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脳卒中者における下肢筋力と6分間歩行パフォーマンスの関係性

こんにちは!
理学療法士をしているyukiです。

今回の内容は、脳卒中者においても重要な下肢筋力と6分間歩行で示される歩行耐久性についての知見です!

基本的に、筋力があった方が歩行耐久性も高い印象があると思いますが、最近の研究から紐解いていきたいと思います。


では、本日紹介する論文はこちら↓


この論文について

掲載雑誌:Journal of Rehabilitation Medicine
Impact Factor:2.046

では、早速目次になります。


はじめに

6分間歩行テスト(Cooper KH et al. 1968)は、12分間のランニング試験(Butland RJ et al. 1982)から派生し、心臓及び呼吸器疾患の患者の運動および心肺機能を評価するように設計されている(Solway S et al. 2001、Crapo RO et al. 2002)。

6分間歩行テストが心肺領域の臨床または研究において、最も幅広く使用がされてきたテストであり(Sinclair RC et al. 2012)、他の機能的歩行評価よりも簡易で日常生活動作をより反映すると言われている。

脳卒中後の患者は52〜85%が歩行能力を取り戻すが、”健康な方との歩行とは異なる状態である”(Bohannon RW, 1987、Eng JJ et al. 2002)

6分間歩行テストは脳卒中患者に対しても機能的歩行能力を評価する上でよく使用されている。ただし、脳卒中患者における6分間歩行テストと有酸素運動の関係性は、神経運動制御の変化に関連する制限により明確でない可能性がある。


例えば、脳卒中後6ヶ月では、患者の50%は筋機能に障害がある(Corriveau H et al. 2004)。
脳卒中患者の6分間歩行テストの距離が、感覚運動障害の評価であるFugl-Meyer Assessmentと相関があることが示されている(Danielsson A et al. 2007)。

機能障害は、同名筋または拮抗筋群の痙縮と弱化の組み合わせから生じている可能性がある。

一方で、痙縮(Modified Ashworth scale、Ansari NN et al. 2008)と筋力(MRC)を評価するために
これらの評価は臨床的に頻回に使用されており、
筋力評価であるMRCの妥当性と信頼性は確立されている
(Gregson JM et al. 2000)


以前の研究では、歩行速度と下肢筋力との間に有意な相関があることが報告されているが(Damiano DL et al. 1998、Nadeau S et al. 1999)、”6分間歩行における下肢の筋力とパフォーマンスの関係を調べた研究はない”

本研究の目的

脳卒中患者の6分間歩行テストにおける
下肢筋力および痙縮との関係性を評価すること


対象と方法

対象者:脳卒中患者24名
対象者属性
1. 6ヶ月経過後の最初の脳卒中であること
2. 歩行が独歩で可能なもの(補助具の有無は問わない)
3. 医学的に安定しているもの(高血圧、不整脈、不安定な心疾患がないこと)
4. 既往歴に心筋梗塞がないもの
5. 脳卒中以外の筋骨格に問題がないもの
6. インフォームドコンセントにて同意が得られたもの

研究手順
1. ベースラインの設定
・ストラップタイプの心拍数モニターを患者に取り付け、患者が10分間安静にしているときの心拍数を記録。最初の5分間に測定されたHRをベースラインとした。

2. 6分間歩行テストの実施
・30m の歩行トラックを、それぞれの速度で可能な限りたくさん歩けるように指示。
・HRが同時に測定。生理学的コスト指数と安静時HRの差をm/分単位の歩行速度で割ることによって推定された。
・ボルグスケールで自覚的強度を評価。


評価項目
1. MRC(下肢筋力)
*MRCは、個別筋や筋群に対する筋力低下を定量的に評価する順序尺度(Gregson JM et al. 2000)

以下の5つの筋群の評価を行った。
1. 股関節屈曲筋群
2. 膝伸展筋群
3. 膝屈曲筋群
4. 足底屈筋群
5. 足背屈筋群
各測定は同じセラピストにより3回ずつ実施された。


2. Modified Ashworth Scale(痙縮評価)
以下の部位の評価を行った。
1. 大腿四頭筋
2. ハムストリングス
3. 下腿三頭筋

3.その他の評価
・PCI、安静時HR、6分間歩行時HR、自覚的運動強度(RPE)
※PCI:生理的コスト指数(Physiological cost index 以下 PCI)は,1979 年に MacGregor J  et al. により,日常生活に準じた状態で身体活動に伴う生理的なコストを測定する客観的な方法
※自覚的運動強度(RPE)について→https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/ikusei/doc/AT/text%20kaitei/2017AT5_p68.pdf


統計解析

・被験者は2グループに分類(MRCが中央値よりも低い12人(LMRC)と中央値よりも高い12人(HMRC))
・多重線形回帰分析(6分間歩行テストとの相関性評価)
・スピアマンの順位相関係数
・マンホイットニー検定(両グループの違い)
・有意水準はp < 0.05とした。

結果


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