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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第30回「信州でとっておきのおススメ酒場を紹介」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

一人酒ができなくなって幾歳月・・・ついに再開の日を迎えた。が、本当の一人酒はこれからだ。さあ、体験談エッセイを書こう。タイトルは、酔いどれ男のさま酔い飲み歩記。第30回「信州でとっておきのおススメ酒場を紹介」である。

はじめに

体験談エッセイ「酔いどれ男のさま酔い飲み歩記」が30回目を迎えた。ここまで、信州すなわち長野県内の酒場を一つも紹介していない。店が無いのではない。エッセイに書くチャンスがなかっただけのことである。

今回は単発で名物酒場を紹介していこう。登場するのは松本市、上田市、長野市にある居酒屋。松本と長野の店は、自信をもっておススメできる名酒場。上田の店ではご当地焼きとりをぜひ食べてほしい。

酔いどれ男のさま酔い飲み歩記の信州スペシャル、いってみよう!

松本市「傾奇者」~もしや、この屋号の由来は?

ひと頃、松本市で一人酒をすることにハマった時期があった。長野県の半分から南側に住んでいる者にとっては、県庁所在地の長野市は遠い。その点、松本市は近いし、観光都市だし、学生も多いので、面白い店がたくさんある。

そのなかでも、とびきり面白い店といえば、居酒屋「傾奇者」である。何が面白いかと言えば、まず屋号。そして、バーっぽいカウンターと小上がり併設の店内。それから個性的なマスターと愛想のいい女将さんの名コンビだ。

2014年8月が初来訪だった。はしご酒の途中、変わった屋号に気がついた。予備知識はなく、どんな店かは全く分からない。だが、私の直感が働いた。いい店に違いない。早速突入だ。

ご常連酒場っぽい穴場の雰囲気が漂う。

とりあえず注文しよう。メニューを見て「ぶったまげた」。サワー系に織田信長や徳川家康など戦国武将の名前が付いていた。もしかして、傾奇者の屋号の由来はあの人物か?
後でマスターに確認するとして、まずはハイボールを頂戴する。

最初の来訪ではハタハタの一夜干ししか注文できなかったが、実は美味い肴を出してくれる店なのだ。目利きのいいマスターは、時折珍しいメニューを用意する。2回目以降の来店では、ゲンゲの天ぷら、ヤガラの刺身も食べさせてもらった。

マスターは、ひょっとすると戦国通かと思って話しかけてみたら、案の定その通りだった。しかも、かなり詳しい。かく言う私も歴史ファン。ならば、屋号の謎に迫ろう。

傾奇者とは前田慶次郎のこと。予想通りだった。

戦国通なら分かって当然。漫画「花の慶次」でおなじみの人気武将。知らない方はググってみてほしい。何はともあれ、スゴイ酒場を見つけたものだ。相変わらず、酒場をかぎ分ける私のカンは冴えている。今宵は傾奇者でじっくりと飲むとするか。

上田市「横綱」~ニンニク醤油の美味だれは美味い

上田市へドライブで出かけたのは、大河ドラマ「真田丸」を放送していた2016年9月だった。仕事を終えてから出発し、一泊して観光しようというプランだ。もちろん、泊まるからには軽く飲み歩きたい。

上田に行くとSNSに投稿したら、知人から「上田なら美味だれですね」とのコメントがあった。美味だれ、そりゃ何だ? 調べると、焼きとりのタレのことらしい。ならば、焼きとり酒場に行くしかないだろう。

渋そうな暖簾がかかる居酒屋「横綱」に突入する。店内はご常連さんでほぼ満席。辛うじてカウンターの一角に陣取り、まずはチューハイ。そして、焼きとりを適当に見つくろってもらう。他店と比べて一串あたりの単価が安いのがうれしい。

美味だれとはニンニク醤油のタレだった。

業務用のチューブに入っており、お好みでかけて食べる。これは美味い。ニンニクがよく効いている。焼きとりにはピッタリだ。長野県に住んでいて美味だれを知らなかったとは恥ずかしい気もしたな。

後で知ったが、この年のアド街ック天国・上田市でも紹介されたほどの有名店だった。その後屋号を「睡蓮」に掛け替え、営業を続けているようである。

長野市「ながい」~錦小路のみまろにお任せ

県庁所在地の長野市に、とっておきの名物酒場がある。繁華街とは全く別の場所にあるので、まさに知る人ぞ知るという居酒屋「ながい」。ここは一筋縄ではいかない。だが、気に入ってしまえば、何度でも訪れたくなるという名酒場。2012年10月、久々に来店した。

親父さんは「錦小路のみまろ」を自称している!

錦小路とは、店のある錦町の小路にあるという意味。日本酒を美味しく飲んでもらうための「ソムリエならぬ、のむリエ」ということで、のみまろを名乗っている。つまり、親父さんに完全おまかせで出してもらうのが、この店の流儀だ。

そんなわけで、親父さんイチオシの十四代からいただく。山形県村山市の酒蔵が醸す名酒であることは通なら常識。そして、十四代に合う肴をチョイスしてもらう。もちろん、メニューから選んだって構わない。

店にやって来たのは、ひとり旅の前日泊の時以来、5年ぶりだった。その1回だけの客を覚えているわけないと思っていたが、なんと親父さんはノートを引っ張り出し、私の名前を記録していたのだ。これには驚いた。

しかも、なぜか出張で立ち寄ったことになっていた(笑)

それはともかく、2杯目も十四代。さっきは山田錦だったが、今度は雄町米。とことんこだわっている。それが、のみまろ流。肴は旬のものを厳選して出してくれるし、もちろん酒にはピッタリだ。美味い酒と肴、だがそれだけではない。

親父さんは、とにかく話好きなのである。喋り出したら止まらないタイプだが、聞き上手でもある。会話が弾むので注文するタイミングも難しい。そこに助け船を出してくれるのが女将さん。時折、さりげない心配りをしてくれるのだ。

「ながい」に入ったら、もう飲み歩きはおしまい。この店で完結してしまうからだ。だけど、それが楽しい。だから、長野市の酒場開拓は進まない。コロナ禍がおさまったら、長野市に出かけたいが、また「ながい」に行ってしまうだろうな。

〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2012年~16年の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。

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「ひとり旅で全国を巡ろう!旅道楽ノススメ」→note連載中の「酔いどれ男のさま酔い飲み歩記」もヨロシク!


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