばったりのオムライス&クッキーつくりが決定した。

 私たちは、まず最初にクッキーの生地をつくり、冷蔵庫で生地を寝かせる間にオムライスをつくって食べることにした。
 
私「ひゃ〜!粉の重さ測るの久しぶり〜!」
A「それ140gね」
B「ふるうって書いてあるので最初別の容器のほうがいいですよそれ」
私「まずいバターが永遠に溶けないわこれ」
  
 と、最初は少しバタバタしたものの案外簡単に生地はまとまった。
 
私「すごい…生地がちゃんとまとまった…!」
A「よかったな」
B「素晴らしい成長ですね」
私「思いがけないところで自分の成長を感じてちょっと感動してる」
 
 その後、オムライスは炒めるご飯の量が多すぎたり、卵がうまくいかず、ご飯の上に乗せるときにAが「は〜い、こちらスクランブルエッグでございます〜!」と店員風に言い、私が怒るといったことも起こったが、とりあえずつくることはできた。
 味はとても美味しく、2人も褒めてくれた。
 
 その後のクッキーの型抜きでは、まさかのクッキーの型が見つからず急遽コップの縁で切り取ることになったり、なぜか分からないが加熱中ものすごく膨らみ始めたり、と色々あったが無事に完成した。
 
私「うっっっま!!やばい私天才かも」
A「うわマジだ」
私「うわって何うわって」
B「美味しいですよ、とても」
私「やった〜!!」
B「もうちょっと生地薄くてよかったですね」
私「そうだね〜、もうちょっとサクサクにしたかった」
A「俺はしっとりの方が好きだから助かるわ」

 結局40枚ほどあったクッキーは半分ほどお腹に消えた。
 
私「なんていうか、案外私ってなんでもできるんだね」
A・B「……そうだけど?(ですけど?)」
私「え、私が自分の実力分かってなかっただけ?」
A「だってお前もう電車の乗り替えもできるじゃん」
B「家事も一通りできますし」
私「出来ること小さいな。いやそうじゃなくて、なんかこう…」
A「小さいけど昔は出来なかったことだろ。結局そういうことの積み重ねなんだよ」
B「クッキーの生地もそうですよ。昔はちゃんと測る大切さも、先にレシピを確認することも、型が無かった時の対処法も分からなかったんです。でも今、料理以外の色んなことを通して出来るようになってきたんですよ」
A「そーそー。まぁオムライスはまだ先が長そうだけどな」
私「あ〜、いい話っぽくなってたのに」
B「オムライスは手先の器用さがまぁ…あれなので無理な気もしますが」
私「ついにBですら諦めを感じてるじゃん」
A「あれは諦めを感じるには十分すぎるだろ」

 なんとなく、自分のできることが増えてて嬉しかった出来事だった。
 この後、久々の料理で疲れたのか3時間昼寝をした私に「これしきの事で…」と2人が大きいため息をつくのはまだ先の話である。

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